被災建築物応急危険度判定の活動状況

<被災建築物応急危険度判定の活動状況>

地震で被害を受けた建築物が,その後の余震に耐えうるかどうかを判定することを「被災建築物応急危険度判定」と言います。

地震を受けて倒壊してしまった建物を使うことはありませんが,わずかに傾いただけとか,柱や壁に多くのひび割れが生じてしまった建物については,一目見ただけでは,安全なのかどうかがわかりません。その後に大きな余震もありますから,専門家が調査して使用できるものかどうかを判定します。

この応急危険度判定活動については,国土交通省発表の「熊本県熊本地方を震源とする地震について(第5報)」(15日14時)で,

  • 被害が大きいと想定される熊本県に対し、被害の状況を把握し、被災建築物応急危険度判定の 実施準備を指示。
  • 益城町(ましきまち)に実施本部、熊本県に支援本部を設置。

と発表されています。

報道記事としては「建物の危険度判定始まる 余震続く益城町で 二次被害防止へ県」(15日)

鳥取県、12人派遣 県警は救助支援」(16日)

静岡県が建築物危険度判定士資格持つ職員12人派遣」(16日)

建物の応急危険度判定 熊本・益城町などで開始」(17日)

熊本地震・被災建築物の応急危険度判定 益城町、「立ち入り危険」800件超」(20日)

<熊本地震>危険建物 判定進まず 8自治体は未着手」(22日)

倒壊建物の応急危険度判定 5市町村で始まる」(22日)

なぜ調査進まない?建物「応急危険度判定」」(22日)

被災建物「危険」48% 7市町村の応急判定」(23日)

「危険」無情の赤紙 熊本7市町村 被災建物48%倒壊恐れ」(24日)

<熊本地震>倒壊「危険」建物9994件 「中越」の倍」(28日)があります。


日経アーキテクチュアーの記事で「応急危険度判定と罹災証明とは?」が参考になります。


<自治体発表>

地震被災後の建築物の調査・判定について」(18日,益城町)

地震被災建築物応急危険度判定とは」(22日,南阿蘇村)←これは丁寧に説明されています。被災されている南阿蘇村の職員が短時間でつくったことは驚きです。


<被災建築物応急危険度判定について>

応急危険度判定のことは「日本建築防災協会」のHPで解説されています「応急危険度判定とは?」。

「応急危険度判定は、大地震により被災した建築物を調査し、その後に発生する余震などによる倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの危険性を判定することにより、人命にかかわる二次的災害を防止することを目的としています。」とあります。

発災の直後に行うもので,判定した結果,「危険(赤い紙)」「要注意(黄色)」「調査済(緑)」に分類して,その建物の見えやすい部分に張り出します。「危険判定」であれば,その後の余震で危険性が想定されるので,その建物の使用を控えるべきという意味です。「要注意判定」は,使用にあたって注意すべきことがあるということで,注意すべき内容も手書きで書かれています。「調査済」は,特質すべき事項がなかったということです。

判定マニュアルは本になっていますから,判定士資格を持っている人ならば引き出しのどこかにしまっていると思います。

被災建築物応急危険度判定必携」は,全体的なことを知るうえで役立ちます。

個人的な考え方でポイントになることを列記します。

  • 判定士2名で1チームであること
  • 1チームの判定数は1日に15棟
  • 50チームに1人の判定コーディネーターがつく
    (判定業務は,実施本部長の指揮により判定コーディネーターの技術的な指示を受けて行うことです)
  • 判定した結果は,現地に張り出すだけではなく,判定コーディネーターに報告する
  • 応急危険度判定は,被災度判定区分やり災証明のための家屋調査とは違う
  • 判定士は,住民からの「どの地区をいつ実施するのか」という質問には答えられなければならない。
  • 判定士は,危険判定をおこなった場合に避難場所を伝えられなければならない。

応急危険度判定は,その後に行う被災度区分判定とは違います。

被災度区分判定とは,「地震により被災した建築物を対象に、建築構造技術者がその建築物の内部に立ち入り、当該建築物の沈下、傾斜および構造躯体などの損傷状況を調査することにより、その被災の程度を軽微、小破、中破、大破などと区分するとともに、地震動の強さなどを考慮し、復旧の要否とその程度を判定して「震災復旧」につなげることをいう」です。


危険度判定に従事する判定士が準備すること

判定の実施にはいろいろな道具が必要です。マニュアルの「資機材関係」のページに,参加する判定士が準備するもの,派遣側が用意するもの,依頼側が用意するものにわけています。この中で判定士が準備するものとして次のものをあげています。

ヘルメット,筆記用具,雨具,防寒着,水筒,マスク,コンベックス,軍手,ナップサック,(双眼鏡,ペンライト,カメラなどもあったほうがよい)

上記には書いていませんが,資格者証は当然ですし,マニュアルもそうでしょう。

その他,私の個人感覚で必要なものとして,

安全靴はいうまでもありませんし,ひざ・肘のプロテクトはあった方がいいでしょう。打診棒,伸びチジミする鏡,電卓は判定作業に必要なはずです。タオル,ティッシュ,レジ袋があると便利です。クラックスケール,下げぶりは派遣者側の準備に入っていますが,自分のものを持っていた方がいいです。

そして,何よりマニュアルを熟読して判断できるようになっていなければいけません。

被災地の地図をよく読んで,地理感を頭に入れておくことも必要です。


ここからは完全に個人意見ですが,もっとも必要なことは,被災地に入ることの覚悟なのだと思います。

ほとんどの人は大きなダメージを受けています。それは精神的なものだけではなく,財産的なものもあるでしょうし,もっと大きなものかもしれません。その中に入るのですから,どのように振る舞うべきかは考えておく必要があります。特に,応急危険度判定は,その人の住まいに「赤紙」を貼ります。その住まいを所有し生活している人の思いを想像してください。「技術者として判定マニュアルにしたがって危険判定をしただけだ」ではすまされません。本人の目の前で判定作業をして赤紙を貼る場面も多いはずです。どのように説明するのかは考えておかなければいけません。

その答えを,私がここで書くことはできませんが,技術者として建物の耐震基準の意味が説明できることや,過去の地震でどのようなことがあったのかの説明も必要でしょう。そうしたことは,技術者としての言葉ですが,それだけではなく,赤紙を貼られた人の気持ちに寄り添う言葉は必要です。その言葉としてどのようなものが適切なのかは,すみません,私にはわかりません。

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