既存部分に独立部分が複数ある場合の法第20条の既存不適格の継続

<既存部分に独立部分が複数ある場合の法第20条の既存不適格の継続>

増築などを行う場合に既存不適格が継続できるかどうかの考え方は〈いつの建築基準法が適用されるか(既存不適格,遡及適用)〉と〈増築における既存不適格の継続と遡及適用〉で解説し,既存部分に独立部分が複数ある場合の既存不適格については〈複数独立部分がある場合の既存不適格の継続(法第86条の7第2項)〉で解説しましたが,ここではその中の法第20条(構造耐力)についての適用について解説します。

法第86条の7第2項  第3条第2項の規定により第20条又は第35条(同条の技術的基準のうち政令で定めるものに係る部分に限る。以下この項及び第87条第4項において同じ。)の規定の適用を受けない建築物であつて,第20条又は第35条に規定する基準の適用上一の建築物であつても別の建築物とみなすことができる部分として政令で定める部分(以下この項において「独立部分」という。)が2以上あるものについて増築等をする場合においては,第3条第3項第3号及び第4号の規定にかかわらず,当該増築等をする独立部分以外の独立部分に対しては,これらの規定は,適用しない。

政令第137条の14  法第86条の7第2項(法第88条第1項において準用する場合を含む。)の政令で定める部分は,次の各号に掲げる建築物の部分の区分に応じ,当該各号に定める部分とする。

一  法第20条第1項に規定する基準の適用上一の建築物であつても別の建築物とみなすことができる部分 第36条の4に規定する建築物の部分

政令第36条の4  法第20条第2項(法第88条第1項において準用する場合を含む。)の政令で定める部分は,建築物の2以上の部分がエキスパンションジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法のみで接している場合における当該建築物の部分とする。

条文は上記の通りです。

法第20条についての既存不適格建築物を増築しようとした時の既存不適格の継続については,エキスパンションジョイントなどで構造分離されていることが第一条件です。この条文を見て,「既存部分とEXP.Jで分離して増築すれば,既存部分は既存不適格のままでいい」と考えてしまう人がいますが,そうではありません。

法第86条の7第2項に「独立部分が2以上あるものについて増築しようとする場合」と規定されていて,「独立部分が2以上ある」とは,「既存部分に2以上ある」という意味です。そして,既存不適格が継続できるのは,「当該増築等をする独立部分以外の独立部分」ですから,増築する部分と離れた方にある独立部分です。

通常,EXP.Jで分離して増築しますから,既存不適格が継続できるのは,増築工事をする部分から見て,新たに設置するEXP.Jの向こうの既存建物のさらに向こうにあるEXP.Jの向こうの既存建物です。

<大規模修繕・大規模模様替えの扱い>

大規模の修繕・大規模の模様替をする場合の法第86条の7第2項(2以上の独立部分)の扱いは,特段に定めがありません。増築と同じです。

つまり,既存部分に2以上の独立部分があることが条件ですから,EXP.Jで分離された2つの部分があり,その片方だけの屋根の取り換え工事を行う場合,工事をしない独立部分は既存不適格が継続します。

上記のように私は解釈するのですが,大規模の修繕・模様替は,1棟の建物について行うもので,EXP.Jで分離されている独立部分が2つあってもそれは1棟の建物です。片方の独立部分の屋根の取り換えが面積として過半になるために大規模修繕にあたるとして,それは1棟の建物を大規模修繕しているのですから,分離されている部分も含めて大規模修繕をしているとの解釈も成り立ちます。その解釈では独立部分の既存不適格の継続はないのですが,どちらが正解であるかは私にはわかりません。

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このページの公開年月日:2016年6月12日