建築工事における騒音規制

<建築工事における騒音規制>

建築工事で重機を使うと騒音などが発生しますので,特に住宅地での工事は注意しなければいけません。建築工事中の騒音については,法律上のルールがあります。建築士は,騒音規制を熟知する必要はないにしても,どのような規制があるのかは知っておいた方がいいです。


建築工事中の騒音規制については,「騒音規制法」があります。騒音規制法では,法第2条第3項で「特定建設作業」を定義して,「指定地域内」で特定建設作業をする時には,法第14条の届出が必要であるとしています。

「特定建設作業」とは,法第2条第3項から政令第2条に移って具体には別表第二で列記しています。

騒音規制法別表第二一 くい打機(モンケンを除く。),くい抜機又はくい打くい抜機(圧入式くい打くい抜機を除く。)を使用する作業(くい打機をアースオーガーと併用する作業を除く。)

二 ビョウ打機を使用する作業

三 さく岩機を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては,一日における当該作業に係る二地点の最大距離が50メートルを超えない作業に限る。)

四 空気圧縮機(電動機以外の原動機を用いるものであって,その原動機の定格出力が15キロワット以上のものに限る。)を使用する作業(さく岩機の動力として使用する作業を除く。)

五 コンクリートプラント(混練機の混練容量が0.45立方メートル以上のものに限る。)又はアスファルトプラント(混練機の混練重量が200キログラム以上のものに限る。)を設けて行う作業(モルタルを製造するためにコンクリートプラントを設けて行う作業を除く。)

六 バックホウ(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き,原動機の定格出力が80キロワット以上のものに限る。)を使用する作業

七 トラクターショベル(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き,原動機の定格出力が70キロワット以上のものに限る。)を使用する作業

八 ブルドーザー(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き,原動機の定格出力が40キロワット以上のものに限る。)を使用する作業

以前は,大きなハンマーが上下して打撃しながら杭を打ち込むものがありましたが,大きな騒音を伴いますので,ほとんど使われなくなりました。特定建設作業のうち,今でも関係ありそうなのは「四 空気圧縮機」と「六 バックホウ」でしょう。空気圧縮機ははつり工事でハンドブレーカーを使う時に使用しますから15キロワット以上であれば法第14条の届出を必要とします。また,バックホウは,「騒音を発生させないものとして環境大臣が指定したものを除く」との規定があって,ほとんどのバックホウは「低騒音タイプ」として指定されていますから,バックホウで法第14条の届出を必要とすることは少ないでしょう。

バックホウなどで騒音が少ないものとして指定するものは次の告示で規定されています。

騒音規制法施行令別表第二第六号,第七号及び第八号の規定に基づく一定の限度を超える大きさの騒音を発生させないものとして環境大臣が指定するバックホウ等(平成9年9月22日環境庁告示第54号)

この告示によれば,「通常の作業において10m離れた地点の騒音が80デシベルを超えない」ことを指定基準とすることが書かれており,実際に指定した重機は「平成9年建設省告示第1536号第2条第1項に定める低騒音型建設機械として指定されたバックホウなど」とされています。したがって,いわゆる「新基準97年ラベル」とされるバックホウは法第14条の届出を必要としません。低騒音として認定されていても89年ラベルのもの(みなし移行されていないものに限る)は除外されていませんから80キロワット以上であれば届出を必要とします。


規制対象となる「指定地域内」とは,県知事または市長が指定したものです。どこが指定されているかは,各県,各市のHPを見ることになります。多くの場合,都市計画区域内を定めているようです。市街化調整区域も指定されているところが多いですし,都市計画区域外であっても学校などの周囲80m以内は指定地域としているようです。


「指定地域内」で「特定建設作業」をする場合には法第14条の届出が必要ですから,その場合の騒音規制値について説明します。

実は,騒音規制法は,届出義務を定めただけで,騒音規制値を規定していません。規制値を定めない代わりに法第15条で勧告規準を定めています。勧告規準を上まわる騒音を出し続けた場合,県知事(または市長)から改善などが勧告されます。

勧告規準を具体に定めたのが次の告示です。

特定建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準(昭和43年11月27日厚生省・建設省告示第1号)

この告示に,作業による騒音が隣地境界線上において85デシベルであることが規定されています。休みの日の扱いや作業時間などについても規定されていますから,詳しくはこの告示を見てください。


ところで,騒音規制法が適用されるのは,「指定地域内」で「特定建設作業」をする場合だけです。80キロワット以上のバックホウを使って作業をしてもそのバックホウが97年ラベルの低騒音型であれば規制が適用されません。85デシベルの制限がかからないのです。

ここからは個人的な感覚ですが,建設工事に対して騒音規制法は寛大だと感じます。隣地境界線における85デシベルというのは結構大きな音ですし,低騒音型を使いさえすれば85デシベルの規制値すら適用されないのです。

建築工事は,そこに都市がある限り,どの建物も何十年かに一回は壊して建て替えるということをしなければいけないことであって,壊す時に大きな音が出るのはお互い様との考え方が立法精神の中にあるんだと想像します。

さて,低騒音型を使えば85デシベルの制限がないといいましたが,85デシベルという規制値は,規制対象の作業であるかどうかにかかわらず,建設現場の常識として認知されているようです。瞬間的な騒音は別として,85デシベルを超える騒音を出し続ける作業をしたりはしません。騒音規制法が85デシベルを規定していることでもって,法が制限対象としていない作業であってもほとんどの現場では85デシベルは守られていると思います。

ただ,85デシベルは結構大きな音ですから,建築現場の隣に住んでいる人には迷惑でしょう。住宅地で工事をする場合,より騒音を低減することは施工者として努力しなければいけないことです。

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法令

騒音規制法

騒音規制法施行令

騒音規制法施行規則

騒音規制法の概要(環境省HP)

このページの公開年月日:2014年9月25日