差し筋アンカー

<差し筋アンカー>

「差し筋アンカーって何?」

あと施工アンカーの種類に「差し筋アンカー」というものがありますが,「社団法人 日本建築あと施工アンカー協会」のHPの分類に「差し筋アンカー」は含まれていません。「差し筋アンカー」を知るためには,まず,「差し筋」が何であるかを知る必要があります。「差し筋」は,次回に打設するコンクリートと一体化するためにあらかじめ入れておく鉄筋で鉄筋の片側が今回打設するコンクリート内に入っていて反対側が次回に打設するコンクリート側に出ている鉄筋のことです。

こちら〈「差し筋」とは?〉をご参照ください。


「差し筋アンカー」は「差し筋を代替えするあと施工アンカー」という意味で名づけられたものだと思います。

いずれも,打設時期の異なる2つのコンクリートの境界に配置して2つのコンクリートの一体化を図る役割をします。違いは,差し筋アンカーは先に打設されたコンクリートに対してドリルで穴をあけて金属拡張アンカーで接合することです。

ネーミングとしては,「差し筋アンカー」ではなく「あと施工差し筋」と言った方がいいように思います。

「差し筋アンカー」は,既存のコンクリートに打ち込まれる部分と鉄筋とで構成されます。金属拡張アンカーのボルトの部分が鉄筋に置き換わっただけです

したがって,冒頭の「差し筋アンカーって何?」の答えは,

差し筋アンカーとは,

あと施工アンカーのうちの,金属系アンカー(いわゆる金属拡張アンカー)のボルト部分が鉄筋に置き換わったもの

と言えます。

差し筋アンカーは,各社から出されていてそれぞれ微妙に違います。差し筋アンカーを選ぶときは次のことを考慮します。

鉄筋径:D10,D13,D16の3種類から選ぶ。

鉄筋長さ:多くの差し筋アンカーは,全長からコンクリート穴に埋め込まれる部分の長さを引いた長さ(つまり,鉄筋の有効な長さ)が鉄筋径の40倍になっている。でも,商品によっては40倍がとれていないものがあるので,40倍の長さが必要かどうかによって選択する。

鉄筋とアンカー本体の接合方法:鉄筋がアンカーの穴に打ち込んであるもの,ねじを切ってねじで接合されているもの,溶接されているものなどがある。

鉄筋径とアンカー径の違い:鉄筋径とアンカー径がほとんど変わらないものと,アンカー径の方が大きいものとある。アンカー径が大きい方がより大きな接合力が期待できる反面,アンカー径が大きいと既存コンクリートに大きな穴をあけることになり,既存鉄筋との緩衝が心配される。


差し筋アンカーを使う上で重要なことがあります。それは,

「差し筋アンカー」で「差し筋」の代わりはできないことです。

差し筋アンカーのネーミングからしても,上記の説明からしても「それはないだろう」と言いたくなりますが,事実です。

新築工事の途中で構造体である壁の差し筋を入れ忘れたために差し筋アンカーでつなごうとしても認められません。差し筋アンカーは既存コンクリートへ打ち込まれる部分が50㎜(D10の場合)しかありませんが,差し筋は既存コンクリートへ350㎜(D10の場合)定着させますから引き抜きへの耐力が全く違います。

参考:岡部のワンタッチBDアンカーD10で説明します。「オカベアンカー製品カタログ」によれば,「BDアンカーD10」は,許容引き抜き荷重=2.4kNとされています。差し筋であれば,鉄筋の許容応力度までとれますから,14kNです。差し筋アンカーは差し筋の6分の1程度の力にしか対応できません。


「差し筋アンカー」で「差し筋」の代わりはできないのならば,「差し筋アンカー」は何に使うのか
例えば,改修工事などで土間に開口を開けて,既存の土間コンクリートと新しく打設する土間コンクリートを一体化するために使います。その他,改修工事で軽微なコンクリート壁を既存の壁に接する位置に取り付ける場合で,接合面に引っ張り力がかからない(もしくは非常に軽微である)とわかっている場合は,差し筋アンカーを使ってもいいのだと思います。

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あと施工アンカーの関連情報

あと施工アンカー

金属系あと施工アンカーの解説

さし筋アンカーとは?

さし筋とは?

あと施工アンカー告示と設計・施工指針の解説

あと施工アンカーの許容応力度など

[ckouzoulink]

鉄筋部が40dである理由
差し筋アンカーの鉄筋部分の長さが40dとしているのは,そこにつなぐ鉄筋の定着長さ40dを考慮したからだと思われますが,既存コンクリートへ打ち込まれる部分の長さが短いですから引っ張りに対する耐力は大きくありません。その意味で鉄筋が40dであることの意味がないような気がします。
[cwpkouzouhinshitsu2]

このページの公開年月日:2013年6月1日

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