構造体強度補正値で実際の気温が外れたらどうなる?

<構造体強度補正値で実際の気温が外れたらどうなる?>

「設計基準強度」に「構造体強度補正値」を加えて,「呼び強度」とします。その「構造体強度補正値」が3または6kN/mmであることは〈構造体強度補正値〉で解説したとおりです。

構造体強度補正値の標準は3ですが,6にしなければならないのは次の場合です。

○ コンクリートの打ち込みから材齢28日までの期間の予想平均気温が8度未満の場合(6.3.2(1)(ii))

○ 日平均気温の平年値が25度を超える期間にコンクリートを打設する場合(6.12.2(e))

したがって,3にするか6にするかは,気温の平年値(過去の記録の平均値)で決まります。

ならば,その年が暖冬だったり厳冬だったりしたらどうなるのでしょうか

打設した1日目から28日目までの平均気温が平年値(過去の記録の平均値)で判断して+3でよかったのだとしても,打設した年がたまたま厳冬で気温が低く,基準値未満になってしまったということはあるでしょう。過去の平均値を使う以上,現実とのずれは,制度上やむを得ないことです。

個人的な意見ですが,「今年の冬は厳冬予報だから,+3でいいところを+6にしておこう」とする必要はないと思います。強度が出ればいいのですから,28日目で出なかったとしても,91日目には出ているはずです。

逆に,暖冬予報の場合も,「平年値では+6にすべきだが,今年は暖冬だから+3でいいことにしよう」というのも,暖冬予報がそこまでの信頼性はないと考えます。

一方で,夏時期は打設する当日が25度を超えるかどうかですから,平年値よりも天気予報の予想気温の方が正確だったりします。前日の予報でかなり正確に予想することが可能になってきています。

個人的な意見ですが,夏時期の打設で平年値と天気予報の予想気温がずれている場合は,天気予報を優先してもいいと考えています。ただし,天気予報は,予想最高気温と予想最低気温が出るだけですから,平均気温に置き換える算出式は必要になりますし,外れた場合の責任の所在も考えておく必要はあります。

「外れた場合の責任の所在」というと,「やっぱり平年値でやっておこう」と思われるかもしれませんが,平年値でやっておきさえすれば外れても責任が生じないなどということはないはずです。このページでは責任の取り方は考えないことにしますが,外れないためのよりよい方法として翌日の気温予測(天気予報)は,平年値よりも優れている場合が生じうると思っています。


さて,このページのタイトルは「実際の気温が外れたらどうなる?」です。予測するしかない以上,気温の結果が外れることはやむを得ないことと考えます。気温が外れても,28日後または91日後に強度が出ればいいのです。

次の問題として,気温が外れ,さらに強度も出なかったらどうなるのか,というのがありますね。現場にいて「強度が適正に出た」という結果報告にはいつも安堵しますが,「出なかった」となれば大問題です。その場合にどうなるのかは,恐ろしくて想像したくありませんが,28日後に出ていなくても91日後は出ているかもしれませんし,躯体の一部を抜き取って強度が出たことを示すことも可能ですけどそれでも出なかったとするならば,最終的には「目的とする品質を保てないものを建築主に引き渡すわけにはいかない」という決断をすることになるでしょう。この最終決断をする前に,低くなったコンクリート強度で構造計算をやり直すというのも検討のひとつです。強度のでなかった階より上の階の荷重を小さくする変更設計が可能ならばそうした選択もあるとは思います。強度が出なかったにしてもどの程度小さかったのかにもよるでしょうし,出なかった原因が何であるかにもよるでしょう。建築士は建築主に,強度が出なかったことがどういう意味であるかを説明して的確な対処方法を示さなければいけません。そうした説明能力も求められますので,できることならば,常に「強度が出た」という結果であってほしいものです。

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このページの公開年月日:2016年5月15日