既製コンクリート杭の法適用

<既製コンクリート杭(PHC杭)の法適用>

既製コンクリート杭の「PHC杭」の建築基準法上の適用について説明します。

<参考>PHC杭の素材としての構造上の品質についてはこちら〈既製コンクリート杭(PHC杭・PRC杭)〉です。

  1. PHC杭は,「主要構造部」(法第2条)ではない。耐火建築物であっても杭に耐火性能を求められたりしない。
  2. PHC杭は,「指定建築材料」(法第37条)ではない。したがって,JIS規格への適合を法令上は要求されない。
  3. PHC杭は,「構造耐力上主要な部分」(政令第1条)に該当する。したがって法第20条を頂点とする構造関係規定の構造耐力上主要な部分への規定が適用される。特に構造計算は構造耐力上主要な部分に対して作用荷重が許容応力度を超えないことのチェックを求めているので,これが杭に適用される。

上記1.については適用がありませんし,適用がないことは条文を読めばわかりますから,説明するまでもないでしょう。

上記2.は,なぜ適用がないのかから説明します。PHC杭を構成するコンクリートも鉄筋(PHC杭の場合はPC鋼線)も指定建築材料でして,これを杭(基礎)に使用する場合は指定建築材料としてJIS規格への適合が求められます。でも工場で鉄筋とコンクリートで製品化されたPHC杭は,鉄筋単体,コンクリート単体とはみなされておらず,コンクリート製品として扱われます。したがって,コンクリート製品は告示の中に規定されておらず,適用なしとなります。

ですが,現在生産されているコンクリート杭はJIS規格が普及していますから,JIS規格によらないコンクリート杭はほとんど存在しないのだと思います。コンクリート杭といえば,そのほとんどはPHC杭で,JISA5373によって生産されます。PHC杭の定義の中に,よく見かける太さが一定のものの他に,端部が拡径されたものや摩擦杭として用いる節杭も含みます。また,PRC杭はPHC杭の定義からは外れますが,JISA5373ではあります。

JISA5373から外れる高強度でないPC杭は,生産されていないのだと思います。

したがって,コンクリート杭は,事実上JISA5373に適合しています。

上記3.について,説明します。

コンクリート杭は構造耐力上主要な部分ですから,仕様書的規定と構造計算が適用されます。仕様書的規定は,政令第38条が適用され同条を根拠とする告示「建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件」(平成12年5月建設省告示第1347号)が適用されます。とはいえ,許容応力度計算をすることで仕様書的規定は適用除外とできますので,事実上仕様書的規定は適用されません。構造計算については,法第20条第三号建物であれば政令第82条の許容応力度計算が適用されます。この計算で必要になるのが杭の許容応力です。それは,政令第93条を根拠とする告示「地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための地盤調査の方法並びにその結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法等を定める件」(平成13年7月国土交通省告示第1113号)で定められています。

具体には,同告示の第八第五号が「遠心力高強度プレストレストコンクリートくい」ですからこれが適用されます。第四号の「プレストレストコンクリートくい」も適用されるのでは?とも思いますが,JISA5373の杭はすべて高強度ですから第4号は適用されません。もどって,第五号に規定されている有効プレストレストコンクリートの設計基準強度の組み合わせはJISA5373のA種,B種,C種に一致していますから,この告示はJISA5373をもとにして作られたのだということがわかります。


PRC杭の法適用は次の通りです。
上記の1.2.については変わりません。
3.についても前半は変わりませんが許容応力度の根拠が違います。同告示の第8第六号のただし書きです。「ただし,適用するくい体の構造方法,施工方法及び許容応力度の種類ごとに,くい体を用いた試験により構造耐力上支障がないと認められる場合にあっては,許容応力度の数値を当該試験結果により求めた許容応力度の数値とすることができる。」です。

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参考

既製杭のコンクリート杭のことなら,「一般社団法人コンクリートパイル・ポール協会」と「一般社団法人コンクリートパイル建設技術協会」がHPで解説しています。

[ckuimakerlink]

こぼれ話

告示「建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件」(平成12年5月建設省告示第1347号)では,高強度プレストレストコンクリートくいをJISA5337に適合させることを求めていますが,JISA5337は廃止されています。作法時に「JISA5373」とすべきところを間違えたのだと思われます。

[cwpkouzouhinshitsu2]

このページの公開年月日:2015年2月15日