設計基準強度と呼び強度

<設計基準強度と呼び強度>

設計図書で指定する設計基準強度と,現場で打設する生コンの呼び強度との関係を解説します。

設計基準強度は,構造計算に用いる許容応力度を決定した強度のことです。

呼び強度は,現場で生コンを発注する時に指定する強度のことで,生コン工場が打設28日後においてその強度が出ることを保証(品質保証という意味)しているものです。

現場では,構造計算で想定した許容応力度が発揮できるようなコンクリートを打設しなければいけません。ですから,設計基準強度以上の呼び強度の生コンを打設しなければならないことは,言うまでもないと思います。ただ,「以上の呼び強度」が,設計基準強度と同じ呼び強度でいいと言えるのか,が問題になります。

呼び強度は,生コン工場が打設28日後においてその強度が出ることを保証(品質保証という意味)しているのですから,「設計基準強度=呼び強度」でもいいような気がしますがそうではありません。生コン工場が保証(品質保証)するのは,ミキサー車の出口で取り出した生コンを常温(摂氏20℃)で保管して28日経過した供試体の強度です。現場に打設されたコンクリートとは違います。何が違うのかというと,28日間を過ごす状態です。供試体の温度は20度で一定に保たれる,つまり,最も条件のいい状態であるのに対して,現場に打設されるコンクリートは,寒い時は寒い状態で置かれますから,強度は若干だけ出にくい状態になります。そのことともうひとつ,生コン工場が保証する強度は平均でしかなく,1個の供試体は85%以上であれば認められますから,「設計基準強度=呼び強度」とすると,一部に許容応力度の低いコンクリートができてしまいます。

そこで,

「呼び強度」≧「調合管理強度」

「調合管理強度」≧「設計基準強度」+「構造体強度補正値」

構造体強度補正値:3または6N/mm2

3になるか6になるかは〈構造体強度補正値〉の解説を見てください。

とすることが,標準仕様書(6.4.2(d))(6.4.5)で定められています。式が不等号で作られていますが,現場ではイクオールとして適用,つまり,余分に強くしたりはしません。したがって,設計基準強度に3(または6)を加えた呼び強度で打設することになります。


用語解説<「設計基準強度」とは何?>

「設計基準強度」とは,「構造設計者の意思」と「施工者が保つべき品質」とをつなぐものです。構造設計者は,設計基準強度を基にして長期短期の許容応力度を算出して長期短期の外力に対して許容応力度以下になるように建物を設計します。設計の成果を,構造図に「私はいくらの設計基準強度で設計しました」と書きます。施工者は構造図の設計基準強度の値を読んで,完成した建物が設計基準強度以上のコンクリートになっているように施工します。構造設計者は,設計基準強度を設定したことによって算出された許容応力度や断面検定に責任を持つ一方で,現場でどのようなコンクリートができあがるかについての責任を持つ必要はありません。

2018年版「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」で「設計基準強度は,構造計算において基準としたコンクリートの圧縮強度であり,コンクリートの許容応力度の基本となるものである」との言葉が追加されています。この言葉は構造設計者側から見て設計基準強度を説明したものですが,「設計基準強度とは,構造計算において許容応力度の算出などに用いる指標であり,構造設計者の設計意図を施工者に伝えるためのコンクリート強度上の指標である」とした方が用語をより分かりやすく表現していると思います。(2019/2/11追記)

<関連解説>〈構造体強度補正値〉〈構造体強度補正値で実際の気温が外れたらどうなる

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鉄筋コンクリート基礎構造部材の耐震設計指針(案)・同解説


鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説

↑2018年の最新版です。

このページの公開年月日:2012年6月