構造設計の必要知識

<構造設計の必要知識>

建物の屋根や床は重量のあるものですから,地震で倒壊したり,台風で飛ばされたりしないように柱や梁でしっかり支えられていなければいけません。建物がしっかりと建っているためには,基礎・柱・梁・床が適切に設計されていなければいけません。その設計を構造設計といいます。

構造設計には幅広い知識を必要とします。構造設計に必要な知識を私なりに分類すると次のようになります。

Ⅰ  構造力学

Ⅱ  構造躯体として使われる材料の特性

Ⅲ  構造の仕様書的規準

Ⅳ  建築構造安全性判定手法

Ⅴ  構造設計に関する法規制

Ⅵ  構造体として取り得る最大寸法を見出す技術

Ⅶ  最適な構造体を探し出す技術

これらのⅠ~Ⅶについて,私のできる範囲で解説します。

<Ⅰ  構造力学>

構造設計に必要なもの。まずは,構造力学です。物理の授業で机の上に物を置いて,作用,反作用の力の考え方を習ったと思いますが,これを果てしなく発展させたものが構造力学です。

構造力学(法則・基本的な考え方)

構造力学(解法1)

構造力学(解法2)

構造力学(力学的な感覚)

<Ⅱ  構造躯体として使われる材料の特性>

次に,構造躯体として使われる材料の特性を知ることが必要です。構造材料の代表は,コンクリート,鉄筋,鉄骨,木材でしょう。それ以外にもたくさんの材料がありますし,コンクリートだけ見ても強度の違いがあります。どのような材料があり,どのような特性を持っているかを知ることが必要です。

この構造材料の特性を理解するためには,〈材料力学〉の知識が必要です。

その上で,それぞれの構造材料の材料特性を見ます。

①〈種々の構造材料の品質等

②〈構造材料の許容応力度等

<Ⅲ  構造の仕様書的規定>

構造設計の原則は,Ⅳの建築構造安全性判定手法の数値上の比較でOKになることですが,その数値上の判定を有効にするための形式的なルールがあります。

構造の仕様書的規定

<Ⅳ  建築構造安全性判定手法>

構造力学が習得できれば建物の構造設計ができるか,と言えばそうではありません。地震などに対して建物が安全かどうかの判断をする判定手法が必要です。

建築構造安全性判定手法

<Ⅴ  構造設計に関する法規制>

そして,構造設計者を悩ませるのが法規制です。建築基準法の規定を満足させて設計しなければいけません。「法規制」は「建築構造力学の集大成」として作られたものですけど,建築構造力学が想定したものを意識することなく「法規制」のみが重要なものとみなされている向きがあって残念です。

<Ⅵ  構造体として取り得る最大寸法を見出す技術>

構造設計は,柱梁の大きさ(断面寸法)を仮定してから行いますが,仮定した断面では「NG」になってしまう場合に断面を大きくしてやり直します。でも,意匠設計との制約がありますから,大きくしてもいいのかどうかが問題になります。どこまで大きくできるかを見出す技術が必要です。

<Ⅶ  最適な構造体を探し出す技術>

法律の条件を守りながら建築構造安全性判定手法で「OK」となる構造を見出せば構造設計が完成したような気分になりますが,できた構造が最適なものであるかどうかを検証することが,構造設計者にとって重要なプロセスです。

「最適な」とは,一般的に建設コストを最小に抑えるということを意味しますが,目的によっては,重量をもっとも軽くするとか,工期を最短にする場合もあります。

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こぼれ話

2005年11月17日に国土交通省から発表された構造計算書の偽装事件によって構造設計が注目されるようになりました。それまでは,構造設計はあまり注目されることのない地道な仕事でした。

法令以外の指針

建築構造設計基準」国土交通省大臣官房営繕部

建築構造設計基準の資料」同上

構造設計指針」東京都

※ 構造設計に必要な知識をこのようにⅠ~Ⅶに分類してHP上で公開したものはこれまであまりなかったように思います。
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このページの公開年月日:2013年6月16日