EXP.Jで分離して増築する場合の既存部分の図書省略(2015年6月施行)

<エキスパンションジョイントで分離して増築する場合の既存部分の図書省略>

EXP.Jで分離して増築する場合の既存部分の法第20条関係の確認申請書の添付書類の省略が規定されています。根拠条文は,施行規則第1条の3第10項,同第11項,H27告示第180号です。

この規定により,現行法(平成19年施行の構造規定)の構造計算によって建築された建築物にEXP.Jで構造分離して増築する場合に,当時の確認通知書(構造計算書を含む。検査済証も)の写しの添付することで既存部分の構造計算が免除されます。

このことは,改正時の国土交通省の説明資料「改正概要(説明会で使用しているスライド資料)」の11ページに,「既存建築物(現行法適合)にエキスパンションジョイントを介して増築する場合、既存部分が現行法に基づく建築確認を既に受け、その後の改変がないなど現行の基準に適合していることが明らかな場合には、再度構造計算を行うことは不要とする。」と書いてあります。

この規定は,ちょっと不思議に感じます。現行法に適合するものに増築するにあたって,今までも,当時の確認通知書とそれについている構造計算書(写し)を添付することで適合を示すことはしてきたのではないのか?

今回の改正による図書省略の意味は,既存部分が現行のルート3であった場合,増築設計により申請建築物が基準に適合していることを示すのですが,それは既存部分も含めて示すわけで,それは,当時の確認通知書の構造計算書の写しで示せることではありますが,ルート3の構造計算を行って適合を示した以上,既存部分についてももう一度構造適合性判定を要するものであることを回避するための規定です。

平成19年以後のルート3の設計で,その後に増築を必要とした申請があったでしょうが,はたして既存部分まで構造適合性判定を改めて取らせていたかどうか,恐らくは,取らせなかったとは思いますけど,平成27年6月施行の改正で,構造適合性判定が別申請として切り出されたことによって,法文上,改めての構造適合性判定が不要であることを規定しおかなければいけなかったものと解釈します。(平成28年4月9日記)


この規定は,条文がとても読みにくいです。条文と読み方を以下に紹介します。

施行規則第1条の3第10項  前各項の規定にかかわらず,増築又は改築後において,増築又は改築に係る部分とそれ以外の部分とがエキスパンションジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法のみで接するものとなる建築物の計画のうち,増築又は改築に係る部分以外の部分の計画が増築又は改築後においても令第81条第2項又は第3項に規定する基準に適合することが明らかなものとして国土交通大臣が定めるもの(以下この項及び第3条の7第4項において「構造計算基準に適合する部分の計画」という。)に係る確認の申請において、当該申請に係る建築物の直前の確認に要した図書及び書類(確認を受けた建築物の計画の変更に係る確認を受けた場合にあっては当該確認に要した図書及び書類を含む。次項において「直前の確認に要した図書及び書類」という。)並びに当該建築物に係る検査済証の写しを確認の申請書に添えた場合にあつては、第1項第一号ロ(2)に掲げる図書及び書類(構造計算基準に適合する部分の計画に係るものに限る。)を添えることを要しない。

H27告示第180号

既存部分の構造図や構造計算書などの添付が省略できるかわりに,その建物の確認通知書と検査済証の添付は必要です。

その図書省略をできる条件は,第1にはEXP.Jで分離した増築であることで,それ以外の条件を規定しているのがH27告示第180号です。

で,どういう条件なのかですが,ごめんなさい。2016年3月27日時点において,この告示の文面は私には解釈不能です。

規則第1条の3第10項で「構造計算基準に適合する部分の計画」という言葉を定義していて,それは,

構造計算基準に適合する部分の計画:増築又は改築後において,増築又は改築に係る部分とそれ以外の部分とがエキスパンションジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法のみで接するものとなる建築物の計画のうち,増築又は改築に係る部分以外の部分の計画が増築又は改築後においても令第81条第2項又は第3項に規定する基準に適合することが明らかなものとして国土交通大臣が定めるもの

です。この言葉の定義に該当するものが図書省略を適用できます。問題はどういうものがこの言葉の定義に該当するかです。

この定義文の中で有効なのは,実は「国土交通大臣が定めるもの」のところだけです。そして,最後の「もの」とは,「構造計算基準に適合する部分の計画」を定義したのですから「計画」です。「建築物」ではありません。

これを踏まえて告示を見ます。この告示は,

分離増改築計画のうち,既存部分の計画であって,直前の確認において既存部分の構造方法が構造計算により確かめられる安全性を有することが確認されたことにより,分離増改築計画のうち当該既存部分の構造方法が,その安全性を確かめる場合に用いることが認められる構造計算によって確かめられる安全性を有することが確認できるものとする。

となっています。上記は主語を省略しましたが,主語は「構造計算基準に適合する部分の計画」です。ですから,「構造計算基準に適合する部分の計画は,~ものとする。」がこの文書の骨格です。ここでも「もの」とは建築物ではなく計画です。で,ものの前にある「~」が図書省略を適用できる計画です。

その「~」の部分が,上記の下線部です。「分離増改築計画のうち,既存部分の計画であって,」は大丈夫でしょう。次の「~により」は過去の構造計算で適合した計画であることを指し,「そのことにより,安全性を確かめられるもの」という意味なのだとは思います。でも,上記の下線部を見て本当にそのように読めるものか私にはわかりません。

ところで,「過去の構造計算」の部分には,かっこ書きがついていまして,「政令第81条第2項第1号イもしくはロまたは第2号イまたは第3項に定める構造計算に限る」です。既存不適格の扱いを規定しているにもかかわらず,現行の構造計算で確かめたことに限定しています。これはほとんど利用価値のない規定にしか思えません。

現時点(2016年3月27日)で私にできたことはここまでです。この告示は難解すぎます。


<4月9日追記>

私は,3月27日時点において,既存不適格建築物にEXP.Jで分離して増築する場合の図書省略を規定した条文だと思い込んでいましたが,「過去の構造計算」のかっこ書きに「政令第81条第2項第1号イもしくはロまたは第2号イまたは第3項に定める構造計算に限る」とありますから,現行の政令第81条によって構造計算した既存建物について規定した条文です。

改正時の国土交通省の説明資料「改正概要(説明会で使用しているスライド資料)」の11ページに,「既存建築物(現行法適合)にエキスパンションジョイントを介して増築する場合、既存部分が現行法に基づく建築確認を既に受け、その後の改変がないなど現行の基準に適合していることが明らかな場合には、再度構造計算を行うことは不要とする。」と書いてあります。

既存建物が構造規定上現行法適合であることが条件ですから,平成19年以後に確認されたものについて図書省略を規定したものです。