<エキスパンションジョイント条文の法第20条第2項移動に伴う条文整理>
2015年6月施行の法改正で,エキスパンションジョイントによる構造関係規定の別棟扱いの条文が施行令第81条第4項にあったものを法第20条第2項に移動させています。このことによって,1棟の建築物がEXP.Jで複数の部分で構成されている場合のそれぞれの部分の構造計算にあたって,その規模に応じてルート1,ルート2,ルート3の計算方法を選択できるようになっています。
それ以外のことは,単なる条文整理なのですが,微修正も含まれていて,その条文整理を解説します。
<政令第81条第2項第1号イ,同第2号イに基づく告示が廃止>
政令第81条第2項第1号イに基づくH20告示第37号と同第2号イに基づくH20告示第38号が廃止されて,新しく「H27告示第189号」が定められ,「H19告示第1274号」の条文追加がされています。
旧告示は,本体の規模等からルート3での計算が必要とされたものでも,EXP.Jで分離された規模の小さな部分には別のルートが選択できたのですけど,実は全部が規模の小さな部分に分離されることも理論上はあり得て,その場合でもひとつはルート3での計算が義務付けられていました。
旧告示廃止で,この取り扱いがなくなりました。
新告示は,同じ政令第81条第2項第1号イを元にしていますが,第2項第2号イの間違いなのではないかと勝手に想像しています。
<H19告示第593号の簡略化>
ルート2以上の検討を必要とする建築物を指定するH19告示第593号の規定の各号には,EXP.Jで分離されてた建物の取り扱いをかっこ書きで規定しましたが,法第20条第2項で規定したことによって,かっこ書きが削除されました。
条文としてすっきりしただけではなく,適用も変わりました。
改正前:EXP.Jで切れている建物のすべてがルート1を適用できる規模である場合にのみすべてをルート1で計算できた
改正後:EXP.Jで切れている建物をそれぞれの規模によってルート1が適用できるかどうかを判断する
です。
<政令第137条の2の適用の整理>
法第20条について既存不適格建築物を増築(部分的な改築を含む)しようとするときに,既存不適格を継続したままで増築できる範囲を規定したのが政令第137条の2です。EXP.Jの規定を法第20条第2項で定めていますから,法第20条の適用除外となっているものを定めている政令第137条の2には法第20条第2項は及びません。それ自体は,改正前と変わっていませんが,この改正で政令第137条の2も修正されています。
まず,この政令の元となる法第86条の7が改正前は「政令で定める範囲内において増築等する場合においては」となっていたのを「当該政令で定める範囲内において増築等する場合にあっては,当該増築等の後の建築物の構造方法が政令で定める基準に適合する場合に限る」となっています。
もともと増築の規模のみを制限する規定ではありませんでしたから,条文の表現を規制の実態に即して修正したものです。
したがって,政令第137条の2は,範囲と基準とを並列して記述されています。また,第1号から第4号だったものが第1号から第3号までになっています。
第1号+第2号→第1号に統合
第3号→第2号
第4号→第3号
です。規制内容は変わっていません。
[ckckaisetsu1]
<将来の20条改正>
平成28年6月施行の法第20条の適用を受けた建築物が,将来の構造規定の改正によって既存不適格になることがあるでしょう。その建物を,EXP.Jで分離して増築する場合の扱いは次のとおりです。
建設当時(平成28年6月以後)の法第20条には第2項が存在していたのですから,増築する際の既存部分は別棟とみなされ,法第86条の7第1項を読む際に,EXP.Jで分離して増築する行為は,既存建物への増築とみなされません。したがって,既存部分の既存不適格を継続したままで,増築が可能です。
(この時点で,将来の改正における既存不適格の取り扱いを解説したHPは他にはないと思います。)
[chouritsulink]
このページの公開年月日:2016年3月25日