防火規定・木造規制の見直し(2015年6月施行)

<防火規定・木造規制の見直し(2015年6月施行)>

2015年6月施行の基準法改正では,構造適合性判定が確認申請とは切り離されたこと,ルート2の審査が建築主事でも行えるようになったことで事実上ルート2の構造適合性判定が不要になったことなど,手続き上の変更が注目されていますが,これとともに,法第21条,第27条の防火規定・木造規制が改正されています。

改正項目は次の通りです。

① 3000㎡を超える建築物でも3000㎡ごとに区画された建築物は木造等可燃材で作ることを可能とした(法第21条)

② 耐火建築物とする必要のあった特殊建築物のうち,一定の避難時間その建築物の倒壊などを防止できる構造にすることで建築を可能にした(法第27条)


①3000㎡を超える建築物でも3000㎡ごとに区画された建築物は木造等可燃材で作ることを可能とした(法第21条)

法第21条は,高さ13mまたは軒高さ9mを超える建築物について規定した第1項と,3000㎡を超える建築物について規定した第2項があります。いずれも,原則として主要構造部を耐火構造とすることを要求するもので,柱・梁などを木造とすることを制限する条文です。

とはいえ,第1項については,ただし書きがあり,3階建て以下,主要構造部が準耐火構造(柱梁などは1時間),周囲に3mの通路があるなどの基準(政令第129条の2の3第1項)に適合するものは木造とすることが認めれられていました。

今回の改正は,ただし書きのなかった第2項についてで,3000㎡を超えるものでも木造とすることを認めるものです。

法第21条第2項  延べ面積が3000㎡を超える建築物(その主要構造部(床,屋根及び階段を除く。)の前項の政令で定める部分の全部又は一部に木材,プラスチックその他の可燃材料を用いたものに限る。)は,次の各号のいずれかに適合するものとしなければならない。

一 第二条第九号の二イに掲げる基準に適合するものであること。

二 壁,柱,床その他の建築物の部分又は防火戸その他の政令で定める防火設備(以下この号において「壁等」という。)のうち,通常の火災による延焼を防止するために当該壁等に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので,国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものによつて有効に区画し,かつ,各区画の床面積の合計をそれぞれ3000㎡以内としたものであること。

上記の第1号はもともと第2項本文にあったものを切り出したもので,第2号が追加です。

そして,「政令で定める技術基準」は,政令第109条の5です。

政令第109条の5  法第21条第二項第二号の政令で定める技術的基準は,次に掲げるものとする。

一 壁等に通常の火災による火熱が火災継続予測時間(建築物の構造、建築設備及び用途に応じて火災が継続することが予測される時間をいう。以下この条において同じ。)加えられた場合に、当該壁等が構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。

二 壁等に通常の火災による火熱が火災継続予測時間加えられた場合に、当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限り、防火上支障がないものとして国土交通大臣が定めるものを除く。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。

三 壁等に屋内において発生する通常の火災による火熱が火災継続予測時間加えられた場合に、当該壁等が屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものであること。

四 壁等に通常の火災による当該壁等以外の建築物の部分の倒壊によつて生ずる応力が伝えられた場合に、当該壁等が倒壊しないものであること。

五 壁等が、通常の火災時において、当該壁等で区画された部分(当該壁等の部分を除く。)から屋外に出た火炎による当該壁等で区画された他の部分(当該壁等の部分を除く。)への延焼を有効に防止できるものであること。

さらに,法第21条第2項第2号の「大臣が定めた構造方法を用いるもの」とは,「H27告示第250号」です。政令第109条の5第2号の「大臣が除くもの」とは,「H27告示第249号」です。

この規定に関する解説としては「H27技術的助言(国住指第555号)」の第4第2項と「H27技術的助言(国住指第558号)」の別紙7があります。


②耐火建築物とする必要のあった特殊建築物のうち,一定の避難時間その建築物の倒壊などを防止できる構造にすることで建築を可能にした(法第27条)

法第27条は,法別表第1に掲げる特殊建築物についてその規模に応じて,耐火建築物・準耐火建築物にすることを義務付ける規定です。この規定が改正になって,耐火建築物だったものの一部が一定の避難時間その建築物の倒壊などを防止できる構造にすることで建築可能になっています。

まず,(い)欄(5)項(6)項の倉庫,自動車車庫,自動車修理工場などについて,耐火建築物,準耐火建築物を求めることの規定は変わっていません(法第27条第2項(耐火建築物要求),第3項(準耐火建築物要求))。

変わったのは(い)欄(1)項から(4)項で,法文上では,耐火建築物要求と準耐火建築物要求の区分がなくなっています。法別表第1も,(に)欄に掲げていた床面積を(は)欄に移すことで,耐火建築物要求と準耐火建築物要求を統合しています。だからといって,準耐火建築物要求のものを強化したわけではありません。

法第27条第1項   次の各号のいずれかに該当する特殊建築物は,その主要構造部を当該特殊建築物に存する者の全てが当該特殊建築物から地上までの避難を終了するまでの間通常の火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために主要構造部に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので,国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとし,かつ,その外壁の開口部であつて建築物の他の部分から当該開口部へ延焼するおそれがあるものとして政令で定めるものに,防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので,国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を設けなければならない。

一  別表第一(ろ)欄に掲げる階を同表(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供するもの

二  別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供するもので,その用途に供する部分(同表(一)項の場合にあつては客席,同表(二)項及び(四)項の場合にあつては二階の部分に限り,かつ,病院及び診療所についてはその部分に患者の収容施設がある場合に限る。)の床面積の合計が同表(は)欄の当該各項に該当するもの

三  別表第一(い)欄(四)項に掲げる用途に供するもので,その用途に供する部分の床面積の合計が三千平方メートル以上のもの

四  劇場,映画館又は演芸場の用途に供するもので,主階が一階にないもの

上記法第27条第1項の「政令で定める技術基準」が政令第110条です。

政令第110条  主要構造部の性能に関する法第27条第一項の政令で定める技術的基準は,次の各号のいずれかに掲げるものとする。

一 次に掲げる基準
イ,ロ,ハを省略

二 第107条各号又は第108条の三第一項第一号イ及びロに掲げる基準

政令第110条に新しい用語「特定避難時間」が出ていまして,「特殊建築物の構造,建築設備及び用途に応じて当該特殊建築物に存する者の全てが当該特殊建築物から地上までの避難を終了するまでに要する時間をいう。」と定義されています。

上記法第27条第1項の「(主要構造部について)大臣が定める構造方法」が「H27告示第255号」の第1で,「(防火設備について)大臣が定める構造方法」が「H27告示第255号」の第2です。

上記法第27条第1項の「延焼するおそれがあるものとして政令で定めるもの」が政令第110条の2です。

政令第110条の2  法第27条第1項の政令で定める外壁の開口部は,次に掲げるものとする。

一  延焼のおそれのある部分であるもの(法第86条の4第1項各号のいずれかに該当する建築物の外壁の開口部を除く。)

二  他の外壁の開口部から通常の火災時における火炎が到達するおそれがあるものとして国土交通大臣が定めるもの(前号に掲げるものを除く。)

上記法第27条第1項の「防火戸その他の政令で定める防火設備」が政令第109条です。

政令第109条  ~~法第27条第1項(法第87条第3項において準用する場合を含む。第110条から第110条の3までにおいて同じ。)及び~~の政令で定める防火設備は,防火戸,ドレンチャーその他火炎を遮る設備とする。
2 隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の二以上の建築物(延べ面積の合計が五百平方メートル以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線のあらゆる部分で、開口部から一階にあつては三メートル以下、二階以上にあつては五メートル以下の距離にあるものと当該開口部とを遮る外壁、そで壁、塀その他これらに類するものは、前項の防火設備とみなす。

上記法第27条第1項の「遮炎性能に関して政令で定める技術的基準」が政令第110条の3です。

政令第110条の3  防火設備の遮炎性能に関する法第27条第1項の政令で定める技術的基準は,防火設備に通常の火災による火熱が加えられた場合に,加熱開始後20分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)に火炎を出さないものであることとする。

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この法第27条第1項の読み方は難しいです。

別表第1(い)欄(5)項倉庫などと(6)項自動車車庫などについては,同条第2項,第3項で条文が移行しただけで耐火建築物要求,準耐火建築物要求に変更がありませんからいいとして,第1項で規定した(1)項集会用途,(2)項病院・共同住宅等,(3)項学校等,(4)項百貨店等への義務付けが読みにくいですね。

第1項で義務付けている建築物は,第1号から第4号に掲げているもので,第2号が従前の規定では準耐火建築物で,第1号,第3号,第4号が従前の耐火建築物ですから,それをほぼ踏襲した形で規定されているのだろうと思うのですが,具体に構造を規定しているのは「H27告示第255号」の第1で,そこには,第2号を中心に準耐火建築物を規定しています。例えば,5階建ての共同住宅は耐火建築物が義務付けられるはずですが,この告示には,それを規定していません。ここから先は,悩み中です。

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このページの公開年月日:2016年4月10日