2018年9月施行の基準法改正

<2018年9月施行の基準法改正>

建築基準法が2018年6月27日に改正されました。この改正の施行は,改正後3か月で施行されるものと1年で施行されるものがあります。

このページでは,改正後3か月で施行されるものの改正内容を解説します。


改正の背景として「最近の大規模火災をめぐる状況や防火関連の技術開発をめぐる状況等を踏まえ、建築物・市街地の安全性の確保、既存建築ストックの活用、木造建築物の整備の推進などの社会的要請等に対応して規制を見直しました。」と国土交通省がHP上で説明しています。

ただ,改正後3か月で施行されるのは,「市街地の安全性確保,既存建築ストックの活用,木造建築物の整備」といった今回の改正の主要部分ではなく,主に手続き面と一部基準の緩和になります。

3か月施行の項目

・木造建築物等である特殊建築物の外壁等に関する規制の廃止(法第24条を削除)

・接道規制の適用除外に係る手続の合理化(法第43条の許可制度に認定を加える)

・接道規制を条例で付加できる建築物の対象の拡大

・容積率規制の合理化(老人ホーム等の共用の廊下等)

・日影規制の適用除外に係る手続の合理化

・仮設興行場等の仮設建築物の設置期間の特例

・計画通知で10㎡以下の増築手続きを不要(法第18条)

<木造建築物等である特殊建築物の外壁等に関する規制の廃止>

建築基準法第24条の木造建築物等である特殊建築物の外壁などの条文がそのまま削除されます。これまでは,例えば50㎡を超える自動車車庫の木造建築物は外壁の延焼恐れある部分を防火構造にしなければいけなかったのですが,その義務がなくなります。

これに伴って,政令第112条第12項で規定していた法第24条に基づく異種用途区画も廃止されます。

<接道規制の適用除外に係る手続の合理化>

法第43条ただし書きの許可制度が,許可制度と認定制度にわかれます。

接道していない敷地における建築のうち幅員4mの農道に面している場合などについて許可から認定に落とすことで審査会同意を省略して事務手続きの軽減を図るものです。

法第43条ただし書きが削られて,第2項で「前項の規定は,次の各号のいずれかに該当する時は適用しない。」として,第1号が新制度の認定で,第2号が従前からある許可です。

法第43条第2項第1号  その敷地が幅員4m以上の道(道路に該当するものを除き,避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)に2m以上接する建築物のうち,利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので,特定行政庁が交通上,安全上,防火上及び衛生上支障がないと認めるもの

施行規則の改正は9月12日に出されています。「省令で定める基準」は次のようになっています。

規則第10条の3第1項  法第43条第2項第1号の国土交通省令で定める道の基準は,次の各号のいずれかに掲げるものとする。

一  農道その他これに類する公共の用に供する道であること。

二  令第144条の4第1項各号に掲げる基準に適合する道であること。

同条第2項  令第144条の4第2項及び第3項の規定は,前項第2号に掲げる基準について準用する。

同条第3項  法第43条第2項第1号の国土交通省令で定める建築物の用途及び規模に関する基準は,延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合にあっては,その延べ面積の合計)が200㎡以内の一戸建て住宅であることとする。

この改正に伴って,道路と敷地の間に河川があり河川に橋や蓋掛けした場合の取扱いが技術的助言で示されています。

「法上の道路と当該部分(橋・蓋)を合わせて施行規則第10条の3第1項第1号または第4項第2号に規定する「農道その他これに類する公共の用に供する道」として扱い,認定又は許可の対象として差し支えない。」

となっています。

「農道その他」については,「農道や港湾道路が該当し」としています。「公共の用に供する道」が「公共が管理する道」ではないことから「私道ではあるが,私が誰にでも自由な通行を提供しているのだ」と主張する道についてはそれに該当する余地を残していますが,個人ではその意思の継続性に疑問があるので事実上,公共が管理する道に限られるものと思われます。

管理者の承諾書の添付に触れて,「法上の道路が担っている種々の機能の保持を図るとともに,接道義務を満たさない敷地の発生を防止することの観点等から,法第44条や法第45条の規定については,今後も引き続き,適切な運用を図ること。」としています。

<容積率規制の合理化>

法第52条第3項を改正して老人ホーム等の共用廊下などを合理化するものと,政令改正によるものの2つがあります。

1つ目は,これまで共同住宅では共用廊下などを容積率規制において不算入としていたのを老人ホーム等へも拡大するものです。

2つ目は,政令第2条第1項第4号の「延べ面積」の定義の面積算入しない部分に「宅配ボックス」を追加しています。上限は同第3項で「100分の1」としています。この改正に伴って確認申請書の様式も改正されています。

<日影規制の適用除外に係る手続の合理化>

許可を受けた建物について,その後に増築などをする場合に,一定の条件のもとに再許可を不要とするものです。その条件は政令で規定されています。

令第135条の12第1項  法第56条の2第1項ただし書の政令で定める位置は,同項ただし書の規定による許可を受けた際における敷地の区域とする。

同条第2項  法第56条の2第1項ただし書の政令で定める規模は,同項に規定する平均地盤面からの高さの水平面に,敷地境界線からの水平距離が5mを超える範囲において新たに日影となる部分を生じさせることのない規模とする。

<仮設興行場等の仮設建築物の設置期間の特例>

オリンピックを想定した仮設建築物について,1年以上でも許可することができるようにしたものです。

<その他の改正>

上記の項目にはありませんが,法第42条第1項第5号の道路位置指定に管理者の承諾書貼付が義務付けられています。〈2018年9月施行のその他の改正

改正資料

この法改正に関しては「建築基準法の一部を改正する法律について(国土交通省HP,平成30年7月5日→9月25日更新)」で見ることができます。

また,3か月施行のものに関しては「改正建築基準法の一部が9月25日に施行されます(国土交通省HP)」で見ることができます。

改正法(新旧対照表)」←この中の第1条(1から13ページ)が3ヵ月施行です。

改正施行令(新旧対照表)

改正施行規則(新旧対照表)

改正法の施行について(技術的助言)(平成30年9月21日国土交通省住宅局長)

改正法の施行について(技術的助言)(平成30年9月21日国土交通省住宅局建築指導課長市街地建築課長)

申請書の様式の改正

改正に伴う申請書の新様式は「東京都HP」が最も早く掲載してくれるのですが施行日(9月25日)にはアップされていませんでした。でも,翌日にはちゃんと掲載されました。

このページの公開年月日:2018年9月24日