2019年1月施行の告示改正

<2019年1月施行の告示改正>

緩勾配屋根の積雪荷重の強化

2015年2月の豪雪で体育館の屋根が崩落するなど大きな被害を生じたことを受けて積雪荷重を強化する改正が行われています。

この被害は,積雪の後に雨が降ったことにで積もった雪がさらに重くなって,特に,大きな屋根で勾配の緩い屋根がその重量に耐えられなくなって生じたものです。このため,大きくて勾配の緩い屋根に作用する積雪荷重を係数によって割り増しするようになっています。

これが適用される条件は,

建物の立地条件として,

・多雪区域以外の区域で垂直積雪量が15㎝以上のところ

であり,

屋根の形態などの条件として,

・屋根勾配が15度以下であり,

・屋根の最上端から最下端までの水平投影長さが10m以上であり,

・屋根版が鉄筋コンクリート造,鉄骨鉄筋コンクリート造でないもの

となっています。

新たに「特定緩勾配屋根部分」という用語が定義されて,この屋根に割り増しが適用されます。

<改正されたのは積雪告示ではない>

積雪荷重の割り増しですから,施行令第86条かその下にあるH12告示第1455号「多雪区域を指定する基準及び垂直積雪量を定める基準を定める件」を改正したものと思ったら,そうではありません。

施行令第82条第1号の計算方法を定める告示であるH19告示第594号「保有水平耐力計算及び許容応力度等計算の方法を定める件」を改正しています。

積雪告示は,垂直積雪量(雪が降り積もる深さ)を規定していますから,この告示では荷重の割り増しを規定することができなかったからです。

改正された告示は「日本建築士事務所協会連合会」HPの「平成30年国土交通省告示第80号」で見ることができます。

また,改正の考え方や割り増し式を作った根拠資料は国土交通省HPの「一定規模の緩勾配屋根について積雪荷重を強化します」で見ることができます。この割り増し式によれば,①屋根が広いほど,②勾配が緩いほど,③積雪深さが少ないほど割り増しが大きくなるようになっています。①と②は当然のことと思いますが,③はちょっと不思議な気がします。割り増しの係数αは,積雪荷重に乗じるものですから,積雪深さが少ないほど影響が大きくなるものです。

<個人的なQ&A>

Q:この告示は施行令第82条第1号の計算方法を定めたものであり,令第82条は保有水平耐力計算を規定したものだから,この積雪荷重の割り増しはルート3の場合にしか適用されないのではないか。

A:いえ,そんなことはありません。ルート1の許容応力度計算は,施行令第81条第3項で規定されていて,そこには「次条各号(つまり第82条)」の計算を求めているのですから,ルート1でも積雪荷重の割り増しは適用になります。ルート2の場合も同様です。

Q:特定緩勾配屋根部分の定義に「鉄筋コンクリート造のものを除く」が含まれていないのはなぜか。

A:屋根がコンクリートスラブであるような重量物に対しては,積雪荷重の影響を考慮する必要がありませんから,割り増し適用を除くのですが,その適用除外の仕方が,「建築物(屋根版を鉄筋コンクリート造としたものを除く)」と規定されています。「建物で適用除外しても,屋根で適用除外しても結果は同じだ」なんてことはありません。改正告示の条文では,コンクリートスラブの屋根と鋼板屋根が混在した建物について「鉄筋コンクリート造としたものを除く」としているのだから鋼板屋根部分に割り増しは適用されない,となってしまいます。安全に関する規定ですから,こんなことを主張する構造設計者はいないとは思いますが,条文上はそうした解釈が成り立つ余地を作っています。個人的な思いですが作法ミスだと思っています。

Q:割り増し係数αを算出する時に使う「最上端から最下端までの水平投影長さ」とは?

A:「屋根の」という言葉が省略されているということは大丈夫と思います。ただ,本当に屋根の一番高い点から一番低い点までの水平距離として適用するとおかしなことになります。「屋根の水勾配方向の水平距離」として適用すべきです。屋根の形状によっては屋根の位置によって「水勾配方向の水平距離」は違っていますから,屋根の部分に応じて水平距離も変化させていいものと思います。とはいえ,条文上は「『最上端から最下端まで』となっている以上そのように適用する」という人がいたとしても止めることはできませんね。

※ この改正は2019年1月15日施行です。

このページの公開年月日:2019年6月13日