<複数独立部分がある場合の既存不適格の継続(法第86条の7第2項)>
増築などを行う場合に既存不適格が継続できるかどうかの考え方は〈いつの建築基準法が適用されるか(既存不適格,遡及適用)〉と〈増築における既存不適格の継続と遡及適用〉で解説したとおりですが,ここでは,法第86条の7第2項に規定する既存部分に独立部分がある場合の既存不適格の扱いを解説します。
法第86条の7第2項 第3条第2項の規定により第20条又は第35条(同条の技術的基準のうち政令で定めるものに係る部分に限る。以下この項及び第87条第4項において同じ。)の規定の適用を受けない建築物であつて,第20条又は第35条に規定する基準の適用上一の建築物であつても別の建築物とみなすことができる部分として政令で定める部分(以下この項において「独立部分」という。)が2以上あるものについて増築等をする場合においては,第3条第3項第3号及び第4号の規定にかかわらず,当該増築等をする独立部分以外の独立部分に対しては,これらの規定は,適用しない。
法第86条の7第2項は勘違いしやすい条文です。ここでで緩和しているのは,既存建物の独立部分です。で,「独立部分が2以上ある」とは,「既存部分に2以上ある」ということです。例えば法第20条の構造耐力規定の適用においては,エキスパンションジョイントで切れていることでもって独立部分というのですが,既存部分にエキスパンションで切れている部分が2つ以上あることが条件です。そして,緩和されるのは増築工事から離れているところの独立部分です。
<独立部分への既存不適格継続が適用できる条文>
単体規定
法第20条(構造耐力)
法第35条(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)のうち
政令第117条第1項(廊下,階段及び出口の適用範囲),令第118条(客席からの出口の戸)から令第126条(屋上広場等)までの廊下幅,直通階段,2以上の直通階段,避難階段,特別避難階段,屋外への出口までの距離などの規定,
政令第126条の2第1項(排煙設備の設置),令第126条の3(排煙設備の構造),
政令第126条の4から令第126条の5(非常用照明の設置)
集団規定 なし
上記が,既存建物に独立部分が複数ある場合の既存不適格の継続を受けられる条文です。
法第20条の構造耐力と第35条の避難規定とでは,独立部分の定義や適用の考え方が違いますので,別々に考える必要があります。
〈既存部分に独立部分が複数ある場合の法第20条の既存不適格の継続〉
〈既存部分に独立部分が複数ある場合の法第35条の避難規定の既存不適格の継続〉
を見てください。
[ckckaisetsu1]
<参考>
既存部分からエキスパンションで切って増築するから既存部分は既存不適格が継続すると考える人がいますが,そんなことはありません。
[ckizonhutekikakulink]
[ckckaisetsu2]
このページの公開年月日:2016年6月13日