既存不適格が継続する小規模な増築工事(法第86条の7第1項)

<既存不適格が継続する小規模な増築工事(法第86条の7第1項)>

増築などを行う場合に既存不適格が継続できるかどうかの考え方は〈いつの建築基準法が適用されるか(既存不適格,遡及適用)〉と〈増築における既存不適格の継続と遡及適用〉で解説したとおりですが,ここでは,法第86条の7第1項に規定する小規模な増築工事等の扱いを解説します。

<小規模な増築等で既存不適格の継続ができる条文>

単体規定

法第20条(構造耐力),

法第26条(防火壁),

法第27条(耐火・準耐火建築物),

法第28条の2のうち,第1号と第2号(石綿の使用制限),

法第30号(長屋または共同住宅の住戸の遮音界壁),

法第34条第2項(非常用昇降機),

集団規定

法第47条(壁面線による建築制限),法第48条(用途地域制限),法第51条(卸売市場等の用途に供する特殊建築物の位置),法第52条第1項,第2項,第7項(容積率制限),法第53条第1項,第2項(建ぺい率制限),法第54条第1項(住居専用地域内の外壁の後退距離),法第55条第1項(住居専用地域内の高さ制限),法第56条第1項(道路斜線,隣地斜線,北側斜線),法第56条の2第1項(日影規制),法第57条の4第1項(特例容積率適用地区内における建築物の高さ限度),法第57条の5第1項(高層住居誘導地区),法第58条(高度地区),第59条第1項第2項(高度利用地区),第60条第1項第2項(特定街区),第60条の2第1項第2項(都市再生特別地区),第60条の3第1項(特定用途誘導地区),第61条(防火地域内の建築物),第62条第1項(準防火地域内の建築物),第67条の3第1項,第5項から第7項まで(特定防災街区整備地区),第68条第1項第2項(景観地区)

上記が,小規模な増築工事等において既存不適格の継続が受けられる条文です。

具体的に,どのような増築工事について適用できるのかを規定したのが,政令第137条の2から第137条の12です。

既存不適格の継続が受けられる条文 既存不適格の継続が受けられる条件
法第20条(構造耐力) 令第137条の2〈増築における法第20条の既存不適格の扱い
法第26条(防火壁)  令第137条の3  ~増築及び改築については,工事の着手が基準時以後である増築及び改築に係る部分の床面積の合計が50㎡を超えないこととする
法第27条(耐火・準耐火建築物)  令第137条の4  ~増築(劇場の客席,病院の病室,学校の教室その他の当該特殊建築物の主たる用途に供する部分以外の部分に係るものに限る。)及び改築については,工事の着手が基準時以後である増築及び改築に係る部分の床面積の合計が50㎡を超えないこととする
法第28条の2のうち,第1号と第2号(石綿の使用制限)  令第137条の4の3  ~増築及び改築については,次に定めるところによる

一  増築又は改築に係る部分の床面積の合計が基準時における延べ面積の2分の1を超えないこと

二  増築又は改築に係る部分が前条に規定する基準に適合すること

三  増築又は改築に係る部分以外の部分が,建築材料から石綿を飛散させるおそれがないものとして石綿が添加された建築材料を被覆し又は添加された石綿を建築材料に固着する措置について国土交通大臣が定める基準に適合すること

法第30号(長屋または共同住宅の住戸の遮音界壁)  令第137条の5  ~増築については増築後の延べ面積が基準時における延べ面積の1.5倍を超えないこととし,改築については改築に係る部分の床面積が基準時における延べ面積の2分の1を超えないこととする
法第34条第2項(非常用昇降機)  令第137条の6  ~増築及び改築については,次に定めるところによる

一  増築に係る部分の建築物の高さが31メートルを超えず,かつ,増築に係る部分の床面積の合計が基準時における延べ面積の2分の1を超えないこと

二  改築に係る部分の床面積の合計が基準時における延べ面積の5分の1を超えず,かつ,改築に係る部分の建築物の高さが基準時における当該部分の高さを超えないこと

集団規定については省略する。

大規模の修繕・模様替】この表の第20条と第28条の2第1号と第2号以外については,既存不適格が継続する。第28条の2については増築と同じように固着(封じ込め)措置が適用される。第20条については〈増築における法第20条の既存不適格の扱い〉を見てください。

例えば,法第26条の防火壁について既存不適格になっている建築物に増築する場合は,50㎡以下の増築であれば既存不適格を継続して増築できます。「基準時以後である増築の床面積の合計」と規定されていますから,40㎡増築して,その数年後にもう一度40㎡の増築をする場合は,2回目の増築で50㎡を超えますから既存不適格が消滅します。

上記は法第26条ですが,各条文に対する増築可能な条件を一覧表にしたものがあると便利です。大阪府内建築行政連絡会議が出している「既存建築物の増築等における法適合性の確認取扱要領及び同解説(平成30年4月)」の21ページ目(資料としては18ページ)に一覧表があります。この一覧表の「法第86条の7第1項」の列に記されているのが増築可能な条件です。

法第86条の7第1項による既存不適格の継続は,増築する規模が小さい場合に認めるものですが,法第20条(構造耐力)と法第28条の2第1号と第2号(石綿の使用制限)については,増築規模のみの制限に加えて既存部分にも条件が付加されます。

法第20条(構造耐力):既存部分にも耐震補強などの制限が適用される

法第28条の2:既存部分で石綿が使用されていたところには封じ込めが要求される

上記のうち法第20条は特に複雑ですから,〈増築における法第20条の既存不適格の扱い〉で説明します。

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このページの公開年月日:2016年6月17日