<建築士でなければできない業務>
一級建築士,二級建築士,木造建築士でなければできない業務は,建築士法第3条,第3条の2,第3条の3で
法第3条 左の各号に掲げる建築物(建築基準法第85条第一項又は第二項に規定する応急仮設建築物を除く。)を新築する場合においては,一級建築士でなければ,その設計又は工事監理をしてはならない。
一 学校,病院,劇場,映画館,観覧場,公会堂,集会場(オーデイトリアムを有しないものを除く。)又は百貨店の用途に供する建築物で,延べ面積が500㎡をこえるもの
二 木造の建築物又は建築物の部分で,高さが13m又は軒の高さが9mを超えるもの
三 鉄筋コンクリート造,鉄骨造,石造,れん瓦造,コンクリートブロツク造若しくは無筋コンクリート造の建築物又は建築物の部分で,延べ面積が300㎡、高さが13m又は軒の高さが9mをこえるもの
四 延べ面積が1000㎡をこえ、且つ、階数が2以上の建築物
法第3条の2 前条第一項各号に掲げる建築物以外の建築物で,次の各号に掲げるものを新築する場合においては,一級建築士又は二級建築士でなければ,その設計又は工事監理をしてはならない。
一 前条第一項第三号に掲げる構造の建築物又は建築物の部分で,延べ面積が30㎡を超えるもの
二 延べ面積が100㎡(木造の建築物にあっては,300㎡)を超え,又は階数が2以上の建築物
法第3条の3 前条第一項第二号に掲げる建築物以外の木造の建築物で,延べ面積が100㎡を超えるものを新築する場合においては,一級建築士,二級建築士又は木造建築士でなければ,その設計又は工事監理をしてはならない。
と規定されています。
この条文で規定する「建築士でなければ〇〇してはならない」の「設計」「工事監理」という用語は,法第2条で定義されています。「延べ面積」や「階数」などの用語も法第2条で「建築基準法第92条の規定により定められた算定方法によるもの」と定められています。
<増築の資格要件>
法第3条などの記述が「~ものを新築する場合においては」とされているので,増築工事では建築士であることが求められないのかと思えてしまいますが,
法第3条第2項 建築物を増築し,改築し,又は建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をする場合においては,当該増築,改築,修繕又は模様替に係る部分を新築するものとみなして前項の規定を適用する。
となっていますので,増築工事でも規模に応じて建築士資格が必要です。ただ,「当該増築に係る部分を新築するものとみなして適用する」のですから,増築する部分のみの面積で適用することになります。
<業務独占の関連規定>
上記のように,建築士法で建築士の業務独占(建築士でなければ規模に応じて設計などをすることができない)が規定されているのですが,この業務独占を確実なものとする仕組みが建築基準法に規定されています。
建築基準法第5条の6第1項 建築士法第3条第1項・・・に規定する・・・建築物の工事はそれぞれ当該各条に規定する建築士の設計によらなければすることができない。
と工事をする人の義務を定めており,
同条第4項 建築主は,第1項に規定する工事をする場合においては,それぞれ建築士法第3条・・・に規定する建築士・・・である工事監理者を定めなければならない。
と建築主への工事監理者設置義務を定め,
同条第5項 前項の規定に違反した工事は,することができない。
と工事をする人の義務を定めています。
建築士法第3条等だけではなく,建築基準法第5条の6の条文とで連携して,建築士の業務独占は守られています。
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<個人見解>
法第3条第1項は,第2号で木造,第3号で鉄筋コンクリート造や鉄骨造を規定しています。第4号はそれ以外の構造の建築物と言う意味なのですが,それが何を指しているのかわかりにくいです。
<増築工事の資格要件>
増築工事で建築士資格を要するかどうかを規定したのが法第3条第2項です。「当該増築工事をする部分を新築するものとみなして適用する」のですから,面積の小さい増築工事は建築士の資格がいらないということになってしまいます。小さな増築工事でも建物全体で基準法への適合を検討しなければいけませんから,既存部分を含む建築物全体で資格要件を適用すべきとは思いますが,法令の定めは「当該増築工事をする部分」となっています。
増築でもない大規模改修などにもならない単なる内装改修工事は,建築士資格を要しないことになります。
<個人見解>
建築士の業務独占は,建築士個人の利益のためにあるのではありません。違反建築物をなくすための制度のひとつであって,建築物に関して社会の安全・安心を保つためにあるものです。
このページの公開年月日:2018年5月1日