<特殊建築物かどうかの判断例>
〈特殊建築物〉を定義している条文を読めば,特殊建築物かどうかを判断できるかといえばそうではありません。条文の中に書いてある「共同住宅」などの用語が定義されていないからです。計画している建築物が別表の用途のどれに当てはめるのかを考えなければいけません。
このページでは,特殊建築物に該当するかどうかを判断するための解説や考え方を掲載します。
<共同住宅と長屋>
「共同住宅」も「長屋」もひとつの建物に複数の住宅が入っているものです。違いは,共用部分があるかどうかです。イメージとしては,「長屋は住宅が横に並んでいるもの」「共同住宅は,マンションのように立体化したもの」という感じです。法的な区分としては,住宅の玄関を出たところが直接に外部になっているものが長屋で,住宅の玄関を出たところが共用の廊下になっていて廊下や階段を通って建物の外に出るようになっているものを共同住宅としています。このことは,例えば「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」に書いてあります。
<戸建て型グループホーム>
これは,寄宿舎に該当するそうです。「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」に書いてあります。
<カラオケルーム>
これは,遊技場に該当するそうです。同様です。
<集会場の範囲>
法別表第1(い)欄の第1号は集会用途のものです。前方にステージがあって,演劇や,落語や,音楽コンサートや,講演が演じられてそれを多数の観衆が座って,または,立ち席で見る施設のことです。映画館はステージではなく大画面です。固定ステージとひな壇状の固定座席がある本格的な劇場建築を想像します。そうしたものが第1号の集会用途となることは間違いありません。
結婚式場や葬祭場も多数の人が列席して,中央のステージで行われる催事を見守りますね。結婚式場や葬祭場はどうなるのでしょうか。「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」では集会場に該当するとされています。「大会議室」や「ホテルの大宴会場」も1室の床面積が200㎡以上のものを「不特定多数の者が集会等に利用できる室」とみなすとしています。
200㎡を超える部屋に,椅子を並べればけっこうたくさんの人が入れますから,特殊建築物として規制しようということでしょう。
<無認可保育園>
保育園は,児童福祉法第7条に規定する児童福祉施設ですから,特殊建築物に該当します。では,無認可保育園はどうなるのでしょうか。オフィスフロアーの一室を使ってごく数人の子供を預かる施設もありますから,小規模なものはオフィスで子供を預かっているだけであって,その部屋が保育園になるわけではありません。でも,企業の社員のための保育施設で,規模の大きなものもあります。企業の社員専用の保育施設は児童福祉法上の保育園ではありませんから,保育園の定義からは外れるものです。ここからは個人的な意見ですが,規模の大きなものは建築基準法の適用において保育園と判断すべきなんだと思います。ならば,その規模は何㎡,何人なのかとなりますが,これも個人的な感覚で複数の部屋にわけて過ごさせるほどの規模であれば,保育園として適用すべきかと思います。
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<備考>
建築基準法は,用途を示して,例えば,共同住宅に必要な安全基準を定めていますが,肝心の「共同住宅とは何か」が示されていません。そもそも「住宅とは何か」が示されていませんし,集会場,病院,学校,百貨店,自動車駐車場など,どの用途の用語もどのようなものをいうのかの定めがありません。このため,どうみても戸建て住宅なのに「これは倉庫だ」と言い張って申請した場合,審査は倉庫として審査して確認されてしまうという欠点があります。「住宅とは何にか」という定義を法文上で規定することは,なかなかに難しいことで,定義がないのもやむを得ないかなと思います。建築物の用途をどのように規定するかは,ある意味建築基準法の限界だと思っています。
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このページの公開年月日:2017年8月27日