<「土砂災害危険箇所」と「土砂災害警戒区域・特別警戒区域」の建築的な意味>
建物にとって敷地の安全性は重要です。敷地の安全性を検討するうえでの指標に「土砂災害危険箇所」と「土砂災害警戒区域・特別警戒区域」があります。指定は各都道府県がしていて,国土交通省のHPから見ることができます。
「各都道府県が公開している土砂災害危険箇所と土砂災害警戒区域」(国土交通省HP)
「土砂災害危険箇所」も「土砂災害警戒区域・特別警戒区域」も,渓流の土石流や傾斜地の地すべりなどの危険性を示すもので似たような意味合いのものですが,根拠や建築する上での法律上の扱いが異なります。
「土砂災害危険箇所」は,法律上の根拠がないもので,建築基準法等建築基準上の定めもありません。指定根拠は「土砂災害危険箇所調査要領」です。
一方,「土砂災害警戒区域・特別警戒区域」は,「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止の推進に関する法律」の第6条と第8条で都道府県が指定するもので,第24条で特別警戒区域内における居室のある建物について建築基準法第6条の確認申請手続きや安全基準も適用されます。
安全基準の適用根拠は第23条で,具体には建築基準法第20条に基づく政令の規準で,建築基準法施行令第80条の3が適用されます。この条文の下に平成13年国土交通省告示第383号があって,安全基準が定められています。
似たようなものに,「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」の第3条第1項で指定された「急傾斜地崩壊危険区域」があります。都道府県が指定するのですが指定した区域をHP上では公開していないようです。
「急傾斜地崩壊危険区域」は,各都道府県の建築条例でそのまま建築基準法第39条の「災害危険区域」として指定していますから,建築条例による制限がかかります。
上記のように,「土砂災害危険箇所」「土砂災害警戒区域・特別警戒区域」「急傾斜地崩壊危険区域」と3つのものがあります。簡単にまとめると,
土砂災害警戒区域:指定に法律根拠あり,法的な建築制限なし
土砂災害特別警戒区域:指定に法律根拠あり,法的な建築制限あり
急傾斜地崩壊危険区域:指定に法律根拠あり,法的な建築制限あり
となります。
法的な制限があるところはその危険性を勘案して建築を断念するなり安全基準に適合した対策をして建築するなり,定められたことをしなければいけません。問題は,法的な制限がないものをどうするかです。法的に制限されていないとは言え危険性が指摘されている以上,設計上の考え方として安全対策をして建築することは必要なのだと思います。
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<法令>
「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止の推進に関する法律」
「 同 施行令」
「 同 施行令」
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このページの公開年月日:2014年8月23日