耐火構造等の外壁に可燃材を貼ることの制限

耐火構造等の外壁に可燃材を貼ることの制限

耐火構造等の外壁に意匠目的で木材などの可燃材を貼りたいことがあります。また,外断熱で合成樹脂の断熱材を吹き付けたいこともあります。こうした場合の制限について解説します。

この規制の考え方は,耐火構造の告示(H12告示第1399号)によって規定される外壁(いわゆる一般認定の耐火構造)と法第68条の25の構造方法等の認定を受けた外壁(いわゆる個別認定の耐火構造)とでは異なっていますので,それぞれ解説します。

一般認定の場合

一般認定の耐火構造の外壁とは,H12告示第1399号第1で規定されるもので,耐力壁である外壁と非耐力壁の外壁ではそれぞれ第4号,第5号を根拠としますから異なる内容なのですけど,両号とも主には第1号を指しますので,例えば,「鉄筋コンクリート造で厚さが10センチ以上のもの(外壁)」を指します。この告示中に,その外壁に木材などの可燃材を貼っていいかどうか,貼ってはいけないことも,貼っていい条件のいずれも規定されていません。規定されていませんが,解説書では次のようになっています。

「表面材として木材などの可燃材料を貼る場合や,外壁に一定性能を有する外断熱材を施す場合は,それぞれの構造に必要な性能を損ねないと判断できる」(建築物の防火避難既定の解説)

え?「木材を貼っても耐火性能を損ねない。」と書いてありますね。つまり,貼ってもいいということです。しかも,条件は記されていないということです。外断熱の場合は「一定性能を有する」という条件付きで,「グラスウール,ロックウール等の不燃系の断熱材が考えられる」と解説されていますから,そういう条件付きです。

この解説の「木材を貼っても耐火性能を損ねない」は本当なんだろうかと,疑問に感じますね。実は,同じページに「解説欄」があって,「それぞれの構造に必要な性能を損ねないと判断できる程度のものであれば支障ないものとした」とされています。そうでしょうね。「性能を損ねないと判断できる程度の貼り方であればいい」ということであって,無条件・無制限に木材などの可燃材を貼っていいわけではありません。ならば,どの程度の材料をどの範囲まで貼ってもいいのかという議論になりますが,ここより先は,法令にも解説書にも示されていません。解説書にも示されていないものをどうするのかは,「設計者の責任で」ということでしょうし,「設計者の責任で」とは「実証可能な根拠に基づかない限り,設計者の責任を示すことはできない」と考えるべきでしょう。

2020年10月に韓国の蔚山市で33階建ての高層ビルの外壁が燃えています〈蔚山市,住商複合高層ビル火災における考察〉。外壁に燃えやすい材料を貼っていいかどうかを考える上での参考になると思います。

個別認定の場合

個別認定の外壁に認定された条件にない材料を貼ることについては,原則として,認定条件に外れるものと考えられているようです。例えば,サイディング材料で耐火性能を検証して耐火の外壁として認定されたものは,実験を行った材料の組み合わせでしか検証していないので,別の材料をさらに貼り付けるということは認定条件に反するということです。

それを前提として,認定範囲内とみなされる条件について技術的助言が出されています。「耐火構造等に係る構造方法等の認定を受けた外壁に不燃材料等を張る場合の防火上の取り扱いについて(技術的助言)」(国住指第4291号平成27年2月13日)です。

これによれば,外装材に窯業系サイディングを用いるものに不燃材料等を有機系接着剤を用いて張ったものは,認定の範囲内であるとされています。
その「不燃材料等」も具体的に示されています。

個別認定の外壁の場合は,貼っていいものがかなり限られます。

このページの公開年月日:2020年11月16日