<天井の落下対策(特定天井)>
2011年の東北地方太平洋沖地震において多くの建物で大空間の天井落下被害が生じました。これは実は1995年の兵庫県南部地震や芸予地震など近年の地震で繰り返されてきたことで,建物全体の構造体としての耐震性が向上する中で大空間を有する建物の天井落下被害が目につくようになりました。大空間を有する建物とは,体育館であったり,駅のコンコースであったり,劇場の客席部分であったりすることが多く,多人数を収容し,しかも被災時に避難所として使われる場所であったりするため,その安全性の向上が求められていました。
こうしたことを受けて,2013年7月12日に建築基準法施行令を改正して,天井の安全対策が基準化されました。
施行令には,「大臣が定める基準に適合しなければならない」と規定し,告示(2013年8月5日付け)で守るべき基準を示しています。
この政令改正により,「基準を適用する天井を『特定天井』といい,特定天井が何であるかは告示で示され,どのような基準を適用するのかも告示で示される」とされています。
政令改正の公布日:2013年7月12日
改正政令の施行日:2014年4月1日
新告示の制定日:2013年8月5日
この改正に関する国土交通省発表はこちらです。「政令改正(天井落下対策)についての記者発表」
改正された政令はこれです。
令第39条第3項 特定天井(脱落によつて重大な危害を生ずるおそれがあるものとして国土交通大臣が定める天井をいう。以下同じ。)の構造は,構造耐力上安全なものとして,国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
令第39条第4項 特定天井で特に腐食,腐朽その他の劣化のおそれのあるものには,腐食,腐朽その他の劣化しにくい材料又は有効なさび止め,防腐その他の劣化防止のための措置をした材料を使用しなければならない。
※ 令第39条第3項では,「大臣が定めた構造方法」とあるが,仕様書的に構造方法を定めただけではなく,計算による安全基準も定めており,どちらかを選択できるようになっている。
※ その他,令第36条で耐久性関係規定に定められたことと,令第81条,第82条の5で構造計算の必要性が定められている。
<特定天井の新告示(平成26年4月施行)>
新告示「特定天井及び特定天井の構造耐力上安全な構造方法を定める件」
上記の改正政令と新告示で規定されたことの概略は,特定天井の定義と特定天井に該当する物の安全基準適用の義務です。
特定天井の定義:吊り天井で,下記のいずれにも該当するもの(告示の第2で定義)
- 居室・廊下などで人が立ち入る場所に設けられたもの
- 天井高さが6mを超え,かつ,面積が200㎡を超えているもの
- 天井面の構成部材の質量が2kg/㎡を超えるもの
特定天井に適用される安全基準:告示の第3第2項と第3項が仕様書的規定で,同第4項が計算によるもの
詳しくは告示を見てください。
特定天井のことなら,「一般社団法人建築性能基準推進協会」が講習会テキストとして公開している「建築物における天井脱落対策にかかる技術基準の解説」がわかりやすいです。
上記資料の12ページ目(資料のページでは16ページ)に,天井高さが6mを超える部分と超えない部分が混在している場合の特定天井の扱いや,天井が梁型で分断されている場合の扱いが解説されています。特定天井として制限を受けるか受けないかの判断を示したものでして,事実上,これが公式見解として使用されるのだと思います。
<隙間なし特定天井告示改正(平成28年6月施行)>
天井と周囲の壁との間に隙間を設けない場合の基準が平成28年6月1日に施行されています。
改正後の告示「特定天井及び特定天井の構造耐力上安全な構造方法を定める件(平成28年改正)」
この改正も,「一般社団法人建築性能基準推進協会」が講習会テキストとして公開している「新たな特定天井の技術基準(平成28年)」がわかりやすいです。
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<参考>
法令ではありませんが,天井落下対策については,日本建築学会もガイドラインを示しています。
「非構造部材の安全性評価及び落下事故防止に関する特別調査委員会」
「上記委員会の最終報告「天井等の非構造部材の落下事故防止ガイドライン」」2013年3月
また,文部科学省も「学校施設における天井等落下防止対策のための手引き」を出しています。
「学校施設における天井等落下防止対策のための手引きの策定についてHP発表」(2013年8月7日)
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このページの公開年月日:2013年7月17日