既存不適格の120㎡の倉庫を物品販売店舗に用途変更する時の法適用

<既存不適格の120㎡の倉庫を物品販売店舗に用途変更する時の法適用>

これまでは,既存不適格ではない建築物を用途変更する場合を考えました。既存不適格を考えるともっと難しくなります。今度は,既存不適格の120㎡の倉庫を店舗に変える場合を考えます。

<事例>

その床面積120㎡の倉庫は建築基準法が施行される前の昭和23年に建築された。

昭和25年の建築基準法施行に合わせて22条指定区域に指定された。

完成後,現在まで倉庫として使用された。

現在の所有者のやむなき事情(例えば勤務先の倒産で職を失った)で,所有者本人が店舗を開設し販売をはじめる。店舗とは,建物内部に商品を陳列し客が建物内で商品を見てその場で購入する営業形態とする。

倉庫のフロアーをそのまま利用して一切の工事はしない。

木造であり,倉庫に窓はなく,天井高さも2mしかない。屋根は不燃材ではない。住居専用地域ではない。

この前提で120㎡の倉庫を物品販売業を営む店舗に用途変更する行為に対して,建築基準法はどのように適用されるのでしょうか。

ひとつ前の〈120㎡の倉庫を物品販売店舗に用途変更する時の法適用〉と違うのは,建物が既存不適格であるということです。

法第87条第1項は同じように適用されて「手続き規定の準用」とともに,建築基準関係規定への適合が求められます。ここで問題になるのは,いつの建築基準関係規定が適用されるのかです。〈いつの建築基準法が適用されるか(既存不適格,遡及適用)〉で説明したように,法第3条第3項で既存の建物に対しての建築基準法の適用はありませんから,昭和23年に建築された倉庫には適用される条文がありません。

次に,法第87条第2項は「次項(第3項)の建築物を除く」とありますので,既存不適格建築物は第3項の適用を受けますから第2項は適用されません。

そして,問題は同条第3項と第4項です。〈法第87条(用途変更)の逐条解説〉で解説したように,現行の第24条,第27条,第28条第1項若しくは第3項などの適用を受けます。法第48条は法第87条第2項では適用されませんでしたが,第3項で適用されます。48条に関してこの事例では適合しています。

第3項で遡及適用された結果,この倉庫には窓がありませんから第35条の3が適用され,木造ですから適合しません。用途変更すると基準に適合しませんから確認を受けられず,用途変更という行為を行うことができません。法第87条第1項により準用する第6条第1項で禁止されます。

ところで,屋根不燃に適合しないことの扱いはどうなるのでしょうか。法第22条は遡及適用されませんから,基準に適合はしていませんが,用途変更という行為をするにあたっての障害にはなりません。

天井高さの規定に適合しないことの扱いも,法第36条による規定でこれも法第87条第3項による遡及適用がありませんから,屋根不燃と同様です。となるかといえば,ちょっと違います。この倉庫は,天井高さの基準に対して既存不適格ではありません。倉庫であるがゆえに昭和25年の基準法施行時点において天井高さの規定の適用はなく適合しています。適合しているものは法第3条第3項第五号で既存不適格ではなくなります。したがって,天井高さの基準に適合しませんから確認を受けられず,用途変更という行為を行うことができません。倉庫であったがゆえに天井高さという基準には適合していたわけで,適合しているものを店舗の居室にすることで適合しなくなる行為はできないのです。

法第28条の2の24時間換気についても適用されます。

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このページの公開年月日:2016年7月3日