床下ピットとその防水

<床下ピットとその防水>

床下にピットを設置する場合があります。どのような場合に,ピットを設置するのか,ピットの設計でどのようなことを考えなければいけないのかを,私の経験範囲で解説します。

<ピットは何のために設けるのか>

2階に水道の蛇口を設ける場合は,1階の天井裏に給水管を通して2階のスラブを抜いて給水管を立ち上げて蛇口をつけます。洗面台などで受けて,排水は2階のスラブを抜いて真下に下ろして,1階の天井裏に勾配を取って配管して排水します。

同じことを最下階の1階でしようとすると,1階の下にはその下の階の天井がありませんから,空間がありません。そこで,配管のための空間を1階の下につけるのがピットです。ピットは,最下階の床下に配管のために設けるものです。

<最下階の床下には必ずピットを設けるのか>

最下階に水道がある場合にその下に必ずピットを設けるのかといえば,そんなことはありません。例えば,小学校の校長室を想定して,校長室には洗面ぐらいは必要ですからそのために給水と排水をつながねばなりませんが,一般的には,その程度の配管であれば,1階の土間コンの下の土の部分に配管して,埋め戻しますからピットは設けません。

ピットを必要とするのは,給水,排水,ガス配管などが複雑に存在している場合です。小学校の校舎を例にすれば,1階のトイレの下にはピットを設けるのが一般的です。複数の便器からの排水を適正な勾配を取りながらつないで建物の外に配管しなければいけませんから,ピットがあった方が,その後のメンテナンスで有利です。

ピットを設置するかしないかは,ピットを設置する費用と,その後のメンテナンスの優位・不利を天秤にかけることになります。

<ピットの作り方>

ピットは,基礎梁で囲まれた空間を利用して作ります。このため,建物を支える基礎板によってピットの作り方も若干変わってきます。

建物全体に基礎板を配置するべた基礎では,基礎板を底にして,周囲の基礎梁を壁のようにみたてて床下に空間を作ります。

べた基礎以外の場合,基礎梁で囲まれることは同じですが,基礎板は建物の一部にしかありませんから,基礎梁の下端の高さに土間コンを打設することになります。

<ピットで気を付けること>

ピットは地中に設けますから,周囲からの地下水の進入には注意しなければいけません。

ピットの周囲に地下水がある場合,外周の地中梁で水の進入を防いでほしいところですが,コンクリートの梁には,水が滲みだすことを止める能力はありません。ボーリングデータで,周囲の地中水位がピット底よりも低いことが理想です。

<地中水位がピット底より高いときはどうするのか>

海岸近くの建物で,地中水位が高いときでもピットを設置しなければならないときはあるでしょう。この場合はどうするのでしょうか。

海岸近くといっても,GLは海面よりは高いのですから,多くの場合は,地中水位よりも上にピットの底を設けることは可能だと思います。とはいえ,地中水位がGL-1mでピット底をGL-2mにしなければならない場合もあるでしょう。

こうした場合にどうするのかは,私は経験がありませんからわかりません。

地下階を設ける場合は,地下水の進入は前提として設計しますから,ピット底よりも水位が高い場合は地下階を設けるのと同じ考え方で設計するのだと思います。地下階では壁から染み出る水を集めて溜めてポンプで排水するということをします。ピットの場合も同じでしょう。

<ピットへの水の進入を防ぐ方法>

ピットへ水が進入することを防ぐ方法として,基礎梁の打ち継ぎ部に樹脂製の止水版をする,ピットの内面に防水モルタルを塗る,といった工法がとられてきました。また,最近では基礎梁の外周部に塗膜防水を塗る工法も採用されているようです。

外周部に塗る塗膜防水は,ケイ酸質系塗膜防水です。鉄筋コンクリート造の屋上スラブに塗る塗膜防水はウレタンゴム系かゴムアスファルト系が使われますが,それとは違う材料です。国の建築工事標準仕様書でそのように規定されています。

ただ,水を完全に止めることはできないものと理解しています。

<ピットに水が進入してはいけないのか>

私の経験で,ピットに数センチ水が溜まっていたことはあります。地中水位が想定よりも浅かったのだと思います。ピットが濡れていることは,いいことではありませんが,ピット内に少量の水が入ること自体は許容範囲なのだと思っています。理由は,ピットに釜場を設けることは普通に行われるからです。水が滲みだすことを前提としてその水を釜場で受けて取り出すのです。

どの程度の水の進入が許容されるのか,私にはわかりません。外周の基礎梁から水が滲みだすことは起こりうることです。基礎梁を水が通るときに量によっては躯体を劣化させますので,躯体に悪影響があります。許容されるかされないかは,基礎梁から水が滲みだすことを想定して設計したかどうかによります。周囲の水が塩分を含んでいるかどうか,鉄筋に防錆措置をしたかどうか,滲みだした水を集めて排水できるようにしているかどうか,などです。

周囲の地中水位がピット底よりも高い場合は,防水対策しても水の進入を止めることはできないものと理解しています。できるだけ,地中水位よりも高い位置にピットを作るというのが基本だとは思います。

話題の巨大ピットについて

まだ,全容が見えていませんから,いい,悪いのコメントは避けて,わかっていることだけで感想を入れます。

4mの地下空間はピットと呼ぶにはあまりにも大きいです。

ピットは基礎梁に囲まれた余剰空間を使って配管スペースにするものと認識しています。この建物が梁丈4mの地中梁を必要とした建物とはとても思えませんで,配管スペースとして4mもの空間を必要としたのならば,それはピットではなく地下階なのではないでしょうか。そして,配管スペースとして高さ4mの空間を必要としたというのも不思議なことです。手に届く範囲で配管するものですが,4mだと,ピット内に足場が必要になります。

地下水の進入は前提として設計されたはず

海岸近くの工事で,この深さのピットを作るのですから,地下水の進入は避けられないことを前提にして設計しているはずです。外周部に防水材は施工しているとは思いますが完全に止めることはできませんし,壁で止めても底からの進入もあります。入った水をポンプで排水するということは想定していたものと思います。

そのすぐ下の土が汚染されていたことに伴うコメントは控えます。

このページの公開年月日:2016年9月19日