鉄骨溶接部の断面検証

<鉄骨溶接部の断面検証>

鉄骨の溶接部の断面検証を説明します。

隅肉溶接継目の耐力は,「鋼構造接合部設計指針」(日本建築学会)で次のように定められています。

=(1+0.4cosθ)aF/√3

=(1+0.4cosθ)aF/√3

:隅肉溶接継目の単位長さ当たりの降伏耐力

:隅肉溶接継目の単位長さ当たりの最大耐力

a:溶接継目の有効のど厚(a=S・cos(φ/2)),φ:母材間の角度

S:隅肉のサイズ

θ:作用応力方向に対する隅肉溶接継目の角度

:接合される母材の降伏強さ

:接合される母材の引張強さ

です。この式は長さ当たりです。

この式を利用するにあたって必要な,隅肉溶接のサイズ:Sと有効のど厚:aの意味は次の通りです。また,作用方向を示すθも次の通りです。

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隅肉溶接は,通常,母材間の角度φは90度です。ですから,a=S/√2となります。近似的にa=0.7Sとしてもいいことが「鋼構造接合部設計指針」に書いてあります。

作用方向θの意味が上の右図でわかるでしょうか。隅肉溶接の長さ方向が引張り力からみて直角であればθ=0です。上の右図のように斜めになっていれば直角からの角度がθです。θ=90度なら,隅肉溶接の長さ方向についてせん断力のみを受けます。上の左図で鋼板①を図の面内上方向に引張力を作用させると,それはθ=0であり,鋼板①を紙面の垂直方向に作用させる(鋼板①にとってせん断力)と,それはθ=90度です。

上記の学会式は,任意のθについて適用できるようになっていますから汎用性が高いとは言うものの,実務上では,θ=0の時,θ=90度の時を作っておいたほうが便利です。

θ=0の時

=(1+0.4)aF/√3=1.4aF/√3≒SF/√3

θ=90度の時

=(1+0)aF/√3=aF/√3

上記を見ると,何のことはない,θ=0の時は隅肉溶接の純せん断を受ける部分がSであり,その面積にせん断許容応力度を乗じたものであり,θ=90度の時は隅肉溶接の長さ方向に純せん断を受けるから,最も断面積の小さいaの面積にせん断許容応力度を乗じたものです。上記の学会式を覚えておくことは難しけれども,θ=0,θ=90に特化した上の式は覚えておくというよりも理論通りですから覚える必要もありませんね。

,Fは,SS400であれば,F=235N/mm,F=400N/mmです

最後に,隅肉溶接の計算例はこちら〈隅肉溶接接合部の計算例〉です。

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このページの公開年月日:2016年9月9日