<鉄骨構造の靭性確保>
鉄骨部材は靭性に富む材料ですからその長所を生かした設計であることが求められます。
例えば,鉄骨の筋かいが地震力で軸力を受けたときに,端部の接合部が早期に降伏して破断にまで至ると,塑性変形が端部のみに集中してしまい,筋かい全体としてのエネルギー吸収ができなくなります。逆に,軸部が降伏して十分に変形するまで端部が破断しないように設計すると,筋かい全体でエネルギーを吸収するので,十分な靭性が得られます。靭性の高い建物の方が安全と評価されます。
鉄骨構造の靭性確保は,建築基準法で規定されています。とはいえ,法文上で「靭性確保」という用語はありませんから,このページで「筋かい材の靭性確保」と「柱・はり材の靭性確保」という2つの用語にわけて説明します。
○ 筋かい材の靭性確保とは
「筋かいの軸部が降伏する場合において,当該筋かいの端部および接合部が破断しないことが確かめられたもの」
(H19告示第593号第1号イ(4))
○ 柱・梁材の靭性確保とは
「柱若しくは梁またはこれらの接合部が局部座屈,破断等によって,または,構造耐力上主要な部分である柱の脚部と基礎との接合部がアンカーボルトの破断,基礎の破壊等によって,それぞれ構造耐力上支障のある急激な耐力の低下を生じる恐れのないことが確かめられたもの」
(同告示第1号ロ(6))
です。これらは,ルート2以上の構造計算を必要とすることを規定するH19告示第593号で使われている文面です。
靭性確保の法令上の規定はそこまででして,その制限を満足させるための具体の条件は,「2015年版建築物の構造関係技術基準解説書」の中で解説として示されています。
〈柱はりの靭性確保〉
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Ⅰ 構造力学
〈構造力学(法則・基本的な考え方)〉
〈構造力学(解法1)〉
〈構造力学(解法2)〉
〈トラス構造解法の補足〉
〈CM0Q算出の仕組み〉
〈梁理論の補足〉
Ⅱ 構造躯体として使われる材料の特性
〈材料力学〉 〈種々の構造材料の品質等〉
〈構造材料の許容応力度等〉
〈コンクリートの許容応力度等〉
〈鉄筋の許容応力度等〉
〈鋼材(炭素鋼)の許容応力度等〉
〈高力ボルトの許容応力度等〉
〈あと施工アンカー1本あたりの許容耐力など(H13告示第1024号による)〉
〈形によって決まる許容応力度〉
〈構造の仕様書的規定〉
Ⅳ 建築構造安全性判定手法
〈建築構造安全性判定手法〉
〈構造体をモデル化する手法〉
〈構造解析で算出された存在応力を割り増しするルール〉
〈既存建物の耐震診断と耐震改修〉
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このページの公開年月日:2016年8月25日