柱はりの靭性確保

<柱はりの靭性確保>

柱はりの靭性確保の条件は,

柱若しくは梁またはこれらの接合部が局部座屈,破断等によって,または,構造耐力上主要な部分である柱の脚部と基礎との接合部がアンカーボルトの破断,基礎の破壊等によって,それぞれ構造耐力上支障のある急激な耐力の低下を生じる恐れのないこと

と,H19告示第593号第1号ロ(6)で規定されています(靭性確保という用語は法令上にはありません)。法令上で定められていることは,ここまでで,具体の条件は定められていません。

柱はりの靭性確保の具体の条件は,「2015年版建築物の構造関係規定技術基準解説書」で解説として示されています。条件は,次の5つです。

・柱及びはり材が局部座屈によって急激な耐力低下をもたらさないこkと

・柱及びはりの仕口部は,保有耐力接合とすること

・柱接手部及びはり継手部は,保有耐力接合とすること

・はりは保有耐力横補剛を行うこと

柱脚部と基礎との接合部は作用する力に対して破壊しないよう十分な強度とするか,あるいは十分な靭性を確保するものとすること

筋かい材の靭性確保〉との違いは,破断だけではなく局部座屈も考慮しなければならないことです。

<局部座屈の抑制>

局部座屈の抑制は「実質的にはルート2の幅厚比の規定を満足すればよい」と解説されていて,ルート2の幅厚比制限は,S55告示第1791号第2第4号と第5号で規定されています。柱とはり,フランジとウェブとで制限値が違いますし,基準強度Fによっても変わるものです。

例えば,H形鋼の柱のフランジは,9.5√(235×F)です。SS400では,F=235ですから制限値は9.5であり,これ以下のH形鋼であることが求められます。これはルート3の保有水平耐力を検討する時のFAランクのことです。例えば,H-300×150×6.5×9は,はりならFA柱ならFB,H-300×300×10×15ははりも柱もFBです。角形鋼管は制限値は33で,STKR400の柱で□ー300×300×12ならFAで,300×300×9ならFBです。

局部座屈の抑制は,端部に限ったことではなく,柱はりの長さ方向にすべての部分に適用されます。

<仕口部・継手部の保有耐力接合>

保有耐力接合については,「主として曲げ及びせん断を受ける柱及びはり材において,材の両端が塑性状態(全塑性曲げモーメント)に至るまで仕口部及び継手部が破断しない接合方法」と解説されています。

そして,柱はり接合部のはり端部の保有耐力接合においては,柱の全塑性モーメントによって生じるモーメントの方が小さいのであれば,それを用いていいことも解説されています。

柱はりの保有耐力接合の破断防止に関する具体の条件は,同解説書の付録1-2.4具体的計算方法(3)に示されています。

仕口部,接手部ともに,母材の全塑性モーメントの1.3倍(SN490ならば1.2倍)以上の破断耐力を接合部に求めています。

計算例も同解説書にあります。

<保有耐力横補剛>

「保有耐力横補剛は,はり材の両端が全塑性状態に至った後十分な回転能力を発揮するまで材の両端部はもちろん,それ以外の弾塑性領域の部分においても横座屈を生じさせないような横補剛方法である」と解説されています。

具体の補剛間隔の算出方法は2種類示されていて,

・はり全長にわたって均等間隔で横補剛を設ける場合

・主としてはり端部に近い部分に横補剛を設ける場合

です。具体の計算式は,

均等間隔の方法では,弱軸まわりの細長比λがλ≦170+20nを満たすようなn箇所の補剛を設けることです(SN490ならば,170を130に)。

近い部分に設ける方法はちょっと複雑なので入り口だけの説明ですけど,崩壊メカニズム時に作用するはり両端のモーメントを安全率1.2倍してその応力分布で降伏時曲げモーメントを超えるはりの範囲を出す。そして,l・h/A≦250かつl/i≦65で算出されるlの位置に補剛を設ける。設けた位置が降伏時曲げモーメントを超えない範囲であれば終わり。超える範囲であればもう一つ補剛を設ける。補剛が終わると弾性範囲となっている補剛の内側で短期の許容応力度設計をして適合していることを確認する。となりますが,正確には,技術基準解説書の計算例を見てください。

<柱脚部の強度・靭性確保>

柱脚部の強度・靭性確保については,法文上は「構造耐力上主要な部分である柱の脚部と基礎との接合部がアンカーボルトの破断,基礎の破壊等によって,それぞれ構造耐力上支障のある急激な耐力の低下を生じる恐れのないこと」です。法文上の規定はこれだけで,具体の条件が定められていません。解説は技術基準解説書に

「柱脚部と基礎との接合部は作用する力に対して破断しないよう十分な強度とするか,十分な靭性を確保すること」

と記されており,さらに,付録1-2.6に柱脚の考え方が示されています。「露出型柱脚」「根巻型柱脚」「埋込型柱脚」によって違います。

<露出柱脚>

付録1-2.6の中の付図1.2-25の設計フローが強度・靭性確保の条件とされていますが,この中の,

②アンカーボルトの伸び能力の有無

③柱脚の保有耐力接合の判定

④地震力による応力をγ倍にして柱脚の終局耐力を確認

⑤地震による応力をγ倍してコンクリート及びアンカーボルトの応力がF値以下であることを確認

⑥基礎コンクリートの破壊防止等

が,それにあたります。

①の「露出柱脚の固定度を適切に評価して構造計算を行い,建築物及び柱脚の許容応力度の検討を行う」は,適切なモデル化に基づいて許容応力度設計を行うことを規定した条件であって,靭性確保の条件ではありません。

②の「アンカーボルトの伸び能力の有無」は,「軸部の全断面が十分塑性変形するまでなじ部が破断しないもの」であり,JISB1220構造用転造両ねじアンカーボルトセットとJISB1221構造用切削両ねじアンカーボルトセットが満たしていると解説されています。

③の「柱脚の保有耐力接合」は,柱の全塑性曲げモーメントの1.3倍についてアンカーボルトの破断で耐えうるものです。個人意見ですが,アンカーボルトでそれほどの大きなモーメントに耐えることは無駄な設計だと思います。

④の「地震力による応力をγ倍して柱脚の終局耐力を確認」は,1次設計のモーメントの2倍のモーメントの破断耐力を持つことです。個人意見ですが,2倍は大きすぎると思います。

⑤はアンカーボルトが伸び能力のない場合の措置ですから,レアケースと思います。

⑥の「基礎コンクリートの破壊防止」は,コンクリート部のコーン破壊などの検討です。





靭性確保の定義は2か所にある

柱はりの靭性確保は,H19告示第593号第1号ロ(6)で規定されているのですが,実は,ルート2の条件を規定するS55告示第1791号第2第7号でも同じことが記述されています。

保有耐力接合の定義の不思議

柱はりの定義は,「接合部が局部座屈か破断により,構造耐力上支障のある急激な耐力の低下を生じる恐れのないこと」ですから,急激な耐力低下がないことを条件としているだけで,母材が十分に塑性変形することを条件とはしていません。母材の十分な塑性変形の前に破断すれば急激な耐力低下を生じるのですから同じことを言っているようにも見えますが,架構形式として破断などに至るほどの応力を受けないことの証明でも足ります。

保有耐力横補剛ははりのみ

柱にH形鋼を使うことがあって,曲げモーメントを受けても柱には保有耐力横補剛が要求されません。均等間隔で設置する場合,細長比が170以下であれば0か所ですから,柱の場合,保有耐力横補剛を必要とするほど細長いものはないということでしょう。

構造設計の関連情報
Ⅰ 構造力学
構造力学(法則・基本的な考え方)
構造力学(解法1)
構造力学(解法2)

トラス構造解法の補足
CMQ算出の仕組み
梁理論の補足

構造力学(力学的な感覚)
Ⅱ 構造躯体として使われる材料の特性
材料力学

モールの応力円とミーゼスの降伏条件

種々の構造材料の品質等
構造材料の許容応力度等

コンクリートの許容応力度等
鉄筋の許容応力度等
鋼材(炭素鋼)の許容応力度等
高力ボルトの許容応力度等
あと施工アンカー1本あたりの許容耐力など(H13告示第1024号による)
形によって決まる許容応力度

Ⅲ 構造の仕様書的規定
構造の仕様書的規定
Ⅳ 建築構造安全性判定手法
建築構造安全性判定手法

構造体をモデル化する手法
構造解析で算出された存在応力を割り増しするルール
既存建物の耐震診断と耐震改修



このページの公開年月日:2016年8月25日