<アンカーボルト>
鉄骨構造のアンカーボルトの品質について解説します。
国の標準仕様書では,第7章鉄骨工事で「構造用アンカーボルト」と「建方用アンカーボルト」に分けて品質を定義しています。構造計算の時にアンカーボルトに引き抜きやせん断力が作用するものとして設計したアンカーボルトを「構造用アンカーボルト」と呼びます。それぞれの鋼材の品質として,次のように規定しています。
構造用アンカーボルト:JISG3138「建築構造用圧延棒鋼」
建方用アンカーボルト:JISG3101「一般構造用圧延鋼材」
ただ,標準仕様書で規定しているのはほとんどこれだけです。
それ以外に規定しているものは,アンカーボルトのねじ山の部分の規格をJISB0205によることと,ねじ山部分に見合うナットと座金を規定している程度です。
<構造用アンカーボルト>
構造用アンカーボルトに用いることを想定した規格としては,社団法人日本鋼構造協会(JSSC)が定めた次の2つの規格があります。
- JSSⅡ13-2004「建築構造用転造ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」
- JSSⅡ14-2004「建築構造用切削ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」
この規格は,同協会のHPで紹介されていて概要だけは見ることができますが,販売されていて,その中身をWEB上で見ることはできません。
しかし,建築用アンカーボルトメーカー協議会のHPでは,規格で定められている事項とそれをわかりやすく解説していますから,このHPに行けば,内容がわかります。
このHPにとても詳しく解説されていますから,そこを見てもらうことにしますけど,ここでは,触りだけ解説します。アンカーボルトの強度などを示す種類の記号は次の4つです。
種類の記号 | |
JSSⅡ13-2004「建築構造用転造ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」 | ABR400,ABR490 |
JSSⅡ14-2004「建築構造用切削ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」 | ABM400,ABM490 |
「転造ねじ」とは,ねじ部のねじ山を熱間加工で盛り上げて作るもので,ねじ部の有効断面積を軸部の断面積に近くしたものです。この結果,アンカーボルトの軸部が十分な塑性変形をします。
「切削ねじ」とは,ねじ部の加工を削り出してねじ山を作る(正確に言えば,ねじの谷を彫る)ので,軸部の断面積よりもねじ部の有効断面積が小さくなるのではあるが,細目ねじを採用することで,85%程度の有効断面積を確保したものです。
「転造ねじ」の方が,変形能力に優れます。
〈ボルトの呼び径と有効断面積〉
この規格のアンカーボルトの素材として使われるのが,建築構造用圧延棒鋼のSNR400BとSNR490Bです。
アンカーボルトのねじ部有効断面積や耐力も「同協会のHP」で示されています。
「転造ねじアンカーボルト」
※ 上記HPに記載の表で,「降伏耐力」とあるのは短期許容応力度にあたるもので,軸部断面積に短期許容応力度を乗じたものです。
「切削ねじアンカーボルト」
※ 上記HPに記載の表で,切削ねじでは,「降伏耐力」がねじ部と軸部の2種類が示されています。
実は,2010年に上記の日本鋼構造協会の規格がそのままJISで規定されました。それが,次の2つです。
- JISB1220「構造用転造両ねじアンカーボルトセット」
- JISB1221「構造用切削両ねじアンカーボルトセット」
これらが規定する「ねじの呼び」の範囲は次の通りです。
セットの種類の記号 | 適用のあるねじの呼び | |
JISB1220 「転造両ねじ」 |
ABR400,ABR490 | M16,M20,M22,M24,M27,M30,M33,M36,M39,M42,M45,M48 |
JISB1221 「切削両ねじ」 |
ABM400 | M24,M27,M30,M33,M36,M39,M42,M45,M48 |
ABM490 | 上記に加えて,M52,M56,M60,M64,M68,M72,M76,M80,M85,M90,M95,M100 |
鋼材としては,建築構造用圧延棒鋼のSNR400BとSNR490Bが使われています。そして,ステンレス鋼SUS304Aも適用範囲に加わっています。
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このページの公開年月日:2013年4月20日