高力ボルト

<高力ボルト>

高力ボルトの品質について解説します。

高力ボルトは,JISGB1186で規定されています。一般的な名称であり,建築基準法でも使われている「高力ボルト」のJIS上での正式名称は,「摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット」です。セットの種類及び構成部品の機械的性質による等級の組み合わせは次の通りです。

セットの種類 適用する構成部品の機械的性質による等級
ボルト ナット 座金
1種 F8T F10(F8) F35
2種 F10T F10 F35

※  高力ボルトと言えば「F10T」ですが,「F10T」のJIS上の正式な呼び方は「2種」です。
※  F8Tの高力ボルトは製造されていないと思います。〈溶融亜鉛めっき高力ボルト〉でF8TがありますがJISB1186の規格からは外れるものです。

ここからは,F10Tについて解説します。高力ボルトF10Tの素材としての機械的性質は,次のとおりです。
耐力:900N/mm2以上
引張強さ:1000N/mm2以上
伸び:14%以上
絞り:40%以上
F10Tの「10」は,引張強さの1000から来ています。一般構造用鋼材SS400の引張強さが400ですから,高力ボルトは相当強靭な鋼材です。

軸部の径の太さのことをJIS上では「ねじの呼び名」である「M○○」で表現します。M12からM30まで7種類あります。また,軸部の長さの種類が限定されています。「ねじの呼び名」と軸部の長さの関係は,こちらです。→〈ねじの呼び名と軸部の長さの関係

軸部の長さには,ねじ山が切られたところと,ねじを切っていない部分とがあります。高力ボルトの場合,軸部の全体にねじ山が切られているわけではありません。ねじ山を切る部分の長さは次のように規定されています。
M12:25mm
M16:30mm
M20:35mm
M22:40mm
M24:45mm
M27:50mm
M30:55mm

※  「M16」の「16」はどこの寸法でしょうか? 「M16」は「メートルネジの16㎜」という意味ですから,ネジの山から山までの寸法です。高力ボルトの場合,ねじを切っていない軸部も残されていますから,ねじ山の部分でも軸部でもノギスを当てて16㎜であることを確かめることができます。

※  M12の高力ボルトは製造していないメーカーもあります。製造しているのは「日本ファスナ-工業(株)」「日亜鋼業(株)」「ユニタイト(株)」です。

高力ボルトの断面積はいくらでしょうか。JISB1186には有効断面積は示されていません。高力ボルトの場合,強度の確認をするにあたってボルトの外周を削り取って円柱状にしたものを使いますからJIS上で有効断面積を規定する必要がないのです。

例えばM16の場合,ねじの切っていない軸部の直径が16φでその断面積は,πr2で201mm2で,ねじを切っている部分の有効断面積は,157mm2です。1本の高力ボルトの許容応力は基準張力から算出するようになっていて(令第92条の2),これは1mm2あたりを基準にするようになっていますから,この基準張力を軸部の断面積に対して適用するのか,ねじ部の有効断面積に対して適用するのかによって,許容応力が変わってきます。

答えは,
軸部の断面積に対して基準張力を作用させる。  です。
令第92条の2に「高力ボルトの軸断面に対する」と書いてあります。

高力ボルトの断面積は,次のとおりです。
M12:113mm2,M16:201mm2,M20:314mm2,M22:380mm2,M24:452mm2

<高力ボルトの施工監理>

高力ボルトは適正に施工されてはじめて目的の品質(性能)を発揮することができます。現場での施工監理はこちら。

高力ボルトの施工監理

<JIS以外の高力ボルト>

トルシア型の高力ボルトはJIS規格からは外れるものです。〈トルシア型高力ボルト
溶融亜鉛めっき高力ボルトもJIS規格からは外れるものです。〈溶融亜鉛めっき高力ボルト

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こぼれ話

高力ボルトのことなら「高力ボルト協会」のQ&Aがわかりやすいです。

こぼれ話

高力ボルトに引張力を作用させる場合の基準張力や,その結果生じる許容せん断力は,ネジ部の有効断面積,軸部の断面積のどちらで適用するのか。
基準張力,許容せん断力,引張許容応力については軸部断面積(根拠:令第92条の2)です。

参考までに,高力ボルト1本の引張荷重(その荷重を作用させても破断はしない)は,M16:157kN,M20:245kNであり,ネジ部の有効断面積×1000Nとなっています。

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このページの公開年月日:2012年6月