トルシア型高力ボルト

<トルシア型高力ボルト>

高力ボルトは,ナットを締める力でボルト軸部にあらかじめ張力を生じさせて,接合させる複数の鋼板を密着させる力をかけています。そして,この力で生じる摩擦力で接合を保つものです。このため,ナットの締め具合で必要な張力を生じさせなければいけません。これを現場において適切に監理しなければならないのですが,適正に締めたことをわかりやすくしたのが,このトルシア型高力ボルトです。トルシア型高力ボルトでは,ボルト軸部の先端にピンティルがついていて,このピンティルで軸部を固定してナットを締めます。そしてピンティルが締める時の回転力でねじ切れるまでナットを締めます。ねじ切れる回転力はほぼ一定していますから,ナットを必要な力で締めたことがわかるのです。

このトルシア型高力ボルトは,JIS○○○で規定されています。と,書くところですが,実は,トルシア型高力ボルトはJIS規格上では規定されていません。JIS規格上で規定されていないとなると困ることがあります。それは,建築基準法第37条により,指定建築材料はその指定建築材料ごとに大臣が指定する日本工業規格に適合するものでなければならないことになっていて,高力ボルトは指定建築材料であり,その適合すべき日本工業規格は,JISGB1186と定められているのです。トルシア型高力ボルトはJISB1186に適合しませんから,建築基準法第37条により使用できません,となるのですが,使用を可能にしている根拠は,同条第2号の大臣認定です。各社が製造するトルシア型高力ボルトは,それぞれに大臣認定されています。認定の内容は各社全く同じ(多分そうです)です。㈱NSボルテンが製造するトルシア型高力ボルトの認定書を紹介します。

㈱NSボルテンの認定書

<トルシア型高力ボルトとJIS高力ボルト>

トルシア型高力ボルトの「機械的性質による等級」は「S10T」のみです。JISB1186の高力ボルトのF10Tとの関係は,まったく同じです。構造計算上の性質として何ら変わりがないという意味です。

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このページの公開年月日:2012年6月