<型枠>
型枠は,構造材料であるコンクリートを固める時に使う仮設材で,できあがったら外してしまうものです。したがって,型枠材料の選定にあたって,構造計算で設定した許容応力度などの数値に影響されません。
しかも,型枠は,コンクリートの仕上がりの精度や表面の美しさに影響しますから,それを確保する観点で適切なものを選ばなければいけません。そういう意味で型枠は,「仕上げ材」だという言い方もできます。
したがって,ここでは,「仕上げ材」としての性能も含めて解説します。まず,「型枠とは何?」
「型枠」=「せき板」+「支保工」 です。(国の標準仕様書6章6.9.2より)
「せき板」が生コンを受けて形を作る容器の部分で,「支保工」は「せき板」が動かないように支えているものです。一般的な言い方では,「型枠と支保工」と言うことがあって,それは「型枠」は板の部分を指して「支保工」とは別のものとの考え方ですが,正式な用語の定義上では,「型枠」は「支保工」を含んでいます。「せき板」に何を選ぶかは,性能さえ満足されれば特に制限はありません。ただ,現状では「せき板」には合板を使うのが一般的でして,合板を使う場合はどうするという条件が国の標準仕様書に規定されています。
① 合板の厚さは12㎜(特記があれば,それに従う)
② 「合板の日本農林規格」の次に適合する合板を使用すること
・「コンクリート型枠用合板の規格」による表面加工品
・「コンクリート型枠用合板の規格」によるB-C
(国の標準仕様書6章6.9.3(b)より)
せき板に使う合板は「合板の日本農林規格」に適合するものでなければいけないことが規定されています。そして,「合板」には「普通合板」などを含みますが,「コンクリート型枠用合板」に限られます。②の「表面加工品」とは,「表面に塗装またはオーバーレイを施したもの」で通常「塗装合板」と呼ばれるものです。同じく②の「B-C」とは,板面の品質を規定したもので,表(オモテ)面が「B」で裏面が「C」ということです。板面の品質には「A」から「D」まであって,「A」の方が品質の高いものです。
「打放し仕上げの種別」と「せき板」の関係を解説します。
「打放し仕上げの種別」は,国の標準仕様書では,6章6.2.5(b)(1)(i)で規定されているもので,「A種」「B種」「C種」の3種類があります。この種別とせき板の品質の関係は,6章6.2.5(b)(1)(i)の表6.2.3で次のように規定されています。
打放し仕上げの種別 | せき板の程度 |
A種 | 「コンクリート型枠用合板の規格」による表面加工品(いわゆる「塗装合板」)で,ほとんど損傷のないもの |
B種 | 「コンクリート型枠用合板の規格」によるB-Cで,ほとんど損傷のないもの |
C種 | 「コンクリート型枠用合板の規格」によるB-Cで,使用上差し支えのない程度のもの |
打放し仕上げではなく,モルタル仕上げがあるところの型枠を「積算上の用語」では,「普通合板型枠」と言います。この「普通合板型枠」とは,「打放し仕上げではないところの型枠」という意味であって,「普通合板を使った型枠」ではありません。「普通合板型枠」も国の標準仕様書6章6.9.3(b)の条件が適用されますから,コンクリート型枠用合板のB-Cが適用されます。したがって,「普通合板型枠」も「打放し合板型枠」も合板の部分は同じです。違うのは型枠を内側から支える「セパレータ」でして,打放し合板型枠の場合は,型枠を取り外したときに金属の部分が表面に出ないようにしてあります。セパレータは型枠(せき板)と型枠(せき板)の間にあって2枚の型枠(せき板)の距離を確実にするためのものですから,打設されるコンクリートの中に埋め込まれます。コンクリートが固まってから型枠(せき板)を外せば,セパレータの端部がコンクリート表面に見えるのですが,打放し合板型枠のセパレータは端部が円錐状のプラスチックになっていてせき板とそのプラスチックを外すとセパレータの金属が表面に出ないようになっています。
打放し合板型枠のセパレータを「丸セパB型」,普通合板型枠のセパレータを「丸セパC型」と言います。
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<日本農林規格リンク>
日本農林規格(JAS)は,農林水産省が出す告示ですので,農林水産省のHPで無料で閲覧できます。
「合板の日本農林規格」
<「普通型枠」か「普通合板型枠」か>
「公共建築数量積算基準」(国土交通省)だけが,「普通型枠」としています。「公共建築工事標準単価積算基準」でも「公共建築工事内訳書標準書式」でも「普通合板型枠」としていますから,「公共建築数量積算基準」が間違えたのだと思います。
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このページの公開年月日:2013年2月