<打設されたコンクリートの強度の監理方法>
生コンの打設28日後の強度は生コン工場によって保証されており,必要とする設計基準強度に構造体強度補正値を加えて呼び強度を決定して,その生コンを打設したのだから,何もしなくても現場のコンクリートの強度は保証されている,と思ったらそれは間違いです。
生コン工場が保証する供試体と現場に打設されたコンクリートとは厳密には異なると考えますので,打設されたコンクリートの強度保証は生コン工場では行っていないことになります。
で,打設されたコンクリートの強度保証をするのが,工事監理者である建築士の役割です。
工事監理者である建築士が,どうやってコンクリートの強度保証をするのかのルールが標準仕様書に規定されています。
強度が確保できたと判断できる判断基準は6章で次のように規定されています。
そして,そうであると判断する具体的手順を規定しています。それは,6章6.10.4から6.10.6にある「調合管理強度の管理試験」と「構造体コンクリート強度の推定試験」のうちの後者です。そして,「構造体コンクリート強度の推定試験」は,さらに3つに分かれていて,3つとは,「構造体コンクリートの材齢28日圧縮強度の推定」「型枠取り外し時期の決定」「構造体コンクリートの材齢28日を超え91日以内の圧縮強度の推定」ですが,強度推定は「型枠時期」を除く2つです。これら2つの試験の養生方法や合否判定基準は次の通りです。
養生の方法 | 材齢 | 試験回数 | 判定基準 | |
構造体コンクリートの材齢28日圧縮強度の推定 | 工事現場における水中養生 | 28日 | 1日,150m3ごとに1回 | 1回の試験結果が, ①材齢28日までの現地の平均気温が20℃以上の場合:調合管理強度以上 ②20℃未満の場合:設計基準強度に3N/mm2を加えた値以上 |
構造体コンクリートの材齢28日を超え91日以内の圧縮強度の推定 | 工事現場における封かん養生 | 28日を超え91日以内 | 同上 | 1回の試験結果が, 設計基準強度に3N/mm2を加えた値以上 |
※上記の「1回の試験結果」とは,3個の供試体の圧縮強度の平均である。
上記の2つの試験の関係は,「材齢28日圧縮強度試験」が合格しなかった時に「28日を超え91日以内の圧縮強度試験」をする,というものです。
上の表でわかるように,国土交通省の標準仕様書では,
「現場のコンクリートが設計基準強度以上の強度になっていることの判断基準」
として,
↓↓↓↓
「供試体の平均強度が設計基準強度+3N/mm2以上になることを判定基準」
としています。
「+3N/mm2した呼び強度のコンクリートを打設したのだから,それを判定基準とすることは当然」ではありますが,気温の低い時に打設した場合は,28日後ではまだ温度補正分の強度が出ていない可能性がありますので,28日の試験は不合格となることを覚悟しなければならない場合も生じるでしょう。28日の試験で不合格になっても,91日になれば温度補正分の強度は十分に出ているはずですから,恐らくは合格すると思います。(合格しなかったらちょっと大変なことになります)
<調合管理強度の管理試験の意味>
上記のように打設されたコンクリートの強度を保証するための試験が「構造体コンクリート強度の推定試験」ですが,国の標準仕様書の6章6.10.4から6.10.6には,「構造体コンクリート強度の推定試験」に並んで「調合管理強度の管理試験」が規定されています。上記ではこの「調合管理強度の管理試験」の説明を省略したので,ここで説明します。
「調合管理強度の管理試験」を行う意義,つまり,この試験の結果が何に使われるのかは,国の標準仕様書の6章6.5.5(b)に次のように規定されています。
上記のように規定されていますから,この試験の目的は,次の調合への措置であって,不合格だから打設したコンクリートがダメなコンクリートだった,というものではありません。あくまでも次の調合への措置でしかありません。
「調合管理強度の管理試験」の実施方法や判定基準は,国の標準仕様書(6.10.4)(6.10.5)に次のように規定されています。
養生の方法 | 材齢 | 試験回数 | 判定基準 | |
調合管理強度の管理試験 | JISA1132による20±2℃の水中養生 | 28日 | 1日,150m3ごとに1回 | ①1回の試験結果が,調合管理強度の85%以上 かつ ②3回の試験結果の平均値が,調合管理強度以上 |
※上記の「1回の試験結果」とは,3個の供試体の圧縮強度の平均である。
調合管理強度の管理試験で間違いやすいのは,1回が3個の平均で3回の平均が必要なのだから1回の打設で9本の供試体が必要なのでは? と考えてしまいがちなことです。上のように表にすればわかりやすいですが,1日1回の打設が150m3以下であれば,その打設で1回(=3本の供試体)を行い,次の打設とその次の打設でも1回ずつ行って3回(=9本の供試体)の平均をとるものです。
もうひとつ。調合管理強度の管理試験は,JISA5308で定めている強度試験と全く同じものです。JIS工場は,JISA5308に適合したレディーミクストコンクリートであることを保証しなければいけませんから,何も言わなくても,JIS工場の責任でこの供試体をとって自社で養生して自社で検査して結果を報告する義務があります。国の標準仕様書で,この管理試験の実施を義務付けているのですが,JIS工場の試験に加えて同じ試験をしろという意味ではないと解釈しています。
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<強度試験のJIS>
圧縮強度試験方法:JISA1108
コア切り取り方法:JISA1107
※上記は基準法告示H56第1102号にある。
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鉄筋コンクリート基礎構造部材の耐震設計指針(案)・同解説
↑2018年の最新版です。
このページの公開年月日:2012年6月