<鋼杭の法適用>
既製杭である鋼杭,主に「鋼管杭」の建築基準法上の適用について説明します。
- 鋼杭は,「主要構造部」(法第2条)ではない。耐火建築物であっても杭に耐火性能を求められたりしない。
- 鋼杭は,「指定建築材料」(法第37条)である。したがって,JIS規格への適合が求められる。使える鋼材のJISは,JISA5525(鋼管くい),JISA5526(H形鋼くい)ですが,鉄骨構造として使えるJISG3101(一般構造用圧延鋼材)なども鋼杭として使えます。
- 鋼杭は,「構造耐力上主要な部分」(政令第1条)に該当する。したがって法第20条を頂点とする構造関係規定の構造耐力上主要な部分への規定が適用される。特に構造計算は構造耐力上主要な部分に対して作用荷重が許容応力度を超えないことのチェックを求めているので,これが杭に適用される。
上記1.については適用がありませんし,適用がないことは条文を読めばわかりますから,説明するまでもないでしょう。
上記2.について説明します。鋼杭のJIS規格にJISA5525(鋼管くい)とJISA5526(H形鋼くい)が含まれていますから,鋼杭はこのふたつのJIS規格に適合していなければいけないように思えますが,JISG3101(一般構造用圧延鋼材)やJISG4321(建築構造用ステンレス鋼材)なども鋼杭として使用できます。
上記3.について,説明します。
鋼杭は構造耐力上主要な部分ですから,仕様書的規定と構造計算が適用されます。仕様書的規定は,政令第38条が適用され同条を根拠とする告示「建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件」(平成12年5月建設省告示第1347号)が適用されます。同告示には,鋼管杭の鉄板の肉厚が6㎜以上であることが規定されています。とはいえ,許容応力度計算をすることで仕様書的規定は適用除外とできますので,事実上仕様書的規定は適用されません。
構造計算については,法第20条第三号建物であれば政令第82条の許容応力度計算が適用されます。この計算で必要になるのが杭の許容応力です。それは,政令第93条を根拠とする告示「地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための地盤調査の方法並びにその結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法等を定める件」(平成13年7月国土交通省告示第1113号)で定められています。
具体には,同告示の第八第八号が「鋼材等」ですからこれが適用され,この条文から施行令第90条の鋼材の許容応力度が適用されます。ただし書きで,肉厚が薄い場合の低減係数が定められていますから注意が必要です。
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<参考>
既製杭の鋼管杭のことなら,「一般社団法人鋼管杭・鋼矢板技術協会」がHPで解説しています。
「日本鋼管圧入協会」も。
<こぼれ話>
鋼杭の場合,地中にあって鉄部が腐食しますから,腐食分を考慮して厚さを減じて設計します。このことが法令上で定められているかと言うとそうではありません。法令上は,低減係数を算出する上で腐食分を控除することの規定はありますが,許容応力度計算で腐食分を控除することまでは規定されていません。
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このページの公開年月日:2015年2月13日