建築構造用圧延鋼材

<建築構造用圧延鋼材>

次は,建築構造用圧延鋼材です。これまで主流だった一般構造用圧延鋼材(SS材)に代わって今後の建築分野における主流になるであろう鋼材です。名前からして建築用に作られたものです。これはJISG3136に規定されています。鋼材の「種類の記号」には,SN400A,SN400B,SN400C,SN490B,SN490Cがあります。

SM材との違いは,
化学成分が若干違うこと。
伸びも若干違うこと。
シャルピー吸収エネルギーは,B材,C材について一律に27以上であること。
など,若干の違いがありますが,大きく違うのは,次の4点です。

  1. 厚さの許容差のマイナス側を厳しくしていること
  2. B材,C材の厚さ12㎜以上のものについて,降伏比80%以下を規定していること
  3. C材については,板厚方向の特性を規定していること
  4. SM材ではSM570のみについて炭素当量と溶接割れ感受性組成を規定しているが,SN材では,B材,C材についてすべて規定していること

「許容差」については,厚さ6mm以上16mm未満は,-0.3mm,16mm以上は-1.5mmというようになっています。「降伏比」とは,引張強さに対する降伏点の比で,それを80%以下にしているというのは,降伏点に上限を設けていることになります。

形状,寸法,質量及びその許容差は,SM材と同じ。つまり,鋼棒とバーインコイルがないだけです。

SN材は,板厚のマイナス側の許容差を少なくしたもので,精度が要求される建築構造物のために作られたものです。末尾のA,B,Cの使い分けは,Aはシャルピー吸収エネルギーの規定がありませんから溶接接合のない部材に,B,Cは溶接接合のあるもので,さらに,Cは板厚方向の性状を安定させたものなのでベースプレートやダイヤフラムなどのように板厚方向に引っ張り応力が作用する部分に使用します。

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降伏比80%以下を規定する意味
例えば,SN400Bの降伏点は,235N/mm2以上と規定されています。235をぎりぎりでクリアーした鋼材と235よりもかなり大きい鋼材とでは,どっちの性能がいいと思われますか。「それは強い方がいいに決まっている」と思われがちですが,単純にそうとは言い切れません。
「強い方がいい」のは,降伏点の高さに応じて引張強さも強い場合のことです。降伏点だけが高くて引張強さが降伏点よりもわずかに強いだけだった場合,降伏点を過ぎたらすぐに引張強さに到達してしまい,十分な塑性変形が得られなくなるという欠点を生じます。これを避けるために,「降伏比を80%以下」つまり,降伏点に上限を設けています。

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このページの公開年月日:2012年6月1日