アルミニウム製建具

<アルミニウム製建具>

アルミニウム製建具の品質について解説します。

一般名称では「アルミサッシ」と言いますが,「サッシ」は窓だけを指しますから,扉も含めて「アルミニウム製建具」と言います。

建具の品質・性能を示す指標として,「耐風圧性」,「気密性」,「水密性」,「遮音性」「断熱性」「面内変形追随製」があります。これらは,ドアセット(扉)については,JISA4702に,サッシについては,JISA4706で規定されています。それぞれの等級は,次のとおりです。

耐風圧:S-1,・・・,S-7

気密性:A-1,・・・,A-4

水密性:W-1,・・・,W-5

遮音性:T-1,・・・,T-4

断熱性:H-1,・・・,H-5

面内変形追随性:D-1,・・・,D-3  ←それぞれ数字が大きい方が性能が高い

最後の「面内変形追随性」は,ドアセット(扉)のみの性能です。

※ 耐風圧などの性能指標はアルミニウム建具のみに適用されるものではありません。

耐風圧などの等級は,それぞれ独立していますから,極端な選び方として,耐風圧:S-1で,気密性:A-4という指定は理論上は可能です。けれども,耐風圧に高い性能を求める場合は,他のものも高い性能を求めるべきです。その推奨すべき組み合わせが,国の標準仕様書(16.2.2)に示されています。

標準仕様書の種別 耐風圧性 気密性 水密性 枠の見込み寸法
A種 S-4 A-3 W-4 70㎜
B種 S-5 A-3 W-4 70㎜
C種 S-6 A-4 W-5 100㎜

アルミニウム建具のみに適用されるものとしては,アルミニウムの表面処理があります。アルミニウムは錆びにくい材料ではありますが,表面処理は重要です。

アルミニウムの表面処理と言えば「アルマイト」ですね。アルミの弁当箱の表面処理がアルマイトです。アルミニウム製建具の表面処理には,アルマイトと塗装を組み合わせたもので「陽極酸化塗膜複合皮膜」という処理が用いられます。

「陽極酸化塗膜複合皮膜」の規格は,JISH8602で規定されています。

このJISでは,皮膜の種類として,「A1」,「A2」,「B」,「C」の4種類を規定しています。A1の方が耐久性が高くて,種類の適用を,

A1:過酷な環境で,かつ,紫外線露光量の多い地域の屋外

A2:過酷な環境の屋外

B:一般的な環境の屋外

C:屋内

と,このJISで規定しています。しかも,同JISで「紫外線露光量の多い地域」とは,「亜熱帯海洋性気候に類する地域」と定義されていますし,「過酷な環境」も,「腐食・劣化の激しい地域で,海浜及び沿岸」と定義されています。

国の標準仕様書で表面処理の規定は,アルミニウム製建具の16.2.4(d)から14.2.2へ飛んで表14.2.1「表面処理の種別」で規定されます。種別として7種が列記してありますが,アルミニウム製建具として製造されているのは,JISH8602だけですから,種別の「B-1(無着色)」「B-2(着色)」がのみが適用されます。「B-1」「B-2」のどちらを選んでもJISH8602の被膜は「B」を選択することが標準とされています(標準仕様書14.2.2)。

「陽極酸化塗膜複合被膜」といえば,塗装が加わるのでブロンズなどの着色ものを想像されると思いますが,この塗装自体はクリアー塗装ですから,塗装で色をつけるわけではありません。表面の着色は塗装の前に別の工程で行います。したがって,ブロンズなどの着色ものは工程が多いですからシルバーよりも金額的に高いです。ですから,図面にサッシ色をシルバーか着色かを書いておかなければいけません。

※  表面処理には,JISH8601による陽極酸化皮膜もありますが,最近ではあまり使われなくなったようです。

<皮膜種類の選び方>

「陽極酸化塗膜複合皮膜」の皮膜の種類は,「A1」,「A2」,「B」,「C」の4種類があります。Cは屋内仕様ですから迷うことはないと思いますが,屋外の場合「A1」「A2」「B」の中から選ぶことになります。何も指定しなければ,国の標準仕様書が適用されて自動的に「B」を選んだことになります。現実として,多くのサッシは「B」で製造されています。A1を適用するのは亜熱帯海洋性気候とされていますから,通常これを選ぶことはないものと考えますが,A2を選ぶかどうかは,設計者の判断になります。A2かBかは費用対効果なのですが,実は,金額は変わりません。

その意味で,A2を選んでおいた方がいいとの考え方もありますが,無駄な仕様アップはモラルとして避けるべきでしょう。

<JISH8602の2010年改正>

JISH8602は,2010年に改正されています。以前は,被覆の性能を皮膜の厚さで規定していましたが,耐食性などの性能を規定する性能規定に変更されました。

国の標準仕様書の平成22年版は,2010年改正に対応していませんから,そのままだと不具合があるような気がしますが,実際には,特段の不具合はありません。

標準仕様書では,アルミサッシの表面処理として,表14.2.1の中の種別として,A-1,A-2,B-1,B-2,C-1,C-2,Dがあってこの中から選ぶようになっていますが,AとCはJISH8601によるもので,現在ではあまり使われなくなっています。Dも同様です。選択できるのは,B-1かB-2のどちらかで,B-1がシルバー,B-2がカラーですから,設計者の判断でどちらかを選べば,JISH8602の種類はBを優先するようになっていますから,一般的な設計としては適正なものを選んだことになります。

考えておかなければいけないのは,建設地が潮風を直接に受けるようなところであれば,JISH8602の種類をA2にした方がいいということです。

<アルミニウム製建具の開口寸法>

アルミニウム製建具の幅と高さの寸法をいう場合に,通常,枠の内法寸法で表現します。そうであることは,JISA4702とJISA4706のそれぞれの付図1に示されています。内法寸法の取り方も図示されています。

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このページの公開年月日:2012年6月