<塗装>
塗装の品質について解説します。
「塗装」を一般名称で言えば「ペンキ」です。ただ,「ペンキ」は鉄部に塗るべっとりしたやつのことを言うのだと思います。室内の壁に使う水性のものもあって,これはペンキとは呼ばないようです。一般名称のことは置いておいて,塗装が複雑なのは,
- 何に塗るのか(鉄に塗るのか,木に塗るのか)
- どんな塗料を塗るのか(塗料の種類)
- どれだけ塗るのか(1㎡あたり何グラムで何回塗るのか)
という区別があって,いろいろな種類・組み合わせがあるからです。
説明しやすくするために,絵具にあたるものを「塗料」,下塗り・上塗りなど塗る量や回数を含めたものを「塗装工法」と呼ぶことにします。「塗料」もたくさんありますし,それを組み合わせた「塗装工法」もたくさんあります。
どんな「塗料」がありどんな「塗装工法」があるのかを知るためには,「[cshiyousholink1]」を見るのがいいです。標準仕様書の第18章が「塗装」でここには,
- 合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)
- クリヤーラッカー塗り(CL)
- アクリル樹脂系非水分散型塗料塗り(NAD)
- 耐候性塗料塗り(DP)
- つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP-G)
- 合成樹脂エマルションペイント塗り(EP)
- 合成樹脂エマルション模様塗料塗り(EP-T)
- ウレタン樹脂ワニス塗り(UC)
- ラッカーエナメル塗り(LE)
- オイルステイン塗り(OS)
- 木材保護塗料塗り(WP)
の,11種の塗料とその塗装工法が示されています。
上記11種の塗料がどんな下地に適用できるのかも「[cshiyousholink1]」に書いてあって,例えば「合成樹脂調合ペイント塗り」であれば,木部,鉄鋼面,亜鉛メッキ鉄鋼面であり,「アクリル樹脂系非水分散型塗料塗り」であれば,室内のコンクリート面,モルタル面などです。塗装を難しくしている要因としてあげた1.2.3.の1.「何に塗るのか」と2.「何に塗るのか」は,同標準仕様書を見ることである程度判断できます。
「何に何を塗るか」が決まったら,次は3.の「どのように塗るのか」です。
例えば,鉄鋼面へ耐候性塗料を塗る時の塗装工法は同標準仕様書の「表18.7.1」にあります。
素地ごしらえ→下塗り1回目→下塗り2回目→下塗り3回目→研磨紙ずり→中塗り→上塗り
となっています。下塗り1回目から上塗りまで計5回塗るのですが,「耐候性塗料」という同じ塗料を5回塗るのではありません。何をどれだけ塗るのかが表に書いてありますから,この表を読むことで塗装工法が理解できます。この表には塗料が対応するJIS規格の番号と平米あたりの塗布量が規定してあります。この表を読む時に気をつけねばならないのは,「素地ごしらえ」が「表18.2.2によるB種」などと書いてあることです。「素地ごしらえ」の表である「表18.2.2」を読まなければわかりませんので,それを読めば「油類除去」と「錆落とし」が必要であることがわかります。
塗装工法の読み方は上記のとおりでして,どの塗装工法も同じようにして読み取ることができます。読めばわかるとは言うものの,ベテランの建築士であっても仕様書をその都度開いて確認しながらやっているというのが実態です。
上記までで,塗る素材と塗装工法がわかりますから,ここまでわかれば塗装のことがわかったような気分になります。でも,塗装の奥の深さはこの次です。例えば鉄鋼面に塗装する場合,「合成樹脂調合ペイント塗り」と「耐候性塗料塗り」があります。前者にはA種とB種があって,後者には仕様書上は書いてありませんが「耐候性塗料のJIS規格」に1級,2級,3級の区別があります。5種類のどれを選ぶかを考えなければいけないのです。
塗料や種別をどのようにして選ぶのか,これこそが建築士としての技量なのだと思います。とはいえ,自分の判断で適切な塗装を選択できる建築士は少ないでしょう。普通の建築士は,塗装の施工者と相談しながら決めているというのが実態です。
塗装でもうひとつ。
国の標準仕様書は,一般名称で書いてあります。対応するJIS規格の番号は指定していますが,それがどの塗料なのかがわからないと施工の時に困ります。
「日本ペイント㈱」ではそのHPで,JISに対応する自社の塗料をわかりやすく対照しています。
「公共建築工事標準仕様書対応 日本ペイント製品塗装仕様書」←これは便利です。
[cwpshiage1]
<補足説明>
普段,「合成樹脂調合ペイント」のことを「SOP」と表記しますが,国の標準仕様書の塗装のタイトルに括弧書きで示されています。一方,JIS規格には「SOP」などの記述はありません。
[cshiagelink]
[cwpshiage2]
このページの公開年月日:2013年11月10日