<建設機械のオペレーター付きリースは請負契約>
「建設機械のオペレーター付きリース契約は工事請負契約として契約しなければならない」
これを初めて聞いたときは,びっくりしました。現在,建設機械の多くはリースになっています。小型のバックホウを1日単位で借りてきて現場で使用して終わったら返す。そういう使い方をします。小型ならばそうですが,大型のものや特殊な重機であれば,借りた人が簡単には扱えませんし,慣れない人が操作して機械を損傷しても困ります。特殊な重機の場合,レンタカーを運転するのとはわけが違いますから,数人のオペレーターを専属でつけて,その人以外には操作させないようにしています。
ですから,特殊な重機はオペレーター付きで貸し出されることが多く,現在,一般的に行われていることです。
その一般的に行われているリース契約を工事請負契約でしろ,というわけです。リース契約は1日単位で金額が決定しますが,これを請負契約でするとなると,工事内容を記してその作業に値する金額を算出して工期など(建設業法で規定される項目)を決めて契約することになります。見積もり期間も建設業法で定められた日数を取らなければいけません。リース契約を工事請負契約に書きなおすことが不可能なことではありませんが,無駄なことをしているように思えます。
ただ,「納得できません!」と叫んでみても解決しませんから,なぜ,そうなのかを私の知り得た範囲で説明します。
まずは,許認可部局が,このことについてどのように示しているか,です。
Q:建設機械のオペレーター付きリース契約は建設工事に該当しますか?
A:建設機械のリース契約でも,オペレーターが行う行為は建設工事の完成を目的とした行為と考えられるため建設工事の請負契約に該当します。
なお,建設機械のオペ付きリース契約は労働者派遣法で禁止されている建設業務への労働者派遣に該当する可能性があるため,建設業法に基づく請負契約を締結する必要があります。
※ 上記は,兵庫県HP(https://web.pref.hyogo.lg.jp/ks02/qanda.html#A45)による。
上記の質問は,「リース契約が建設工事に該当するかどうか」を聞くもので,「建設工事に該当する」のであれば⇒「建設業法の適用を受ける」⇒「建設業法に沿って工事請負契約をしなければならない」となります。
答えでは,「オペレーターが行う行為は建設工事の完成を目的とした行為と考えられる」としています。オペレーターという人(労働者)が行うものであるということと,その行為が工事の完成を目的とした行為であることです。借りてきたバックホウで土を掘るという行為は,建設工事を行っていることに他なりません。建設機械を借りる側からすると機械を借りることが主で,そこにオペレーターがついていることは従属的なことですけど,オペレーターがしているのは土の掘削作業という建設工事に他ならないもので,それをリース会社の社員であるオペレーターにやらせているのですから,リース会社に工事を発注したことになるということです。
借りてきた重機がバックホウで,やらせる作業が土を掘ることであるならば上記のとおりですが,借りてきた重機がレッカーで,現場に納入された高架水槽を屋上へ釣り上げる作業だった場合はどうでしょうか。
運ぶだけなら建設工事の完成を目的とはしていない,とも思えますが,建設工事の現場内で建設資材を運ぶ行為は建設工事とみなされているんだと思います。こちら〈資材搬入と建設業の境目〉をご覧ください。したがってレッカーであっても工事請負契約を必要とします。
とはいえ,レッカーの場合,何を運ぶのかはその日にならないとわからないということも多いです。それでも,現場に呼ぶ以上,建設資材を運ぶのですから建設工事を行っていることに変わりはありません。何を運ぶのかがわからない場合も運ぶものを例示して契約することになるんでしょう。
建築士は工事監理において施工体制をチェックしますから,リース契約になっていれば是正を求めることになります。このリース契約を工事請負契約に変える場面で,タイトルだけ変えて「1日○○万円,契約額は現場に来た日数による」としていることがありますが,これはリース契約となんら変わりないものですから認められないのだと思います。作業内容と量を示して,その対価となる金額を示して建設業法の基準を満たした工事請負契約を作らなければいけないのだと思います。
最後に,オペレーター付きリースを請負契約にすることに対する私の考えを入れます。
上記のとおり,オペレーター付きリースは工事請負契約でしなければいけないことであり,その理由も上記で説明した通りですが,リース契約は現在の社会で定着していることであって,それをわざわざ建設業法に則って工事請負契約に書き換えなければいけないというのは,やはり不条理なことのように思えます。社会の動きに法制度がついていけていない事例のように思えてなりません。
[ckchouritsu1]
[ckensetsugyouhoulink]
[ckanrilink]
[ckchouritsu2]
このページの公開年月日:2014年10月