<80㎡の倉庫で生活をはじめた時の法適用>
用途変更における建築基準法の適用は複雑ですから,例として,80㎡の倉庫で生活をはじめた場合の建築基準法の適用について考えます。
<事例>
その床面積80㎡の倉庫は確認通知を受けて,検査済証も受けて適正に建築された。
完成後,本当に倉庫として使用された。
完成後の所有者のやむなき事情(例えば勤務先の倒産で職を失い住んでいた賃貸住宅の家賃が払えなくなった)で,所有者本人が生活をはじめた。生活をはじめるとは,家財道具を持ち込んで継続して食事や寝泊まりをそこでするという状態で,住民票もそこに移したこととする。
トイレと洗面はもともと倉庫に付属していた。生活空間は衝立や家具で囲むだけで一切の工事はしなかった。
倉庫に窓はなく,天井高さも2mしかない。工業専用地域ではなく,災害危険区域でもない。
この倉庫の建設時から建築基準法は一切改正されていなくて既存不適格ではない。
このような状態の人に対して,建築基準法はどのように適用されるのでしょうか。
「倉庫で生活する」を建築基準法の用語でいえば「倉庫を住宅に用途変更する」となります。用途変更における法適用は,法第87条ですけど,第1項は住宅への用途変更は適用されません。第2項は適合しています。第3項,第4項は既存不適格建築物への規定ですから適用されません。
建築物としては,法第28条の採光・換気規定や令第21条の天井高さ規定に適合していませんが,ここで生活をはじめたこの人の行為に対して建築基準法は規制する条文を持っていないのだと私は思います。
〈建築基準法の規制条文が有効になる根拠〉でも解説していますから見てください。
最終的に残るのは,第9条で「基準法の規定に~違反する建築物について,~占有者に対して~使用禁止~を命ずることができる」と規定されていますから,使用禁止の命令が出せることだけです。
上記は個人見解です。
次の例は,〈80㎡の倉庫を物品販売店舗に用途変更する時の法適用〉です。
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このページの公開年月日:2016年6月28日