建築基準法の規制条文が有効になる根拠

<建築基準法の規制条文が有効になる根拠>

建築基準法の規制条文が,国民の義務として有効になる理由を説明します。

例えば,政令第21条は「居室の天井高さは,2.1m以上でなければならない。」となっています。この条文の主語は「居室の天井高さ」で,義務として定めたのは「2.1m以上でなければならない」ですから,「居室に課した義務」でしかありません。政令第21条が有効になるためには,人の行為に置き換えなければ,有効になりません

建築基準法の規定のほとんどは,「~~は,区画しなければならない」「~~は,耐火構造にしなければならない」とう表現になっていて,建物の状態を示しているものです。

このページで,「居室の天井高さは,2.1m以上でなければならない。」という規定が,だれのどういう行為に対して義務が生じるのかを説明します。


まず,建築基準法には,「天井高さが2.1m未満の居室に寝泊まりしてはならない」とか,「倉庫で生活してはならない」とは書いていません。つまり,一般使用者の義務は存在していません。

<確認申請が必要な工事をする場合>

例として,都市計画区域内で木造2階建ての戸建て住宅を新築するものとします。

法第6条第1項第4号建築物ですから,法第6条第1項が適用され,「建築主は,第4号建築物を建築しようとする場合においては,当該工事に着手する前に,その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて建築主事の確認を受け,確認済証の交付を受けなければならない。」ですから,政令第21条に適合する計画にする義務が建築主に生じます。

適合していなければ確認が受けられず,確認を受けていなければ,法第6条第14項で「建築工事はすることができない」となります。

申請図面は2.1mあることにして,実際の工事では2.1m未満の天井高さにしようとしても,法第6条第1項後段で,「計画を変更して建築しようとする場合も同様とする」とありますから,計画変更手続きが必要で,2.1m未満に変更する手続きを提出すれば確認を受けられませんから工事をすることができません。

例え,変更したことを隠して工事を完成させたとしても,法第7条第1項で「検査の申請をしなければならない」ですから,検査により2.1m未満の居室が見つかれば,違法建築物となり是正しなければいけません。

<確認申請が不要な内装改修工事の場合>

内装改修工事でも大規模な修繕・模様替えになれば,法第6条第1項第3号建物については確認申請が必要ですから,その場合は,上記と同じです。

第4号建物については,大規模な修繕・模様替えでも手続きが必要ありませんし,第3号建物でも小規模な内装改修工事は手続きが必要ありません。手続きの必要ない工事であれば,天井高さを2.1m未満にすることが可能かと言えば,そうではありません。手続きが必要ないので,役所に見つからない,という意味ではそうですけど,法第8条第1項に「建築物の所有者,管理者または占有者は,その建築物の敷地,構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するよう努めなければならない」とありますから,2.1m以上あった居室の天井を2.1m未満に作り替える内装工事はできません。

<用途変更する場合>

倉庫を店舗(100㎡超えとする)として使用する場合は,法第87条第1項により,法第6条第1項が適用され確認申請手続きを必要とします。これは手続きを必要とするのみではなく「その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて」確認を受けるのですから,用途変更しようとする者に対して政令第21条への適合義務が生じます。つまり,天井高さが2mしかない倉庫を用途変更で店舗に変えることはできません。

上記は100㎡を超える店舗ですからそうですが,100㎡以下だったらどうなるのでしょうか。法第87条第1項が適用されないので確認申請が必要ではありません。倉庫だった建物を事務所として使用する場合も同じです。倉庫である建物で生活をはじめても同じです。倉庫を住居として使用するという行為自体は,建築基準法上の違反ではないのだと私は考えています。ただ,ならば建築基準法では何もできないのかと言えばそうではありません。法第9条第1項で「基準法の規定に~違反する建築物について,~占有者に対して~使用禁止~を命ずることができる」とありますので,基準法での対処はできるようになっています。用途変更に対する基準法の適用に関する上記の考え方は,個人の見解です。

既存不適格建築物を用途変更する時にはもっと複雑になります。用途変更については〈用途変更における基準法の適用〉で解説します。

<都市計画区域外の4号もの>

都市計画区域外で木造2階建て戸建て住宅は確認申請の手続きを必要としません。都市計画区域外で確認申請の必要のない規模の建築物で基準法に違反する建築物を建築したときの基準法の扱いはどうなるのでしょうか。

例として,110㎡の木造2階建て戸建て住宅で,令第46条第4項が要求する筋かいを満足しない建築物を新築した場合を考えます。

令第46条は,法第20条第1項第四号イで「政令で定める技術的基準に適合すること」で,令第36条第3項が義務付けられ,同項から「この節から第7節の2の規定に適合する構造方法を用いることとする」となっているものです。

法第20条には,「建築物は,~地震~に対して安全な構造のものとして,~適合しなければならない」と規定されているのですが,ここでも主語は「建築物」ですから人の義務ではありません。頼りの第6条は,第1項第四号は都市計画区域内にしか適用されませんから,確認申請が必要ではなく,「その計画が関係規定に適合すること」を求められません。

次の頼りは建築士法です。建築士法第3条の3で,「100㎡を超える木造建築物を新築する場合は建築士でなければ建築してはならない」とあって,建築士法第18条第1項で「建築士は設計を行う場合においては,設計に係る建築物が法令または条例の定める建築物に関する基準に適合するようにしなければならない」とありますので,令第46条の筋かいを満足しない建築物は設計できません。

建築士でない人が設計することは建築士法に違反しますし,建築士でない人が設計したもので施工することは建築基準法第5条の4で「~工事は,~建築士の設計によらなければ,することができない」とありますので,工事ができません。

このように,都市計画区域外で建築する場合もちゃんと規制がかかっています。

とはいえ,建築士法の制限のない,90㎡の木造2階建て戸建て住宅だったらどうなるのでしょうか。

建築士でない人が設計して,自分が施工した場合,令第46条が要求する筋かい量の半分しか入っていなくても,設計して,施工して,そこで自分が生活する行為自体は,法令上制限されていない(違法行為とするための条文が存在しない)のだと私は考えています。

最後に残るのは,第9条で「~占有者に対して,~使用禁止~その他を~命ずることができる」です。これも個人の見解です。




個人見解

このページで解説しましたように,建築物の状態を規定した建築基準法の条文は人の義務として適用されます。ですけど,末尾にあるように限定的には義務とはならないものが存在します。

義務とならないから基準を守らなくていいと考えるかどうかは人によるのだとは思いますが,義務として適用されない規模の建築物を建築するにあたって,基準の耐震性よりも1割,2割低い建築物を建築するぐらいならば自己責任の中でありうるのかもしれませんが,極端に耐震性の低いものを建築するのは社会通念上許されないことと思います。

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このページの公開年月日:2016年6月5日