<朱鷺メッセ連絡橋崩落事件>
連絡橋が,地震もない,強風も吹かないのに突然に自重で崩落したもの。
一審では,構造設計のミスとして構造設計者の責任を追及したが,ミスを特定した報告書について「報告書の論証過程には大きな疑問が残ると言わざるを得ない」とされ,原因が解明されまいまま和解が成立した。
現在も,設計ミスだったのか,施工ミスだったのか,それ以外の原因なのか,崩落の原因が解明されていない。
事件の概要
建物名称:朱鷺メッセ
建物場所:新潟県新潟市中央区万代島
事故発生日:2003年8月26日午後8時
原因究明
「新潟県事故調査委員会報告書」(2004年1月19日)
原因を斜材ロッド接合部の耐力不足とした
「朱鷺メッセ連絡橋事故調査報告書」(日本建築構造技術者協会,2004年2月10日)
論証過程において,斜材ロッド接合部を含む構造部各所において長期荷重の応力が長期許容応力度を超えていることを指摘。しかし,結論では,「工事途中で実施された第1回ジャッキダウンによって構造体に生じた損傷が,落下事故に大きく関わっていることは疑う余地はない」とし,「平成12年度の第1回ジャッキダウン時および平成14年度の竣工時に発生した下弦材PCa版の大きな曲げ応力の影響により,PCa版の斜材ロッド定着部近傍に過大な曲げひび割れが発生したと推定される。この結果,時間と共にこのひび割れが進展して,定着部のコンクリートの有効せん断面積が減少して崩壊につながったと考えるのが自然であろう」とした
設計者・施工者の反論
「朱鷺メッセ連絡橋落下事故(渡辺邦夫氏による事故後の概況報告)」〈資料6〉
この報告書では,県調査委員会の報告書の計算式が間違ったものであることを指摘。
崩落せずに残っている連絡橋を利用して自費で公開で引張実験を行って接合部の強度があることを証明。
この説明によると,PCa版の斜材ロッド定着部の耐力が十分にあったことを事故後に作成したテストピースによって証明。加えて,県の調査委員会が事実としたことについてそうではなかったことを主張し,元請けである第一建設工業が行った実験についても設定条件に誤りがあることを指摘。
結果
2013年12月の和解成立で「設計が原因である」と特定されたものの,原因の詳細が明らかにされておらず,和解金も一審で県が請求した金額の約10分の1であった。
この事件では,その後の法改正などは行われなかった。
プレキャスト版を使った構造で一般の建築士がかかわるものではなかったことも制度改正が行われなかった理由のひとつである。また,今に至っても,原因が解明されていたいため,対策がとれなかったという面もある。
この工事に携わった設計者・施工者は,原因の究明と責任の所在を主張している。自費で実験もしている。その結果はホームページ上で公開している。