朱鷺メッセ崩落事故の原因が突き止められなかったことが残念(その2)

<朱鷺メッセ崩落事故の原因が突き止められなかったことが残念(その2)>

朱鷺メッセ崩落事故の原因を究明しようとした足跡はあります。

新潟県事故調査委員会報告書

発注者である新潟県が設置した委員会が出した「新潟県事故調査委員会報告書」(2004年1月19日)があります。この文書の執筆時点(2016年12月)において新潟県のHP上では公開されていないようなので私は見ることができませんが,別の資料の記録から,原因を斜材ロッド接合部の耐力不足としたことが分かります。PCa版をハイテンションタイロッド(鋼線)が貫いているコンクリート部分を指しており,写真で見てもいかにもちゃちで脆性材料であるコンクリートがせん断力に耐えられなくなって鋼線が抜けてしまったと考えるのは自然なことです。日本建築構造技術者協会の報告書でも設計者の計算式にあやまりがあり長期の許容応力度の1.6倍の力が作用していたことが報告されています。接合部の耐力不足は,それを疑うに十分な論拠がありますが,結果からすると,県の委員会の報告書を根拠として争った一審で「論証過程に大きな疑問が残る」とされ否定されています。実は,被告側にいた設計者が,県の報告書の計算式の誤りを指摘しているとともに,崩落しなかった通路のPCa版で引張試験をすることで強度の存在を立証しているのです。

朱鷺メッセ連絡橋事故調査報告書(日本建築技術者協会)

中立機関が出した報告書としては,「日本建築技術者協会」の「朱鷺メッセ連絡橋事故調査報告書」(2004年2月10日)があります。

この報告書では,検証過程で斜材ロッド定着部せん断,鉄骨の上弦材圧縮,PCa版の下弦材引張が設計上長期許容応力度を大きく超えていたことを指摘しています。であるならば,結論は,設計自体が不適切だったと結論付けられるべきものなのに,なぜか,結論では,事故原因を「工事途中で実施された第1回ジャッキダウンによって構造体に生じた損傷が,落下事故に大きく関わっていることは疑う余地はない」とし,「平成12年度の第1回ジャッキダウン時および平成14年度の竣工時に発生した下弦材PCa版の大きな曲げ応力の影響により,PCa版の斜材ロッド定着部近傍に過大な曲げひび割れが発生したと推定される。この結果,時間と共にこのひび割れが進展して,定着部のコンクリートの有効せん断面積が減少して崩壊につながったと考えるのが自然であろう」としています。これはとても不思議な結論です。しかも,原因として指摘した言葉に「ジャッキダウンによって構造体に生じた損傷が」がありますが,報告書中の論証過程では「ジャッキダウン時に損傷を与えた可能性がある」としているだけで,接合部に損傷が生じたことを特定した記述はありません。こうしたことから,論証過程,結論ともに現実を表現したものとは考えにくいものです。

※ この報告書は「日本建築施術者協会」の会員専用ページに公開されています。

朱鷺メッセ連絡橋落下事故(渡辺邦夫氏による事故後の概況報告)

構造設計をした設計者が,「朱鷺メッセ連絡橋落下事故(渡辺邦夫氏による事故後の概況報告)」報告書を出しています。

これによれば,県の調査委員会が原因とした斜材ロッド定着部の破断を否定しています。調査委員会の調査報告書の計算式が間違ったものであることは建築関係雑誌「建築技術」に掲載したとしていますし,崩落しなかった実際の架構を使って自費で実験を行って,必要な耐力が存在していたことを証明しています。

崩落原因については簡単にしか触れられていませんが,上弦材鉄骨破断を指摘しています。ただ,断定はせず,原因は解明できなかったとしています。

※ この報告書は「㈱構造ソフトHP」で公開されています「朱鷺メッセ連絡橋落下事故概況報告」。

PCa版製造者の説明(黒沢建設㈱)

PCa版を製造し現地で架設した下請け施工者による調査結果がHP上で公開されています。

黒沢建設の説明によると,PCa版の斜材ロッド定着部の耐力が十分にあったことを事故後に作成したテストピースによって証明しています。加えて,県の調査委員会が事実としたことについてそうではなかったことを主張するとともに,元請けである第一建設工業が行った実験についても設定条件に誤りがあることを指摘しています。

※「朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故の「補強筋」について申し上げます

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