Ⅰ 構造力学(解法1)
構造力学を習得する上で必要な基礎的な考え方は〈構造力学(法則・基本的な考え方)〉で紹介しました。
次は,その考え方を使って構造問題をどうやって解くかです。
構造力学の解法で頼りになるのは,「外力の合計が0であること」です。構造力学では,一定の力が作用してその構造体がとどまっていると考えるので,反力を含めた外力の合計が0になります。そのことは,構造体全体がそうであるということだけではなく,その構造体のどの部分を切り出しても「外力の合計が0」になっていなければいけません。構造体を切り出した切断部にいくらの外力が作用しているかを知るために,内力を必要とします。
内力は,歪に比例します(弾性域において)。
簡単にするために,1次元で考えましょう。構造体を針金のような直線材料だとして,片方の端を原点としてX軸方向に針金を置きます。力はX軸方向にしか作用しないものとして,変位もX軸方向にしか生じません。この針金のような直線材料のどの部分においても外力の合計が0になるという条件を数式にすると,次のようになります。
構造問題を解くとは,上記の方程式を解くことです。この式は,変位量を1回微分したものが歪であり,歪に比例して内力が生じ,内力の1回微分(内力の変化率)がそこに作用している外力とバランスするというものです。ですから,すべての地点での構造体の変位量がわかっていれば,簡単に解くことができます。構造問題が「各部の変位がわかっていて,そのような変形を生じさせる外力を求める」というものであるならば,簡単なことなんです。でも,普通の構造問題は「外力がわかっていて,その外力で構造体に生じる変形や応力を求める」ことです。上記の方程式でPが与えられていてuを求めるのは,難しいでしょ。1次元でもこれですから構造問題(=構造力学)は難しいのです。
上記の式は1次元でしたから,これを3次元でやってみましょう。といいたいところですが,やめておきます。3次元の方程式は,例えば,「構造設計一級建築士講習会テキスト」の第1節の冒頭で紹介されています。
3次元の方程式の説明は省略しますが,「構造問題を解く」とはこの3次元の方程式を解くことです。しかも,与えられているのは,外力で,その外力で構造体に生じる変形などを求めることです。とはいえ,建築分野で使われる構造体はラーメン構造であったりトラス構造であったりしますから,直接にこの3次元方程式を解くわけではありません。すべての構造力学解法は,この3次元方程式を「いかにして単純な解法に置き換えるか」というアプローチをしたものであることを意識しておいてください。
次では,建築物の構造において用いられる構造力学の解法を解説します。〈構造力学(解法2)〉
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Ⅰ 構造力学
〈構造力学(法則・基本的な考え方)〉
〈構造力学(解法1)〉
〈構造力学(解法2)〉
〈トラス構造解法の補足〉
〈CM0Q算出の仕組み〉
〈梁理論の補足〉
Ⅱ 構造躯体として使われる材料の特性
〈材料力学〉 〈種々の構造材料の品質等〉
〈構造材料の許容応力度等〉
〈コンクリートの許容応力度等〉
〈鉄筋の許容応力度等〉
〈鋼材(炭素鋼)の許容応力度等〉
〈高力ボルトの許容応力度等〉
〈あと施工アンカー1本あたりの許容耐力など(H13告示第1024号による)〉
〈形によって決まる許容応力度〉
〈構造の仕様書的規定〉
Ⅳ 建築構造安全性判定手法
〈建築構造安全性判定手法〉
〈構造体をモデル化する手法〉
〈構造解析で算出された存在応力を割り増しするルール〉
〈既存建物の耐震診断と耐震改修〉
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このページの公開年月日:2015年5月10日