Ⅰ 構造力学(力学的な感覚)
構造力学を習得する上で必要な基礎的な考え方は〈構造力学(法則・基本的な考え方)〉で紹介し,解法の与条件は〈構造力学(解法1)〉で,解法の基本的な考え方は〈構造力学(解法2)〉で紹介しました。
構造力学は,上記で紹介したように真に学術的なことです。一方で,「力学的な感覚のわかる人」っていますね。実はみんながみんな構造力学の基礎からはじまって具体の解法まで理解できるわけではありませんし,構造的な感覚のある人とそうでもない人とにわかれてしまいます。
ここでは,力学的な感覚がわかるために必要なことを紹介します。学術的な力学の部分と建築構造的な部分と両方を紹介します。実務の上できっと役立ちます。
1トンという重さがイメージできる
建築構造をしていて,スタートはこれです。構造計算をすれば答えが出ます。出た答えが1ケタ違っていても気づかない人がいます。総じていえば経験不足なのですが,力の大きさがイメージできていないから1ケタ違っていても気づかないのです。気づくためのスタートが「1トンをイメージすること」です。
「約1トンの重さの物をあげてください」と言われたら何をあげますか。水1立方メートルが1トンです。一辺が1mの立方体の水のかたまりが1トンです。その他には,乗用車1台が約1トン,ドラム缶は200リットルですから5本(缶自体の重さを除いて)で1トン,競走馬なら2頭。
鉄筋コンクリート造の建物なら床1㎡あたりの重量が約1トンになります。1㎡ごとにドラム缶5本を重ねたぐらいの重さがあるということです。
断面積1平方センチメートルの鋼材(例えばφ11の丸鋼)で2.4トンのものを吊り上げることができる
「鋼材は強い」そんなことはわかっていますが,どのくらいの強さであるかがイメージできる。これが構造設計者の力学的感覚です。φ11の丸鋼の断面積は95平方ミリメートルでSS400なら235N/㎜2ですから2.27トンのものを吊り上げることができます。それは,乗用車2台分です。
10センチ×10センチの断面をもつコンクリートは14トンの圧縮に耐えることができる
鋼材よりは弱いですがコンクリートも強いです。コンクリートの呼び強度を21として,21N/㎜2の3分の2まで耐えるものとして14トンです。それは,乗用車14台分です。
吊り下げる構造がもっとも効率がいい
ものを中空に浮かせようとした時に,吊り下げると構造体全部に同じ応力が作用して構造体全体が支えるのでこれがもっとも効率のいい支え方です。梁の上に載せて曲げモーメントで支えるのは,効率が悪いです。最大応力を発揮しているのは梁の外側の面だけで他のところはあまり頑張っていないから効率が悪いのです。
断面積を2倍にすると剛性が2倍になる
長さを2倍にすると剛性が2分の1になる
長方形断面の梁だとして,梁幅が2倍になれば曲げ剛性が2倍になる
梁丈が2倍になれば曲げ剛性が8倍になる
梁長さが2倍になれば剛性は8分の1になる
上記がわかっていると,次の問題が簡単に解けます。
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<構造設計の関連情報>
Ⅰ 構造力学
〈構造力学(法則・基本的な考え方)〉
〈構造力学(解法1)〉
〈構造力学(解法2)〉
〈トラス構造解法の補足〉
〈CM0Q算出の仕組み〉
〈梁理論の補足〉
Ⅱ 構造躯体として使われる材料の特性
〈材料力学〉 〈種々の構造材料の品質等〉
〈構造材料の許容応力度等〉
〈コンクリートの許容応力度等〉
〈鉄筋の許容応力度等〉
〈鋼材(炭素鋼)の許容応力度等〉
〈高力ボルトの許容応力度等〉
〈あと施工アンカー1本あたりの許容耐力など(H13告示第1024号による)〉
〈形によって決まる許容応力度〉
〈構造の仕様書的規定〉
Ⅳ 建築構造安全性判定手法
〈建築構造安全性判定手法〉
〈構造体をモデル化する手法〉
〈構造解析で算出された存在応力を割り増しするルール〉
〈既存建物の耐震診断と耐震改修〉
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このページの公開年月日:2015年5月11日