<あと施工アンカー>
既存の鉄筋コンクリート造の柱・梁・壁に何かを取り付けたい場合に,既存のコンクリートに穴をあけてアンカーを設置します。これが「あと施工アンカー」と呼ばれるものです。
「あと施工アンカー」は,「金属系アンカー」と「接着系アンカー」に分類されます。
「金属系アンカー」は,「金属拡張アンカー」とも呼ばれて,穴に挿入された金属アンカーの奥の部分が広がって穴に取りつくもので,その機構の違いからさらにいろいろな種類に分類されます。
「接着系アンカー」は,穴に挿入した鉄筋(またはボルト)の周りを接着剤で満たして固定するもので,一般名称としては「ケミカルアンカー」と呼ばれます。
「あと施工アンカー」=「金属系アンカー」+「接着系アンカー」
「金属系アンカー」「金属系アンカーの分類」〈解説はここ〉
「接着系アンカー」(いわゆるケミカルアンカー)
※ 「接着系アンカー」は,「有機系」と「無機系」に分かれます。樹脂の接着剤を使うかセメントを使うかの違いですが,両方とも「ケミカルアンカー」と呼ばれます。
※ 上記分類にない〈差し筋アンカーって何?〉
あと施工アンカーは,何かを取り付けるためのものですから,その強度が重要なのですが,実は,平成18年2月28日の「告示改正」までは建築基準法上で許容応力度が設定されていませんでした。この告示の改正後も,条文が
「既存の鉄筋コンクリート造等の部材とこれを補強するための部材との接合に用いるもの」
となっているため,改正後も耐震補強に用いる時しか許容応力度が設定されていません。
したがって,今でも新築・増築工事の構造設計にあたって,構造要素として使うことができません。
耐震補強以外のあと施工アンカーの用途としては,設備機器が倒れないように壁に固定するとか,設備配管を天井から吊るす時などがあります。
「告示改正(技術的助言付き)」
「指定書(例)」
「あと施工アンカー・連続繊維補強設計・施工指針」
上記の告示と設計施工指針の解説を作りましたので,こちら〈あと施工アンカー告示と設計・施工指針の解説〉見てください。
この告示と指定書で算出される許容応力度などはこちら〈あと施工アンカーの許容応力度など〉です。
あと施工アンカーの全体像を見たい場合は,「社団法人 日本建築あと施工アンカー協会」のHPがわかりやすいです。ここでは,種々のあと施工アンカーの分類や,施工事例が示してあります。また,同協会が各社のあと施工アンカーを認証しており,それが検索できるようになっています。
この協会では,あと施工アンカーの設計・施工指針を策定するよう準備しているようですが,今(2015年10月)も策定中です。
また,財団法人日本建築防災協会の「2001年改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・改修設計指針・同解説」に許容応力度の計算式が示されています。この本は販売されているものですので,ネット上で見ることはできません。
ケミカルアンカーの引き抜きせん断の耐力は,認定書の計算式によって定着させるコンクリートの強度も関係して算出されるものですが,エヌパット㈱のケミカルアンカー「レジンカプセル(商品名)」などの耐力はこちらです。
「パーフィクス レジンカプセル許容強度表」(エヌパット)
「ARケミカルセッターの許容荷重値」(旭化成ケミカルズ)
<あと施工アンカーの各メーカーと各商品>
あと施工アンカーを製造しているメーカーとその商品を一覧したもの〈あと施工アンカーの各メーカー各商品〉を作りました。
[cwpkouzouhinshitsu1]
<あと施工アンカーの関連情報>
〈さし筋とは?〉
[ckouzoulink]
<用語>
現場で「オールアンカー」という言葉を耳にします。オールアンカーは,サンコーテクノが出している金属系アンカーの芯棒打込み式のものの商品名です。
このHPでは,アンカーを分類して正式名称で解説していますが,現場では商品名が飛び交います。
「ホールインアンカー」とは,金属系アンカーの金属拡張アンカーのことをいうようです。
<こぼれ話>
2012年12月の中央自動車道路の笹子山トンネルの天井落下事故で「あと施工アンカー」が注目されました。天井材を固定するあと施工アンカーが抜けてしまったのです。
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このページの公開年月日:2012年12月1日