<設計基準強度と実コンクリート強度・法令上の規定>
設計基準強度と現場に持ってくる生コンの呼び強度との関係は〈設計基準強度と呼び強度〉で示し,現場で打設したコンクリートが設計基準強度を発揮できるように監理する手法が〈打設されたコンクリートの強度の監理方法〉で示しました。次に,法令上実際に打設されたコンクリートの強度がどうなっていなければならないと規定しているかを解説します。
基準法上では,設計基準強度と打設されたコンクリートの強度との関係を政令第74条第1項第二号に基づく告示(S56告示第1102号)で次のように規定しています。
一 コンクリートの圧縮強度試験に用いる供試体で現場水中養生またはこれに類する養生を行ったものについて強度試験を行った場合に,材齢が28日の供試体の圧縮強度の平均値が設計基準強度の数値以上であること。
二 コンクリートから切り取ったコア供試体またはこれに類する強度に関する特性を有する供試体について強度試験を行った場合に,材齢が28日の供試体の圧縮強度の平均値が設計基準強度の数値に7/10を乗じた数値以上であり,かつ,材齢が91日の供試体の圧縮強度の平均値が設計基準強度の数値以上であること。
一,二のいずれかを満たせば適合と判断されます。
基準法上では,「生コンをいくらで調合したか」は,まったく問われておらず,28日経過して硬化したコンクリートの強度が必要以上であればいい,との考えになっています。
しかも,「平均値」となっているだけで,何本の平均かも規定されていませんし,最低のものでも85%以上との規定もありません。平均でいいのですから,平均以下の部分が存在することを許容していることになります。
国の標準仕様書に規定された方法である〈打設されたコンクリートの強度の監理方法〉で監理されていれば十分に法令は満足します。その意味で,法令上の規定は最低限と言えるでしょうし,法令上の規定を使って適否を判断する場面はほとんどないはずです。
とはいえ,国の標準仕様書による監理が行われなかったとか,行われたけれども不合格で最終的に法的に違法なのかどうかの判断を迫られることもありますので,上記告示の意味を少しだけ補足します。
Q:第一号の現場水中養生の供試体で強度試験をする場合,28日目に試験ができなかったらどうなるのか。
個人意見:法令上は28日目以外にはない。その日に圧縮試験をしていなければ第一号に適合したとは言えない。第二号の28日,91日も同様。
Q:第二号の「切り取ったコアに類する特性を有するもの」とは何か。
個人意見:封函養生のことだと思われる。
Q:第二号は,28日と91日の2回を行わなければならないのか。
個人意見:条文通りで2回必要。
さて,上記のQ&A,どう思いますか。基準自体は緩いようですけど,28日を動かすことができませんから,事実上,この告示の条文で適法を立証しようと思っても不可能な場合が多いですね。
封函養生はないけど,現場水中養生ならあるとか,
28日にはしなかったが27日にしたとか,
91日を待つまでもなく圧縮試験を実施したいとか,
いろいろな場面に対応していません。
でも,安心してください。告示の条文にはその前段があって,「特別な調査または研究の結果に基づき構造耐力上支障がないと認められる場合はこの限りではない」とされていますから,養生日数の1日の違いなどは,特別な研究などを出すまでもなく許容範囲と判断できるでしょう。
とはいえ,養生日数が短い方が許容されるのか長い方が許容されるのかという問題が残ります。理論的に考えて,
27日に強度が出ているならば当然に28日にも強度が出るはずで,
逆に,29日に出たからといって28日に出ていたことの証明にはならない。
となるでしょう。
上記の考え方は,一般的に認められるとは思いますけど,それのみが答えだと言い切ってしまうと,91日を経過した後は,適法が違法かを判断することができなくなってしまいます。
100日目だろうと150日目だろうと現場からコンクリートサンプルを抜き取って試験をして強度があるかないかで,判断可能なものと個人的には思います。
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このページの公開年月日:2015年8月17日