<タイル>
タイルの品質について解説します。タイルは仕上げ材の中で最も奥の深い材料のひとつだと言えるでしょう。タイルの使い方でデザイン性が大きく左右しますし組み合わせが多様ですから豊かな表現が可能です。そして,そうしたデザイン性の向上だけではなく,タイルを上手に使うことで建物の使いやすさや耐久性が向上します。
タイルの品質と言えば,
- タイルの素材自体の品質
- タイルの素材に応じた使用部位(使い分け)
- タイルの貼り付け工法
- 目地の仕様
と,大きく4つのことを理解する必要があります。
<1.タイルの素材自体の品質>
タイルの素材としての品質は,JISA5209に規定されています。国の標準仕様書では「タイル」という用語ですがJISA5209では「セラミックタイル」という用語になっています。JISA5209で,「セラミックタイル」の定義として,
タイルの定義:主に壁・床の装飾又は保護のための仕上げ材料として用いられる,粘土又はその他の無機質原料を成形し,高温で焼成した,厚さ40mm未満の板状の不燃材料とされています。
そして,タイルの素材の品質を示す分類として,
うわぐすりの有無による種類:「施ゆうタイル」「無ゆうタイル」
成形方法による種類:「押出し成形(A)」「プレス成型(B)」
吸水率による種類:「Ⅰ類(3%以下)」「Ⅱ類(10%以下)」「Ⅲ類(50%以下)」
としている他,
ユニットタイル:「施工しやすいように,多数個のタイルを並べて連結したもの」
という用語も定義されています。
タイルの品質の中で最も重要なのが,「吸水率による区分」でしょう。JISA5209では,「Ⅰ類(3%以下)」「Ⅱ類(10%以下)」「Ⅲ類(50%以下)」としていますが,古い言い方の「磁器質」「陶器質」にあてはめると,
Ⅰ類(3%以下)とは,「磁器質タイル」
Ⅱ類(10%以下)とは,「せっき質タイル」
Ⅲ類(50%以下)とは,「陶器質タイル」
に,ほぼ相当するようです。磁器質タイルの方が高級です。陶器の茶碗より磁器の茶碗の方が高級なのと同じです。
もうひとつ,重要なのが,「施ゆう」「無ゆう」の別です。タイルの仕上げ面にうわぐすりをかけて焼くことで表面にガラスのようなツルツルした層を作ったものが「施ゆう」です。したがって,「施ゆう」「無ゆう」を比べると,「施ゆう」の方がきれいでタイルらしいです。「施ゆう」の方がきれいですし工程が多いですから,値段は「施ゆう」が高いと思われがちですが,実は,「無ゆう」の方が高級品です。
その他,タイルの素材の品質として,JISA5209に次のものがあります。
「曲げ破壊荷重」「耐摩耗性」「耐熱衝撃性」「耐貫入性」「耐凍害性」「耐薬品性」「鉛及びカドミウムの溶出性」「耐滑り性」
これらの試験方法は,JISA5209からJISA1509を指定してそこで規定しています。
<2.タイルの素材に応じた使用部位(使い分け)>
タイルは,実にたくさんの種類がありますから,どのタイルをどこに使うのかの判断が難しいです。以前の国の仕様書か監理指針に,「陶器質タイルは,内壁のみの使用で,外部には不可」という意味の記述があったように記憶していますが,今の仕様書等には「陶器質タイル」「磁器質タイル」という用語すら消えて,どのようなタイルをどこに使うのかの規定はありません。
では,どのように使い分けるのかというと,JISA5209で「屋内壁」「屋内床」「浴室床」「屋外壁」「屋外床」など使用可能な部位を表示することが義務付けられています。つまり,タイルメーカーのカタログを見れば,「屋外壁:◎」などと書いてありますからそれを適用します。
では,「屋外壁:◎」と表示できる条件に「陶器質タイル(吸水率区分のⅢ類)は外壁には不可」との規定があるのだろうと思って探したのですが,現在のJISにそのような規定はありません。使用部位を制限する条件としては,タイルの曲げ強度が「使用部位」によって違っていますから曲げ強度の違いがありますし,寸法精度も「使用部位」によって違っています。
<3.タイルの貼り付け工法>
タイルは壁や床に貼り付けられていることによってその性能を発揮します。したがってタイルが確実に貼り付けられていることが重要です。
〈タイルの貼付工法〉<4.目地の仕様>
タイルは並べて貼りますから,タイルとタイルの間に隙間ができます。これを「目地」と言います。目地は見栄えに影響するだけでなく,タイルの耐久性にも影響します。
〈タイルの目地の仕様〉<ユニットタイルとは>
JISA5209で,「ユニットタイル」を次のように定義しています。
「施工しやすいように,多数個のタイルを並べて連結したもの。」
小さなタイルを1枚ずつ張るのは手間ですから,あらかじめ紙にタイルを並べて貼ったものです。
<無ゆうタイルの方が高級な理由>
タイルは色をつけることに費用がかかっています。施ゆうタイルではうわぐすりで色を出しています。無ゆうタイルはうわぐすりがないので色を使っていないように思うかもしれませんが,実は,粘土全体に色を混ぜることで色を出します。施ゆうタイルでは表面にわずかに色をつけるだけですが,無ゆうタイルでは,粘土全体に色を混ぜ込みますからたくさんの色の元を使うことになります。このため無ゆうタイルの方が高いのです。
<タイルの形と大きさ>
タイルの素材としての品質ではありませんが,形と大きさも重要です。
<屋内壁>
「屋内壁」という用語は2014年改訂前のJISA5209では規定されていて,吹き抜けなどで階高の高い内壁にタイルを貼る場合は,「屋外壁」として適用することになっていましたが,現在のJISでは消えています。
<メーカーのタイル検索>
<JISA5209の2014年改訂>
JISA5209の2014年改訂でされて「陶磁器質タイル」という用語が「セラミックタイル」に変わりました。成形方法による区分も「湿式成形タイル」「乾式成形タイル」と言っていましたが,「押出し成形」「プレス成型」に変わりました。モザイクタイル(表面の面積が50cm2以下のもの)という用語は消えています。「内装壁タイル」「内装床タイル」「外装壁タイル」「外装床タイル」という区分がありましたが区分としては消えていて,製造者のカタログ表示内容とされています。
[ctilelink] [cshiagelink]このページの公開年月日:2013年12月24日