<3.タイルの貼り付け工法>
タイル自体の品質については〈タイル〉で紹介しましたが,ここでは貼り付け工法を説明します。
タイルは壁や床に貼り付けられていることによってその性能を発揮します。したがってタイルが確実に貼り付けられていることが重要です。
貼り付け工法は,公共建築工事標準仕様書に規定されています。規定されてはいますが,タイルの貼り付け工法は複雑で理解しにくいです。貼り付け工法がわかりにくいのは,壁への貼り付けと,床への貼り付けの違い,下地モルタルとタイルを直接に貼り付けているモルタルの違い,が,頭の中で混同してしまうからです。下地モルタルは国の標準仕様書の「第15章 左官工事」に書いてあり,貼り付けモルタルは「第11章 タイル」にあるというのも,わかりにくくしている要因です。
タイルの貼付工法として,標準仕様書の11.3.3で記述されています。貼付工法に種類があるのは壁のほうで,床は1種類しかありません。壁の貼付工法は,次の6種類。
壁タイル接着剤張り
改良積み上げ張り
密着張り
改良圧着張り
マスク張り
モザイクタイル張り
これに,床の1種類を加えますので,標準仕様書が紹介する工法は,7種類です。
その貼り付け方も同じところに記述されています。
参考として,床の貼付工法を解説します。
貼り方として解説しているのは実は,
「15.2.5(c)により下地モルタルを施工し,その効果具合を見計らい,貼付モルタルを用いて貼り付ける」
のみです。この記述にしたがって,15.2.5(C)を見ると,
「(b)による。ただし,表面は木ごてで仕上げる」
とあるので,(b)を見ると,
「15.2.4(d)の下地処理後,デッキブラシ等で,セメントペーストを床面に十分塗りつけた後,直ちにモルタルの塗り付けにかかる」
とされています。ここで,さらに,15.2.4(d)を見なければいけませんから,そこには,
「コンクリート床面は,コンクリート硬化後,なるべく早い時期に塗り付けを行う。長時間放置した場合は,水洗いを行う」
とされています。ですから,
- コンクリート硬化後に直ちに塗りつけ
- 何を塗りつけるかと言うと,セメントペースト
- 次も,直ちにモルタル塗りで
- 塗るモルタルは,調合が表15.2.3に記述されているから,張物下地の1:3を用いて,金ごてではなく木ごてで押さえて,
- 次に貼付モルタルを塗って,
- その貼付モルタルの調合比は,表11.3.1で細骨材の最大粒径は表11.2.1で,
- タイルを貼り付ける。
という作業になります。
これでもかなりはしょって書いたのですが,これだけ規定しているのだからすべてがそろっているだろうと思ったら,実は,規定にもれがあります。
上記は,床タイルの貼り付け工法を,標準仕様書上でどう読むかを解説したものです。それ以外の工法もここに解説すればいいのかもしれませんが相当に長くなりますので,同じようにして読み解いてください。
国の建築工事監理指針には,貼付工法が詳しく解説してあります。ただし,監理指針はネット上でタダで閲覧することはできません。
実は,タイルの貼り付け工法を知ろうと思ったら,タイルメーカーの資料を見た方がわかりやすいです。
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<床の貼付モルタルの厚さ>
左は,床タイルの貼り付け工法を標準仕様書の記述どおりに解説したのですが,実は,仕様書の規定にもれがあります。仕様書には,貼付モルタルの厚さが規定されていません。壁の場合は,表11.3.2に規定されているからいいのですが,床はないのです。
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このページの公開年月日:2013年5月6日