<建築物の定義>
建築基準法を考える上で,最も基礎的で最初に必要となるものが「建築物の定義」です。なぜ必要かというと,建築物の定義に当てはまるか当てはまらないかによって建築基準法の規制を受けるか受けないかが決まるからです。
建築物の定義は,「屋根及び柱若しくは壁を有するもの」とされていますが,庭に置く手で持てる犬小屋(例:クレヨンしんちゃんのシロの犬小屋)を見て「屋根と壁を有しているから建築物であり建築基準法の規制を受ける」という人はいないでしょう。でも,大型犬の犬小屋ならどうか,大型犬を5匹飼う犬小屋ならどうか,もっと大きな犬小屋ならどうかとなったときに,どこかで線を引いて,建築物として規制しなければいけません。
法文上では,建築物は法第2条第1号で次のように規定されてます。
法第2条第1号 建築物 土地に定着する工作物のうち,屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。),これに附属する門若しくは塀,観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所,店舗,興行場,倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋,プラットホームの上家,貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい,建築設備を含むものとする。
この定義条文は,冒頭の「土地に定着する工作物うち,」が前提条件で,最後の「,建築設備と含むものとする。」よりも前の文面が建築物の定義で,「,建築設備を含む」により建築物に設ける建築設備も建築物の定義に含まれるものだということです。
で,建築物の定義の中の「土地に定着する工作物のうち」と「建築設備を含む」にはさまれる文面は,
1.屋根及び柱若しくは壁を有するもの
2.これに附属する門若しくは塀
3.観覧のための工作物
4.地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所,店舗,興行場,倉庫その他これらに類する施設
の4つを「または」で並列してその全体を後ろのカッコ書きで線路内の鉄道施設を除いています。後ろのカッコ書きは直前の4.にのみかかっているのではなく,1.2.3.4.の全部にかかっていると解釈しているようです。
この定義条文の中のカッコ書きの条文を解説します。
〈鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋,プラットホームの上家,貯蔵槽その他これらに類する施設〉
法文の中に,もうひとつわかりにくい用語があります。「観覧のための工作物」,これは,野球場などのお客さんが座るひな壇状の客席の部分のことです。甲子園球場もマツダスタジアムも客席の下には球団事務所やコンコースや店舗がありますから客席部分が屋根でもあって,スタンド自体が建築物ですけど,スタンドの下に用途がなく,しかも,スタンドに屋根がなくても「観覧のための工作物」は建築物であり建築基準法の適用を受けます。
上記が条文の言葉の意味を解説したものですが,簡易なテントや開閉式の屋根などについて建築物であるかないかを区別するためにはもう少し判断基準が必要です。
〈建築物かどうかの判断例〉で解説します。
特殊建築物はこちらで〈特殊建築物〉で解説します。
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このページの公開年月日:2017年6月19日