省エネ法の解説(旧法)

<省エネ法の解説(旧法)>

このページの解説は,平成29年4月1日に新法に移行する前の旧省エネ法を解説したものです。

1990年ぐらいからだと思いますが,住宅の断熱性能が大きく取り上げられるようになりました。断熱性能の高い今の住宅と断熱がされていなかった古い住宅とでは寒い季節の快適性がぜんぜん違います。レトロな旅館に宿泊した時に,暖房しているのに暖かさを感じないという経験をされた人もいると思います。建物の断熱性能は,快適性だけではなく,冬の暖房効率,夏の冷房効率に影響します。建物の断熱性を高めたり窓の気密性を高めることは,初期費用のアップになりますが,その後の冷暖房費用の節減効果の方が高いです。そのことは,エネルギー収支においても同じです。結果として省資源や二酸化炭素の排出削減につながります。

省資源や二酸化炭素の排出削減は,国の重要課題でして,法律を作って断熱性能の高い建築物を推進しています。それが,「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」です。


省エネ法では,住宅だけでなく店舗,事務所,学校,病院,工場などすべての建築物を対象としていますし,外壁の断熱性能だけでなく,空調機器や照明機器のエネルギー効率についても規定しています。

省エネ法では,熱還流率やエネルギー換算など多くの建築士が不得意分野とする概念が出てきますが,慣れるしかありません。


手続きから解説します。

第一種特定建築物の届出

届出を必要とする根拠条文:同法第75条第1項

手続きを必要とする行為:第一種特定建築物の新築など(増築や改築が含まれる)(法第75条第1項第1号,令第17条), 第一種特定建築物の外壁などの模様替え(法第75条第1項第2号,令第18条), 空気調和設備や照明設備などの改修(法第75条第1項第3号,令第19条) 「省エネ法届出対象建築物

届出義務者:行為をしようとする人,つまり,新築であれば建築主

届出の時期:行為をする21日前まで,外壁の模様替えや設備改修で緊急性があれば例外あり(規則第1条)

届出の様式:「別記第1号様式」(規則第1条)

添付書類や記載事項:外壁、窓等を通しての熱の損失の防止のための措置の内容を表示した各階平面図及び断面図 空気調和設備等に係るエネルギーの効率的利用のための措置の内容を表示した機器表(昇降機にあっては仕様書)、系統図及び各階平面図(規則第1条)

守るべき基準(努力義務):法第73条第1項に基づいて定めた告示 つまり,住宅以外については, 「エネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物所有者の判断基準」 住宅については, 「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計,施工及び維持保全の指針

 

第一種特定建築物:床面積の合計が2000㎡以上の特定建築物

特定建築物:床面積の合計が300㎡以上の建築物

※ ここでいう建築物とは,住宅,店舗,事務所などすべての用途のもの。

※ 届け出たものの計画を変更する場合は「別記第2号様式

旧省エネ法届出の添付書類や記載事項についての個人意見

第二種特定建築物の届出

届出を必要とする根拠条文:同法第75条の2第1項

手続きを必要とする行為:第二種特定建築物の新築など(増築や改築が含まれる)

届出義務者:行為をしようとする人,つまり,新築であれば建築主

届出の時期:行為をする21日前まで(規則第2条)

届出の様式:「別記第1号様式」(規則第2条)

添付書類や記載事項:外壁、窓等を通しての熱の損失の防止のための措置の内容を表示した各階平面図及び断面図 空気調和設備等に係るエネルギーの効率的利用のための措置の内容を表示した機器表(昇降機にあっては仕様書)、系統図及び各階平面図(規則第2条)

守るべき基準(努力義務):法第73条第1項に基づいて定めた告示 つまり,住宅以外については, 「エネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物所有者の判断基準」 住宅については, 「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計,施工及び維持保全の指針

 

第二種特定建築物:第一種特定建築物以外の特定建築物

特定建築物:床面積の合計が300㎡以上の建築物

ここでいう建築物とは,住宅,店舗,事務所などすべての用途のもの。

※ 第一種と第二種の違いは,床面積が2000㎡以上であれば第一種,未満であれば第二種ということ

※ 手続きの違いは,第二種は新築・増築・改築のみであり,外壁の改修設備の改修は手続きが必要ないということだけです。届出様式も添付書類も適用基準も変わりありません。

※ 住宅事業建築主が特定住宅を新築する場合は,届出義務がありません。特定住宅とは戸建て住宅のことです。特定住宅については手続きも適用基準も別に定められています(法第76条の4)。

定期報告

第一種特定建築物,第二種特定建築物の届出をした者は,その後,定期的に維持保全の状況を報告しなければいけません。

報告を必要とする根拠条文:同法第75条第5項,法第75条の2第3項

手続きを必要とする行為:(その建物が存在している)

報告義務者:第1項の届出者(管理者が異なる場合は管理者,譲渡された場合は譲渡者)

報告の時期:3年毎(規則第3条)

報告の様式:「別記第3号様式

添付書類や記載事項:特になし

守るべき基準(努力義務):法第73条第1項に基づいて定めた告示

※ 第一種とくらべて第二種で軽減されている事項は,住宅が報告対象でない点,報告内容が空気調和設備等の省エネ措置に限る点である。


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法令

エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(旧法

同 施行令

同法に基づく建築物に係る届出等に関する省令

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基準の改定

平成28年4月から省エネ基準が改定されていますが,附則で29年3月までは従前の規定が適用できるとなっているので改定された基準を使う必要はありません。しかも,平成29年4月からは新法「建築物エネルギー消費性能向上に関する法律」が施行されて新法に基づく基準が適用されますから,下記の基準はほとんど使われることのない基準です。

省エネ基準の改定(平成28年4月適用)

備考

省エネ法で私が疑問に感じたことをひとつ入れておきます。

「床面積の合計が300㎡」の意味。

特定建築物の定義は,法律で「政令で定める規模以上のもの」とされていて,政令で「床面積の合計が300㎡」とされています。この床面積の合計が「建築基準法の延べ床面積」であることが定義されていません。この結果,壁のない駐車場で建築基準法上は床面積に参入する部分がある場合に,それを含めて300㎡をあてはめるのか,壁のない駐車場の床面積は含めずに300㎡を当てはめるのかがわかりません。

また,1棟ごとに当てはめるかどうかもわかりません。つまり,280㎡の本体建物と30㎡の付属建物を同じ敷地内に同時に新築する時に対象になるのかどうかがわかりません。

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このページの公開年月日:2015年5月10日