<鋼材(炭素鋼)の許容応力度等>
鋼材(炭素鋼)の許容応力度は,建築基準法施行令第90条及びH12告示第2464号で定められています。鋼材の種類(SS400とかSN490Bとか)に応じて基準強度Fが告示で定められていて,令第90条で,
長期許容応力度の圧縮,引張,曲げ:F/1.5
長期許容応力度のせん断:F/1.5/√3
短期は長期の1.5倍
と定められ,
材料強度は,令第96条で短期とイクオールが原則ですがJIS鋼材について1.1倍できることになっています。
<形によって決まる許容応力度>
上記の許容応力度は,鋼材の素材としてのものです。鋼材の許容応力度は,圧縮座屈,曲げ座屈を考慮しなければいけないので,さらに複雑になります。
そのことが,H13告示第1024号で規定されています。長期・短期の許容応力度も材料強度も,圧縮座屈,曲げ座屈を考慮したものと上記との小さい方を用いることになっています(材料強度には曲げ座屈の低減式がありません)。
圧縮座屈を考慮した許容応力度は,圧縮を受ける材の有効細長比λ(=有効座屈長さ/断面2次半径)によって低減されるようになっています。限界細長比Λとの比較で,λ≦Λの場合とλ>Λの場合とで式が違います。
限界細長比Λ=1500/√(F/1.5)
で,例えばSN400はF=235ですから,Λ=119.8となります。
圧縮座屈を考慮した長期許容応力度は,
λ≦Λの場合
σ=F×{(1-(2/5)×(λ/Λ)2)/((3/2)+(2/3)×(λ/Λ)2)}
λ<Λの場合
σ=F×(18/65)/(λ/Λ)2
です。
限界細長比よりも小さければ圧縮座屈しないのでは?という気もしますが,λ=Λの時の長期許容応力度は65.8ですので,半分以下になっています。
圧縮の許容応力度の算出でいつも議論になるのが,有効細長比λを算出する時に使う「有効座屈長さ」です。
有効座屈長さとは,圧縮を受ける材の両端がピン接合になって長さ方向にのみ変位するようになっている場合のその材の長さのことです。
※ 材料強度は計算式が違っていて,短期許容応力度を1.1倍したものより少し大きいです。
※ 材料強度式の記載は省略しました。告示を見るか,例えば「鋼構造設計便覧(JFEスチール)」にありますから見てください。
曲げ座屈を考慮した許容応力度は,圧縮よりもさらに複雑です。
まず,計算式が3つに分かれています。
① H形鋼の強軸に曲げを受ける場合
② 鋼管,箱型断面,H形鋼の弱軸に曲げを受ける場合
③ みぞ形鋼など荷重面内に対称軸を有しない材の場合
②では,曲げ座屈による低減はありません。
③は,89000/(lb・h/Af)で,①は,③の式に加えてF(2/3-4/15・(lb/i)^2/CΛ^2)の大きい方によるものです。
曲げの許容応力度を算出する時に必要な,hは曲げ材の丈,iはT形断面の断面2次半径,Afはフランジの断面積で,H形鋼の断面形状で決まってくる数値です。iは断面表に書いてあるものですが,Afは書いていないようですからフランジ幅と厚さを掛け算して算出しなければいけません。
Λは圧縮座屈の時のものと同じです。
Cはその梁の両端に作用するモーメントの大きさで変化する係数です。その梁の全域に同じモーメントが作用しているとC=1でも最も小さく,両端のモーメントが逆向きで梁中央でモーメントが0になっている場合が最も大きいです。Cが小さい方が許容応力度は小さくなります。
最後のlbは,圧縮フランジの支点間距離です。圧縮フランジが面外に拘束されている間の距離です。
※ 座屈現象の解説や圧縮座屈,横倒れ座屈については〈形によって決まる許容応力度〉で解説しています。
<鋼材の許容応力度等一覧表>
鋼材の許容応力度等を一覧表にするのは結構たいへんですが,やってみました。
圧縮の許容応力度は,有効細長比によって変化しますので,有効細長比をいくつか例示してそれに対応する許容応力度を表にしています。
〈鋼材の素材としての許容応力度等と圧縮座屈を考慮した許容応力度等〉
曲げの許容応力度はさらに複雑です。
上記のように,許容応力度を示した表に,H形鋼の断面を書いてその部材が許容できる長期短期の曲げモーメントを加えたものはこれまであまりなかったように思います。
<許容応力度以外の材料定数>
鋼材のヤング係数:205000N/mm2
せん断弾性係数:79000N/mm2
ポアソン比:0.3
[cwpkouzousekkei1]
[ckouzousekkeilink]
<参考>
<鋼材断面と断面性能>
どの寸法の鋼材があって,その断面の断面性能がいくらであるかを解説した便利なHPがあります。
「鋼材表(by web-FUNX)」このHPでは,許容応力度の計算もできます。
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鋼構造座屈設計指針
このページの公開年月日:2015年6月1日