<鉄筋>
鉄筋は,JISG3112で規定されています。一般的な名称である「鉄筋」のJIS規格上の正式名称は「鉄筋コンクリート用棒鋼」です。区分として「丸鋼」と「異形棒鋼」がありますが,丸鋼の方は今ではほとんど使われることはありません。「異形棒鋼」は一般的には「異形鉄筋」と呼ばれますが,JIS規格上の正式名称は「異形棒鋼」です。
「種類の記号」は,丸鋼で2つ,異形棒鋼で5つあります。
区 分 | 種類の記号 |
丸鋼 | SR235 SR295 |
異形棒鋼 | SD295A SD295B SD345 SD390 SD490 |
<鉄筋の化学成分と機械的性質>
SR235とSR295とSD295Aは,一般構造用鋼材のSS400と同じ化学成分でリンと硫黄のみを制限しています。
SD295Bなどは,炭素,ケイ素,マンガンも制限されています。
機械的性質は,次のとおり。
種類の記号 | 降伏点または耐力(N/m2) | 引張強さ(N/m2) | 伸び(%) |
SR235 | 235以上 | 380~520 | 20以上,22以上 |
SR295 | 295以上 | 440~600 | 18以上,19以上 |
SD295A | 295以上 | 440~600 | 16以上,17以上 |
SD295B | 295以上 | 440以上 | 16以上,17以上 |
SD345 | 345以上 | 490以上 | 18以上,19以上 |
SD390 | 390以上 | 560以上 | 16以上,17以上 |
SD490 | 490以上 | 620以上 | 12以上,13以上 |
<異形棒鋼の断面寸法など>
異形棒鋼でもっとも使われるのが「D10」でしょう。D10はスラブ筋や柱梁のせん断補強として使われます。また,柱梁の主筋には,D19やD22やD25あたりがよく使われます。異形棒鋼として存在する径は,次のとおりです。
D4,D5,D6,D8,D10,D13,D16,D19,D22,D25,D29,D32,D35,D38,D41,D51
「D10」などを「呼び名」といいます。「10」は「10mmの直径に相当する」という意味です。それぞれの呼び名の断面積などは,こちらです。→〈異形棒鋼の断面積表〉
異形棒鋼の場合,D10の断面寸法は規定されていません。上の表でD10の公称直径は9.53mmと書いてありますが,異形鉄筋の山から山を測っても,谷から谷を測っても9.53mmの部分は存在しません。公称直径も公称周長も公称断面積も,想定上の数字でしかありません。これらの公称数値は構造計算をするときに使う数値であって,異形棒鋼の実際の断面寸法を表すものではありません。実際の断面寸法は,実は各社によって違います。しかも鉄筋の断面寸法が各社から公開されているかというと,各社とも公開しているのは公称寸法であって実際の断面寸法は公開していません。
各社の断面寸法の違いは,「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」(日本建築学会編集)の解説表2.5aに解説されています。各社,寸法が微妙に違うことがわかります。
<異形棒鋼の径と強度の関係>
建築で使われる異形棒鋼の径は,D10からD51です。鉄筋の強度の種類は,SD295A,SD345,SD390,SD490です。例えばD13は,SD295AもSD345も生産はされていますが,通常D13はSD295Aです。建築分野では径によって強度の種類は決まっています。
D10~D16:SD295A
D19~D25:SD345
D29~D51:SD390
です。
上記のようになっていることが,どこかで定められているのではなく,流通が安定しているとか構造設計上のコストパフォーマンスがいいといった理由で選ばれているのだと思います。
<鉄筋の丸鋼と棒鋼の丸鋼の違い>
「鉄筋の丸鋼」と「棒鋼の丸鋼」は何が違うのか。
鉄筋と言えばほとんどは異形鉄筋を指しますから,「鉄筋の丸鋼」が使われることは少ないかもしれませんが,それでも規格としては残っています。「棒鋼の丸鋼」とは,一般構造用圧延鋼材の断面が円形の棒鋼です。両方とも,熱間圧延によって円形断面を持つ棒状の鋼材です。
根拠のJIS | 種類の記号 | 引張強さ(N/mm2) | 許容応力度(N/mm2) | |
鉄筋の丸鋼 | JISG3112 | SR235 SR295 |
380以上 440以上 |
長:155,短:235 長:155,短:295 |
棒鋼の丸鋼 | JISG3101 | SS400のみ | 400以上 | 長:167,短:235 |
化学成分の上限は,リンと硫黄のみで数値も同じ。形状は,両方ともJISG3191が適用されるので,存在する直径も同じ。
違いとしては,棒鋼の丸鋼はそれ自体のせん断許容応力度が規定されていますが,鉄筋の丸鋼ではそれ自体のせん断許容応力度がないかわりにRC部材のせん断補強筋として使用される場合の許容応力度が規定されていることです。
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<様々な鉄筋>
普通の鉄筋は,まっすぐなものですが,コイル状に巻かれたもの「バーインコイル」もあります。
〈バーインコイル〉
鉄筋の分類から外れるかもしれませんが類似のものに「溶接金網」と「鉄筋格子」があります。
耐震補強する時に使う「スパイラル筋」があります。
〈スパイラル筋〉
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<鉄筋か異形棒鋼か>
JIS規格上は「鉄筋」という用語はなく,「鉄筋コンクリート用棒鋼」となっています。ならば「材料としての鉄筋という用語はないのか」というとそんなことはありません。国土交通省の標準仕様書の第5章で材料名としての「鉄筋」をJISの「鉄筋コンクリート用棒鋼」であると定義して,「鉄筋」という用語を使っています。
<鉄筋径の判別方法>
現場で,搬入された鉄筋がD19なのかD22なのかを判別するのは難しいことです。径の判別方法はこちらです。
〈現場で鉄筋径の判別方法〉
<鉄筋の最外径>
鉄筋は適正な間隔を保って並べなければいけません。その時に必要になるのが鉄筋の最外径です。でも,最外径は各社によって違いますから,どこの会社の鉄筋を使うかによって鉄筋の最低間隔が違うことになります。それでは不便ですから,学会の配筋指針では,最外径を想定しています。配筋指針の解説表3.2です。例えば,D22の最外径は25㎜です。
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このページの公開年月日:2012年6月