<溶接部の開先などの設計>
「開先の設計」
完全溶け込み溶接の開先の設計を解説します。
建築士が開先形状を設計する必要はありませんが,どのように定められているのかまでは知っておく必要があります。
「[cshiyousholink1]」では,「開先の形状は特記による」とされていますから,設計者は設計図書に開先形状を示した特記をつけなければいけません。で,つける特記を設計者が自分で考えたりはしませんから,既成のものをつけます。
その既成の特記が何から作られているかというと,「日本鋼構造協会」が定める
「JSSⅠ03-2005溶接開先標準」
です。これは同協会が販売しているものですからネット上でただで閲覧することはできません。抜粋であれば
「日本建築学会建築工事標準仕様書JASS6鉄骨工事」
の付則5にありますが,JASS6もネット上でただで閲覧することはできません。
JASS6の付則5に抜粋で書かれている「JSSⅠ03-2005溶接開先標準」をちょっとだけ解説します。
溶接の種類は,「被覆アーク溶接」「ガスシールドアーク溶接」「セルフシールドアーク溶接」の3種類に限定しています。それ以外は,建築分野ではほとんど使われないからです。
開先形状は,「I形開先」「V形開先」「レ形開先」「X形開先」「K形開先」に限定しています。他には,U形,J形などがありますが,建築分野ではほとんど使われていません。
建築分野で完全溶け込み溶接と言えば,ほとんどはレ形開先ですから,レ形開先の場合の注意事項を入れます。
- レ形開先にするのは,板厚6mm以上のものである。板厚3~6mmまでのものはレ形をとるのではなく,I形開先を適用する。
- ルート間隔(接合する2枚の母材の隙間の距離)は,溶接の種類によって違う。開先角度を45度とするか35度とするかによっても違う。「被覆アーク溶接」の方が広い。
開先形状を「JSSⅠ03-2005溶接開先標準」でする理由は,学術機関が定めて実績があって定着しているからなのですが,実務的な理由があります。本来,溶接部は試験が必要で,そのことはJASS6鉄骨工事の5節5.2に定められています。でも,「JSSⅠ03-2005溶接開先標準」であれば試験が省略できます。試験が省略できるから開先標準を使うのです。
「スカラップの設計」
スカラップの設計を解説します。
H形鋼のフランジを完全溶け込み溶接にするためには,裏当て金が必要ですがウエブがじゃまするため裏当て金をとおすことができません。そこで,ウエブを切り取っておいて裏当て金をとおします。その切り取る部分のことを「スカラップ」といいます。
スカラップの大きさは,「日本建築学会建築工事標準仕様書JASS6鉄骨工事」の4節に定められていますから,これを見てください。「かぎとる部分の寸法が35mm程度」です。
「裏当て金の設計」
裏当て金の設計を解説します。
完全溶け込み溶接のレ形開先では,裏当て金を必要とします。裏当て金は開先にたまる溶着金属をもれないように受けるためのものでしかなく,溶接作業が終わったら用のないものです。
したがって,裏当て金について明確な定めはほとんどありません。「日本建築学会建築工事標準仕様書JASS6鉄骨工事」の4節に「母材に適し溶接性に問題のない材質」とされている程度です。断面寸法についても特に定めはありません。裏当て金は商品として販売されていまして,9×25mmのものが一般的です。
[cwpkouzouhinshitsu1]